westergaard 作品分析

映画、ミュージカル、音楽、自分が好きなものを分析して語ります。

A Place Called Slaughter Race 制作の舞台裏(ボーナスコンテンツの文字起こし・翻訳)

 

(*この記事は、Ralph Breaks the Internet のボーナスコンテンツに関するネタバレを含みます*)

ボーナスコンテンツ "The Music of Ralph Breaks the Internet" の "A Place Called Slaughter Race" のパートのインタビューを文字起こしし、翻訳したメモ形式の記事です。

 

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Producer Clark Spencer プロデューサー クラーク・スペンサー:

There was a moment in time where we were trying to figure out how do we make
very clear to the audience that Vanellope is falling in love with this world go Slaughter Race?
この映画の製作中に、どうしたら観客に対してとてもわかりやすい形でヴァネロペがこのスローター・レースという世界に惚れ込んでいるかを伝えられるか考えていた時があったんです。

In typical Disney musical fashion, it would be an “I want” song.
まぁ典型的なディズニーミュージカルのパターンでは、それは『I Want』ソングになるんでしょうが。

 

Director Phil Johnston 監督 フィル・ジョンストン:

It came, weirdly, organically out of just that idea of what if she sang a song?
変な話なんだけど、自然にヴァネロペが歌を歌ったらいいんじゃないかってアイデアが浮かんできたんです。

And then what if it were a very earnest, princess-type “want” song, but done in this morally ambiguous world of Slaughter Race.
それからもしそれがとっても素直なプリンセスタイプの『願い』の歌だったらどうかって、でもそれがこの非道徳的なスローター・レースの世界で歌われたらって。

 

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Sarah Silverman 声優 サラ・シルヴァーマン

All the Disney princesses have that quest song where they see what they want in their sights.
すべてのディズニープリンセスにはそれぞれが自分の志において望むものを見た場所で歌う願望の歌があります。

So, this is hers.
だからこれはヴァネロペのそれです。

And it’s this beautiful, Disney-esque kind of song.
それでのこの美しい、ディズニー風の歌ができたんです。

But, of course, she’s singing about a place called Slaughter Race.
でももちろん彼女は、スローター・レースという場所について歌うんです。

 

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Johnston ジョンストン:
Initially, it was like “What if we got an Alan Menken-type to do the music?” Ha-ha-ha…
最初は「アラン・メンケン風の曲にしたらどうかな?」はははって感じだったんだ。

 

Director Rich Moore 監督 リッチ・ムーア:
“Wouldn’t that be cool?” “Oh, that would be so cool.”
「それいいんじゃない?」「ああそれいいね」 みたいな。

 

Johnston ジョンストン:
And then the more we thought about it, “How about Alan Menken?”
で、だんだん考えるうちに、「アラン・メンケンにお願いするのはどう?」

 

Moore ムーア:
“Why don’t we just go to him?”
「本人のとこに話を持って行こうよ」って。

 

Silverman シルヴァーマン:
When your heart sings, it’s probably something written by Alan Menken.

心から自然に歌が出てくる時、それって多分なんかしらアラン・メンケンが書いた曲だと思うんです。(これはおそらく彼女的にはジョークですね)

 

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Alan Menken 作曲 アラン・メンケン
Vanellope is kind of an un-traditional princess, so we wanted to have a classic princess song, but, you know, with a twist in the lyrics.
ヴァネロペは、いわば非伝統的なプリンセスです。だから私たちはクラシックなプリンセスソングであると同時に、歌詞にひねりを加えたかったんです。

She’s singing like a Disney ingenue, but she’s found this game that she’s fallen in love with.
ヴァネロペはディズニー的な純粋な娘のように歌いながら、でも彼女はこの自分の愛するゲームに気がついていくんです。

 

Johnston ジョンストン:
It’s looking a little dangerous, but behind it is this very earnest song,
一見危険なこの場所ですが、その裏にこのとっても純粋な歌をもってきました。

 

Moore ムーア:
She sees the beauty of it. Yeah.
ヴァネロペはその美しい側面を見ているんです。えぇ。

 

Menken メンケン:
Well, Sarah Silverman, I’ve just been a fan for years, and she’s an amazing talent.
えぇ、サラ・シルヴァーマンですが、私は長らく彼女のファンでした、何せ彼女は驚くべき才能の持ち主ですからね。

She’s somebody who has such a deep wellspring of comic genius.
彼女はまさに、お笑いセンスが尽きない源泉のようなものを持ってますからね。

And she was singing live with the orchestra, which was thrilling for everybody.
それで彼女が生オーケストラと一緒に歌ってたときなんて、誰もがワクワクしたもんですよ。

 

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Executive Music Producer Tom Macdougall エグゼクティヴ音楽プロデューサー トム・マクドウガル:
She got to be in the room, and she had the most fun I think I’ve ever seen her have.
サラはレコーディングルームの中に入ってなきゃいけなかったんですが、とってもそこで楽しんでましたよ、私が見た限りでは一番楽しんでたと思います。

 

Silverman シルヴァーマン:
And, of course, Shank is played by Gal, and she’s kind of the leader of this place.
それからもちろん、シャンクはガル・ガドットが演じましたが、彼女はスローター・レースのリーダーのような存在です。

 

Macdougall マクダウガル:
It’s Vanellope’s song. But then this is Gal’s singing debut as well.
これはヴァネロペの歌でありますが、同時にガルにとっては歌のデビューでも会ったんです。

 

Spencer スペンサー:
You could see Gal really tear up as she realized just an incredible song this was.
ガルが本当に涙ぐんでたのが見えたんですよ、彼女がこの曲がどれほど素晴らしいかっていうのを実感してね。

But, more importantly, that she was going to be a character singing in a Disney animated film.
でもそれより何より、彼女はディズニーのアニメーション映画の中で歌うキャラクターになるっていうということが重大だったんです。

 

Johnston ジョンストン:
Gal was amazing.
ガルはすごかったよ。

 

Moore ムーア:
Yeah, it’s not something that she does normally.
あぁ、歌唱っていうのは彼女が普段やってることではないけどね。

But, man, she was game.
でも、彼女はやる気満々だったね。

She got the whole idea of it very quickly.
全部どうしたらいいかっていうのをすぐにのみ込んだんだ。

And just the comedy of it, like Gal and Sarah Silverman singing a Disney princess song about a car racing game.
でもうあとはお笑いのようだったよ、ガルとサラ・シルヴァーマンディズニープリンセスソングを歌ってるんだもの、それもカーレースゲームについてのね。

She was like, “This is awesome.”
ガルなんて「これほんとすごい」って感じだったよ。

 

Johnston ジョンストン:
It dawns on me how crazy this movie is.
その時はじめてわかったよこの映画がどれほど馬鹿げてるかってね。

I forgot there is a scene where Gal Gadot and Sarah Silverman sing a duet.
忘れてたよ、ガル・ガドットサラ・シルヴァーマンがデュエットするシーンがあるなんて。

Of course, there is, like…
もちろん忘れてなんかないけど(笑)

 

(書き起こし・翻訳終わり)

 

 

***

 

 

A Place Called Slaughter Race に関連して私が書いた記事はこちら

 

ikyosuke.hatenablog.com

 

 

エルサの魔法の起源は月?解読されたルーン文字を解釈:Frozen における the Sun, the Moon, and the Sky

はじめに:Panyaさんのルーン文字解読

ブローズンのイデュナ女王はどうやら魔法ないし何か隠さなければいけない力を持っている設定であると解釈してほとんど良さそうな気がして来たわけですが、それはあくまで舞台版での話。

 

映画の世界にはHidden Folksではなくトロールたちが出てくるわけですし、イデュナ女王がJoikを唱えたわけではなく、映画の世界観の中においては、アグナル国王が王室図書の資料の中から探し出した地図を元にトロールたちの住むリビングロックの谷へアナを連れて行き、そこで魔法を取り除いてもらったという事実は揺るがないものです。

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でその王室図書の資料。ルーン文字で書かれているものを解読したブログがあることを @1cVam さんのツイートで知りその記事をご紹介いただきました。

 

こちらがそのブログ↓↓↓

Deciphering the Runes Book in Disney’s Frozen « Panya's Blog: Linguistic Aspects

 

その記事の中で著者のPanyaさんは、あの時アグナルが見た本のページのルーン文字を解読し、対応する言葉を英語で表の形にしてくれています。

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これが表の一部。

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しかし完全な文章にはなっておらず、またルーン文字から英語への翻訳の時点で生まれていると思われる解釈の余地があることも想定され、ある程度の限界が認められます。

本当は私がルーン文字自体を解読して解釈できれば良いのですが、まだその知識やスキルはないので、今回この記事ではそのブログで紹介されている翻訳表を元に解釈して行きたいと思います。

そしてそこでキーワードになる 石と月 について考えたいと思います。

 

 

Panyaさんの解読表を元に解釈してみる

まず、Panyaさんの表を元に、書かれている行ごとに単語を並べて行きます。

 

1: ᛋᛏᛅᛁᚾ ᚠᚢᛏᚢ ᚢᛅᛚᛏᛅᛦ ᛏᚢᚴᛚᛅᚼᛁᛘᛁᚾᛋᛁᛋ ᚦᛅᚢ

stone / brought forth / powers / of moon sky / they

 

2: ᛏᚱᚢᛚᛁᚾ ᛅᚠ ᛋᚢᛅᚱᛏᛅᚠᛁᛅᛚᛅᚱᛁᚴᛁ ᛅᛁᚴᚢ

The trolls / from / dark / mountain / realm / have

 

3: ᛚᛅᚴᚾᛁᛋᚼᚬᛏᛦ ᛋᚢ ᚬᛏ ᛁᛋ ᛅᚠ ᚴᛅᛚᛏᚱᛁ ᛋᛅᚱ

healing hands / A / soul / which / from / cold / wounded 

 

4: ᛘᚾ ᚴᚱᚢᚦᛅ ᛁᚠ ᚠᚢᚱᚦ ᛅᛚᛒᚱᛅᚦᛚᛁᚴᛅ ᛏᛁᛚ

will / heal / if / brought / very quickly / to 

 

5: ᚢᛅᛚᛅᛦᛁᛋ ᚦᛅᛁᛦᛅ ᛏᚱᚢᛚ ᛅᛁᚴᚢ ᚦᛅ ᚾᚬᛏᚢᚱᚢ

the field / of them / Trolls / have / those / nature

 

6: ᛅᛏ ᚦᛅᚢ ᚠᛅ ᛅᛚᚬᚾ ᚴᛅᛚᛏᚱ ᛅᚠᚦᛁᚱᚦᚬᚾ[ᛚ]

that / they / get / all / sorcery / thaw?

 

7: ᚢᛦ ᚴᚢᚴᚢᛚᛁᚴᛁ ᚾᛁᛘᚬ ᛅᛁᚾ ᚦᚢᛁ ᛏᛅᚦ ᚴᛅᚱ

out of / approached body / to save / one / such / action / done

 

8: ᛁ ᚢᛚᚢᚴᛁᚾᛁ ᛅᛋᛏ ᛁᛋ ᛋᚢ ᛅᛁᚾᚬ ᛁᛋ ᚠᛅᛦ

in / true? / love / is / an / only / which / can

 

9: ᛅᚠᚦᛁᚱᚦᚬᚾ[ᛚ] ᚼᛁᛅᚱᛏᛅ ᚴᚱᚢᛏ ᛅᛚᛒᚱᛅᚦᛚᛁᚴᛅ

thaw / heart / stoned / very quickly

 

つづいて、私がこれらを意味の通る英文にしてみます。

もちろん、?となっている単語もあるのでなんとも言えませんが、このブログの解読が基本的にすべて正しいと仮定してやってみましょう。

ちなみに一行目は前のページからの続きになっているのでそもそも完全な文章ではありません。

 

(前半は見えないので挿絵から想像する)stone brought forth by powers of moon sky

月空のパワーによって生み出された石(が王族の一人XXの心に刺さった(?))

 

The trolls from dark mountain realm have healing hands.

暗い山の王国(領域?)にいるトロールたちは治癒する手を持っている。

 

A soul which (suffered) from cold wounded will (be) heal(ed), if (you) brought (them) very quickly to the field of them.

冷たく傷ついた魂*は、彼らの地へ急いで連れて行けば治癒される。

 

Trolls have those nature that they get all thaw out of approached body to save one.

トロールたちは、(魔法を)とかして(魔法によって)犯された体から取り除き救う(ことができる)特質を持っている。

 

Such action done in true love is an only which can thaw heart stoned very quickly.

真実の愛において行われる行為だけが唯一Stoned Heartを迅速に解かすことができる。(映画の中の言葉で言うなら、“An act of true love is the only way to thaw a frozen heart” となるでしょう。)

 

解釈する上で生じた問題:"Stone" と "Soul"

いかんせん私が元のルーン文字の表す言葉のニュアンスがわからないため、Panyaさんがトランスレートされた英語をつないで解釈するところしかできないので限界がありますが。

大きな問題は2つ。

一つ目は “Stone” 。“Stoned Heart” が “Frozen Heart” だとするとこのStoneはなんだろうか。氷の塊?もしかしてティザーで大量に浮いているあの結晶のこともStoneっていえるのかな?

ただ、トロール自体が岩であることや、F2の予告編の描写で石や岩が多く出てくること、またFROZEN IIというロゴ自体も下半分が石になっていることから石である可能性もあります。なんとも言えません。

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二つ目は “soul”。この文書によれば「 “cold wounded” な “soul” はトロールが治癒できて、“stoned heart” は “an act of true love” によってしか “thaw” できない」と書いてあるわけですが、映画に照らし合わせるとトロールが治癒できるのは head。真実の愛の行為だけで溶かせるのは Frozen heart。だからこのsoulはheartというよりはheadとかbodyのはずなんです。でもなぜsoulなのか、あるいは元の言葉のニュアンスはもっと広いのか、ちょっとわかりません。

これらは私がここで唸っても答えは出ないので保留にします。

 

"Stone" をもたらした "Power of moon sky" を考える

Stoneが「石」なのか、Frozenという意味の方で「氷」や「氷の破片」をさすのか定かではありませんが、「石」か「氷」かをもたらしたのは「The power of moon sky」であることは確実です(元記事でのルーン文字解読が正しければ)。

 

ではここでFrozenの世界において "moon" がどういう意味を持っているか考えてみます。

まず F1ことFrozen (2013) 本編ではMoonという言葉はセリフとしては全く出てきません。

そこで Frozen Fever(エルサのサプライズ), Olaf's Frozen Adventure(家族の思い出) まで範囲を広げてみると、Moonが出てきている箇所が一つだけあります。

 

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それはFrozen Fever の Making Today a Perfect Day の最初のサビに入る前、エルサが歌うこの一節。

"I'm giving you the sun, the moon, and the sky"

元の歌の意味合いからすればこれは、エルサとアナの13年の隔絶が終わって初めての穴の誕生日に張り切るエルサが自分の心境を大げさに表現した歌詞にすぎず、ラブソングの歌詞にあるような I can give you the world と似たような表現であると言えます。

しかし私はどうしてもこれを単なるそれだけの意味の歌詞として見逃すことはできないと考えています。

なぜなら the sun, the moon, the skyのうち the sun, the sky はどちらも本編で数回ずつ言及され非常に重要な意味を持っているからです。それではひとつずつ見ていきます。

The Sun

"sun" という単語はFrozen本編の中で5回言及されます。

【1回目:オーケンのセリフ】
Big summer blowout.(夏物大セール)
Half off swimming suits, clogs, and a sun balm of my own invention, yah? (水着、サンダルに独自開発した日焼けオイルが半額、どう?)

>これはSunなんか照ってない今の状況を逆に強調するためのものであるのでそれ以上解釈の余地はないとする。

【2回目:オラフのセリフ】
Oh. I don't know why, but I've always loved the idea of summer. And sun, and all things hot.

>オラフの憧れる、愛しているものの一つであることがわかる。

【3回目:オラフの歌う歌詞 In Summer】

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When life gets rough (人生が辛くなったら)
I like to hold on to my dream(自分の夢にすがりつくのが好きなんだ)
Relaxing in the summer sun(夏の太陽の光の中でリラックスして)
Just letting off steam(ストレスを解消するんだ)

>辛い時にすがりつく夢として描かれるのは 夏の日の光の中ストレス解消している自分の姿。

【4回目:エルサの歌う歌詞 For the First Time In Forever (Reprise)】

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Anna, please go back home(アナ、帰ってちょうだい)
Your life awaits(あなたの人生が待ってるわ)
Go enjoy the sun and open up the gate(陽の光を楽しみに行って、門を開けて)

>エルサの考えているアナにとってのベストな状態は、門を開けて太陽(日の光)を楽しむこと。そしてそれはエルサにはできないこと。

【5回目:アナの歌う歌詞 For the First Time In Forever (Reprise)】

Anna: Don't panic(パニックにならないで)
Elsa: There's so much fear!(怖すぎるわ)
Anna: We'll make the sun shine bright(一緒に太陽を輝かせるのよ)
Elsa: You're not safe here!(あなたはここにいたら安全じゃないわ)

>アナは二人で一緒に太陽を輝かせようと言っている。これはつまりエルサに魔法の冬を終わらせてもらうことと同義であり、アナが具体的にできることがあるわけではない。取り戻したい夏の象徴としてのthe sunである。

 

ここまでは本編のSunでしたが、「夏の象徴」としてはもちろん、「失われたもの=取り戻すべきも」のとしての使われ方であることがはっきりしています。

さらに顕著になるのが ブローズンにおける使われ方。

まずオープニングナンバーはその名も「Let the Sun Shine On」。
これは「Let It Go」で3回繰り返されるフレーズ「Let the storm rage on」の対になるように作られているフレーズであることは明らか。

つまり、取り除くべきものとしての「the storm」<ー>取り戻すべきものとしての「the sun」という対応関係が明確に示されるようになっているわけです。
さらに歌詞の中では「Together we can keep the storm at bay」(一緒に力を合わせれば嵐を寄せ付けないようにしていられる)という一節もあり、the stormこそが煩わしいこと、問題、ネガティヴなことの象徴となっていることもわかる。

さらに戴冠式の進展を描きながらエルサが自分の心のうちにある本当はアナと過ごしたいという気持ちを歌う「Dnagerous to Dream」においては「I know I never see the sunny day」という一節があり、これは「Let the Sun Shine On」を歌っていた時のような幸せな日々は帰ってこないという旨の歌詞であることが推察される。

オラフのIn Summerがエルサの本心の代弁である、という話は多くの人が長らく論じてきたことだが、「Dnagerous to Dream」で「Sunny dayが本当は見たいけどもう見れないのはわかってる」とエルサ本人の口から歌われることで、その答えあわせがされたと言っても良いだろう。

The Sky

"sky" という単語はFrozen本編の中で4回言及されます。

【1回目:幼少期アナのセリフ】
The sky is awake, so I'm awake. So, we have to play.
(お空が起きてるから私も起きてる。だから二人で遊ばなくちゃ。)

>「お空も起きてるし、私も起きてる」という吹き替えのセリフのニュアンスがちょっと違うのがお分かりいただけるだろうか。お空が起きてるのと私もが起きてるのは並列ではない。「お空が起きてるから私も起きてる」なのだ。(ここが解釈に関係してくれるかは定かではないが)

【2回目:エルサの歌う歌詞 Let It Go】

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I am one with the wind and sky
(私は風と空とひとつなの)

>これはのちほど下でじっくり書く。

【3回目:オラフの歌う歌詞 In Summer】

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Oh the sky will be blue and you guys will be there, too
(あぁ 空が青くなって きみたちもそこにいっしょにいるんだ)

【4回目:オラフのセリフ】
Look Sven, the sky is awake
(見てスヴェン、お空が起きてるよ。)

The sky is awake はオーロラのことについての言及であり、オーロラとエルサの魔法の関連性の可能性については以前の記事で述べているので、そちらを参照していただきたい。

The Wind の使われ方からわかること

ただここで確認して起きたいのは、Let It Goに登場するこの一節 I am one with the wind and sky。

The windも実は劇中2回しか登場しておらず、どちらもエルサによっておなじ Let It Go 中で歌われている。

【1回目:エルサの歌う歌詞 Let It Go】

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The wind is howling like this swirling storm inside
(風が唸っている この内で渦巻く嵐のように)

【2回目:エルサの歌う歌詞 Let It Go】

I am one with the wind and sky
(私は空と風と一つなの)

 

となると風がエルサの心の中の嵐、すなわちエルサの心境を映し出すように機能していると考えると、風が彼女の一部であることはよくわかります。

I am one with the wind and skyの一節を真面目に取れば、同様にthe skyも彼女の一部であるはずである。

The Sky=オーロラであれば、オーロラが彼女の心境や魔法を映し出していると考えることができ、筋は通るわけである。

つまり、何が言いたいかと言えば、I am one with the wind and sky の一件普通の単語に見える "the wind" と "sky" はしっかり脚本全体を通した上で選ばれている言葉であることが確認できるのだ。

 

The Sun, The Moon, The Sky

ということでこれまで見てきたように
「Making Today a Perfect Day」に登場する一節 "I'm giving you the sun, the moon, and the sky" のうち、the sun と the sky ははっきりと作品の世界観の中における意味合いが表明されていることがわかります。

そして、the windの使われ方でみたように、ロペス夫妻が何も意味もなくなんとなくごろが良いからという理由で "the moon" をここにいれているとは思えない、と私が思う理由もお分かりいただけたかと思います。

これ以上どう妄想するかは個人にかかっていると思いますが、もし Panyaさんのルーン文字解読が当っていて、 The power of moon skyが魔法の起源だとすれば、月について何かしらの言及がFrozen IIでなされる可能性が高いのではないかと思われます。

また気になるのは The power of moon ではなく moon sky となっている点です。

でもこれはルーン文字を私が直接解読できない以上、そのあたりのニュアンスを判断するのは難しく、現時点ではなんともコメントできません。

 

おわりに

最後にブローズンで月がしっかり描かれるのは、Frozen本編でもそうであったように Love Is an Open Door のシーンにおいてのみです。このシーンで月が象徴的に描かれることは果たして関係あるのでしょうか?
アナとハンスのシーンでありエルサにはあまり関係ないと思うので、ここの月は単なるシーンを作り上げる小道具の一つであると個人的には思っていますが…

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アナ・エルサの母イデュナは魔法をもっているのか?検証 [2/19更新] (『Broadway Frozenから Frozen II を予想するヒントを読み解く』より一部抜粋)

2/19 かなり重要な新情報更新:イデュナの唱える呪文はJoik(ヨイク(サーミの歌))そして出身はNorthern Nomads(北方遊牧民ーおそらくサーミ)であることが発覚(詳しくは赤字で追記)

はじめに 

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(右からイデュナ、ブルダ、ウェーゼルトン公爵、クリストフ、ヤングアナ、アナ、エルサ 略)

 

この記事は、「Broadway Frozenから Frozen II を予想するヒントを読み解く」という記事より、エルサとアナの母イデュナ女王についての分析のみ抜粋した記事になります。

元記事は3万字あり長すぎるということで、この抜粋記事を用意しました。

ikyosuke.hatenablog.com

記事の構造

もとの記事では、@moonboat_srさんがツイートされた、3つの予想と希望について紹介しながら、それを切り口に、

  1. <エルサの魔法>と<オラフ>
  2. <イデュナ女王>と<トロール
  3. <アナ>と<魔法>
  4. <エルサ>と<両親>
  5. <オーロラ>と<“The Sky Is Awake”(お空が起きてる)>

の5つの観点から、F1とブローズンを横断的に分析しながら、考察しています。ブローズンを20回以上観劇しているからこそわかる私の視点を踏まえ、F2についていろんな想像や妄想を巡らせる姉妹ファンにとって少しでもヒントになればと思って書きました。

 

が、非常に長くなってしまったためこの記事では、エルサとアナの母イデュナ女王に特化した2つ目と4つ目の観点のみに絞って紹介しています。

全てきになるという方は、上のリンクから元記事をお読みください。

 

用語定義

【F1(または「映画版」「アニメ版」)】(F2がでたのでこうする):Frozen:2013年公開の映画(公開年は米国に合わせるので2013ということで。)

【アナ雪】:アナと雪の女王:私がこの用語を使うときは「吹替版」のそれを指す。基本的に私は、吹替版と原語版を別物として扱う。なぜなら吹替版はあくまで吹き替えの訳をつけた人の解釈が反映され、さらに日本語でしか表せないニュアンスが含まれている時点で原語版そのものの日本語バージョンと捉えることはできないと考えるから。

【DCAフローズン】:Frozen: Live at the HyperionアナハイムにあるDisneyland ResortにあるDisney California Adventure のハイピリオンシアターで2016年5月より行われている映画により忠実で全長約60分という短縮版のミュージカル形式のショー。Frozenの監督で脚本家のジェニファー・リー、作曲のロペス夫妻も関わっているが、基本的に新曲はない。新たに追加されたアレンジや、既存の曲を別の形で利用している部分はある)

【ブローズン(または「舞台版」)】:Frozen: the Broadway Musical (2018年3月よりブロードウェイSt.James Theaterで上演している映画版Frozenをベースに、Frozenの監督で脚本家のジェニファー・リーが脚本に、作曲のロペス夫妻は新曲を作曲という形で関わっている。DCAフローズンと制作期間は被っていると思われるも公開はこちらの方が後であり、DCAはむしろブローズンと差別化されているはずである。)

【F2】:Frozen II:2019年公開予定の続編

 

 

<姉妹の母:イデュナ女王> と <トロール

つづいてお母様イデュナ女王の話題へ。これ、この記事のメインディッシュです。

まず @moonboat_sr さんはツイートの中で、ティザートレーラーの中盤に登場した謎の新キャラクターの少女について、イデュナの幼少期かもしれないし そうでなくてもイデュナさんの出身族の一人ではないかという予想をしています。

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この辺りは事実確認が難しいのですが、ヒントになりそうなブローズンで追加された要素を確認していきましょう。

まずオープニングナンバー「Let the Sun Shine On」に早速ヒントが二つあります。

1)「some things we can't do in public」

Let the Sun Shine On」はオープニングナンバーなのでアンサンブルのパートが語りとして説明をしている部分が冒頭に設けられています。

[Ensemble]
Elsa was a special child / From her first frozen tear
Her magic filled her parents' hearts / With so much love and fear
エルサは特別な子だった / 最初に流した凍った涙から
両親の心は彼女に対する愛と恐れであふれていた

[Queen Iduna]
"Elsa, no! What did we say?"
「エルサ、ダメよ!約束したでしょ?」

[Elsa]
"Magic must stay secret"
「魔法は秘密にしてなきゃいけない」

[Queen Iduna]
"And there's just some things we can't do in public"
私たちには人前ではやっていけないことがあるのよ

[Anna]
"Like, run naked in the breeze"
「そよ風あびながら裸で走ることとかね!」

[Queen Iduna & King Agnarr & Elsa]
"Anna!"
「アナ!」

 

これは何がヒントかと言うと「there's just some things YOU can't do in public」でも成り立つはずです。当然サラッと聞き流してしまえば、「we」は「ロイヤルファミリー」を指し、ロイヤルとしてやってはいけないことがある、と言う風に読むことができましょう。しかし、これ以降のヒントをみていくと単にそれだけではない気がしてきます。
(もちろんアナは裸で走りまわっちゃダメだけど。笑) 

2)「A family with secrets to keep」

そして1度目のサビを挟んで、続く語りの部分でこのようにアンサンブルが付け加えます。

[Ensemble]
Once there was a family / With secrets to keep
As rulers in a land where / Respect for the crown runs deep
かつて隠すべき秘密(複数形)をもった家族がいた
王家への尊敬が深く浸透している王国の統治者として

こちらももしエルサのことだけでよければ「a secret」でも良いはずです。しかしわざわざ「secrets」と複数形になっております。これはエルサの魔法以外にも秘密がある可能性をほのめかしています。「we」と「secrets」は皆さんもサントラで確認できるのでぜひ耳を澄まして聴いてみてください。歌詞と和訳と描写はこちらの記事参照。

3)イデュナのペンダントとHidden Folks

「Let the Sun Shine On」を経て「A Little Bit of You」の最後に起きる事故。その直後、駆けつけてくるアグナル王とイデュナ女王。イデュナ女王は状況を察すると、追いかけてきて何か対応しようとする召使いたちを追い払うようアグナルに指示します。

窓を開け始めるイデュナ。アグナルはイデュナが何をしようとしているのかわからず尋ねると、「Hidden Folks を呼ばなくちゃ」とイデュナさん。開いている窓に向かって呪文を唱え始め(これをJoik:ヨイクと言うらしい)ると、イデュナさんの首についているペンダントが緑色に光り始めます。次の画像は公式のパンフレットより。

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アグナル王は何もできず、ただただ凍っていくアナをだいて戸惑っています。イデュナがヨイクを終わると、外には黄色く光る無数の目が。

ヨイクを終えた後、Hidden Folksが入ってくるのを待つ間、イデュナはエルサの手を取り、自分の胸についている緑色に光るペンダントに当てさせます。

二人だけ窓から姉妹の寝室に入ってきます。それがパビーとブルダです。画像の左がパビー、中央がブルダ。
(ちなみにオリジナルキャストのパビー役Timothy Hughesさんは2月17日を持ってFrozenを去られましたが、映画「グレイテスト・ショーマン」にサーカスのメンバーで出演していますので探してみてください。)

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ブローズンではトロールではなくHiddenFolksとなっているのはアニメチックな可愛いキャラクターではなく、より神秘的な生物として描きたいからなのでしょうか。尻尾が生えていて、眉が濃くつながっており、イデュナさんのペンダントと同じようなクリスタルを胸に1つ〜複数つけてます

入ってきたパビーはイデュナにこう言います。

パビー:「A Queen who knows our call?」(私たちの呼び方を知っている女王か?)

イデュナ:「I'm a child of Northern Nomads*」(私は北方遊牧民の子どもよ【※Frozen Jr.という米国の学校向けの短縮版ブローズンの台本で答え合わせができました。その台本はコピーライト的に貼るとまずそうなので、リンクを置いておきます。この台本の17ページに掲載されています。なおこの台本とブローズンは言い回しやセリフを言うキャラクターなど大きく異なる部分も多いですが単語レベルでは参照して良さそうです。)】

issuu.com

ブルダ:「Now you're Queen. Good for you.
それが今じゃアレンデールの女王様? やるじゃないの(ここで大体会場ウケる))

イデュナ:「Our daughter is hurt.」
(娘が傷を負ったの)

で、この魔法は生まれつきか?というあの映画の会話に入っていきます。

ではこのシーンを映画と比較します。F1では、魔法を受けたエルサに対し即座にに対応するのはアグナル王。彼が図書室へ行って古くから伝わると思われる資料を取り出してきてそこに挟まっている地図を持ち出し、馬でトロールのいるリビングロックの谷へ向かうということになっています。

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ではなぜ、わざわざイデュナさんが「Northern Nomads:北方遊牧民」の子孫であることを告げるのか、そしてなぜイデュナは「Hidden Folks」たちが持っているのと同じ光クリスタルのペンダントを持っているのか。なぜエルサに触らせるのか。そしてなぜ彼らを呼ぶことのできる呪文を知っているのか。これらの設定はF1からわざわざ変更・追加されているわけです。

 

ここで @moonboat_sr さんのツイートの続きを見てみます。 

これらは非常にブローズンにおけるイデュナさんの描かれ方と合致しているように思えます。北方遊牧民の子孫であると言うことは「人」ではありそうです。しかし、少なくとも「自然とより近しい民族」であることは確かになりました。

もちろんF2はブローズンの続きではなくあくまでF1の続きですので、F2であらためて描写が必要になる点は多いと思いますが、ジェニファー・リー監督やロペス夫妻がわざわざこのように脚本を変え、この呪文を唱える時の新曲(これはCDに入っていないので劇場でしか聴けない)を用意していることからも、十分にF2へ入れる要素と関連している可能性はあるはずです。

ちなみにエルサのアイスパレスを訪れて、For the First Time in Forever Repriseの最後で心に魔法をくらってしまったアナの髪の毛が白くなっていることに気づいたクリストフは、イデュナが使ったのと同じ呪文を唱えて、「HIdden Folks」を呼び、「Fixer Upper」のシーンが始まります。(映画と異なり、クリストフは幼少期のアナの治癒を目撃しているわけではないので、多分僕の「家族」が助けてくれるはずだ、といって穴を連れて行きます。そして「パビーが直したのみたことある」と言うのはブルダが言います。)

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「Hidden Folks」とクリストフの関わりについては、映画とまた少しだけ変えられていて、それはパビーたちがアナの魔法を取り除くシーンが寝室で行われるため、幼少期クリストフが目撃するというシーンがないためです。パビーがアナの魔法を取り除いてさって行く時、ブルダがこういうのです。

ブルダ:「Call on us anytime. We love children. Raised a few strays ourselves」
(いつでも頼りにしてね。子どものこと大好きなの。2、3人身寄りのない子を私たちで育てたことあるの。)

と。もちろん映画の時系列であればこの時点で、クリストフについて「raised」と過去形になっているのはおかしいです。しかし、クリストフの年齢は舞台では明かされていないこと、またクリストフがアナを治癒してもらいに行く時アナに「自分とスヴェンが他に頼る人がいなくなった時、拾ってくれたんだ」とHidden Folksのことについて説明をします。そして、ブローズンでは他に幼少期クリストフの描写がないことから、この「a few strays (浮浪児、迷子、身寄りのない子ども)」のなかにクリストフが含まれているという解釈がいちばん都合が良さそうです。そのように考えると、クリストフのように Hidden Folks に育てられた子どもたちは Hidden Folksを呼ぶ呪文を知っている可能性が高いです。

 

と思っていたのですが!この記事の下書き段階を共有しながら @moonboat_sr さんと議論をした翌日 2月17日にクリストフ、オラフ、ハンス、パビーのオリジナルキャスト最終公演を観に行った際に、私が今まで気づいていなかった些細な演技に目が止まりました。

 

4)イデュナと手袋

先ほど紹介した、「Let the Sun Shine On」の一節、「Once there was a family / With secrets to keep」が歌われる時、イデュナはアグナル王と肩を寄せ合いながら、手袋を抑えています。ここまで書き忘れておりましたが、イデュナは登場時から手袋をしていて、それを事故後にエルサの手につけさせます。 

手袋といえば、F1ではハンスも手袋をしており、アナを裏切るときだけ手袋を外すという描写から、「手袋=秘密」というセオリーがフローズンファンには一般に浸透していると思われます。しかし、ブローズンのハンスは手袋をしていません。このことからブローズンにおいて「手袋」というアイテムが重要になる登場人物はエルサとイデュナに絞られています。(例外として山登りするときのアナの手袋はありますが、それは実用性をもっての手袋ということで加味しません。)

そして、Do You Want to Build a Snowman」で再び登場するときイデュナは別の手袋をつけていることに気づきました。

 

さらに掘り返すと、事故後にエルサがパビーによって未来を見せられ「自分のことを人々がモンスターを見つめる目で睨んでくる」と歌う際に、イデュナは手袋をした自分の両手を見つめながら眉をひそめて首を横に振ります。

ほかにも、「Do You Want to Build a Snowman」曲中にアグナル国王がエルサに「Conceal, Don't feel」を教えるときや「There will come a day you have to stand before your people without them」(手袋を外して国民の前に立たねばならない日(=戴冠式)がくるんだぞ)と言うときなど事あるごとに手袋をした自分の手を気にしている演技をしていることに気がつきました。

どうしても舞台だと映画と違って見る場所が多く、ついつい喋っている登場人物ばかり目で追ってしまうため、この辺りは何度も見ていたにも関わらず見逃しておりました。

 

5)イデュナはクリストフ同様トロール(ないしHidden Folks)に育てられた?

私はてっきり「Call on us anytime. We love children. Raised a few strange ourselves」の「a few strays ourselves」はクリストフについての説明だと思っていましたが、 @moonboat_sr さんからこれにイデュナが含まれるのでは、と言われました。それを頭において舞台を観に行くと、それが多いにありえそうだということにある演技から気づきました。

このセリフを言うときブルダはイデュナの手を取って言っており、言い終わった後にイデュナは微笑んで「Thank you.」と言います。

その直後、間髪入れずに、アグナルの方へ振り返って「She can learn to control it. I'm sure of it.」(この子なら必ず制御できるようになるはず。絶対よ。)

アグナルが「Give me your gloves. Put these on Elsa.(略)」という流れになります。

ブルダとの会話の直後に、イデュナはエルサが魔法をコントロールできるようになる、と言い切れるわけです。

確実に言えることをまとめると...

  1. イデュナさんが何らかの形で、パビーたち Hidden Folks に関係がある(クリスタルのペンダントを持っている、呪文を知っている)
  2. 少なくともその先祖である「Northern Nomads」のことは Hidden Folks たちは認識している
  3. イデュナはもともと王族ではなく北方遊牧民の子孫であるため、Hidden FolksでさえアレンデールのQueenになるとは思っていなかった=どこかの段階でアグナルに嫁ぐことでアレンデール王家に入っている(ただし少なくとも人である)
  4. Hidden Folks は複数人の血縁のない(おそらく人間の)子どもを育てており、その子どもの一人であるクリストフはイデュナ同様呪文を知っている

    <ここまでが言語化されている、あるいは視覚的に表されていること。
    これ以降ははっきりと言及されないが、ほのめかされること。>
  5. イデュナはブルダたちHidden Folksに育てられた可能性が高い(「Raised a few strays ourselves」)
  6. イデュナは魔法を使える可能性が高い(常につけている手袋、エルサの魔法についてアグナルのとる行動に対する反応、コントロールできるようになると言い切る発言)
  7. イデュナがつけているペンダントは何らかの魔法を抑える機能がありそう(事故直後のエルサに触れさせる)
  8. しかしペンダントはイデュナの魔法専用である可能性がある(エルサの魔法がそれで完全に抑えられるならそれを譲渡すれば良いはずだが、エルサには譲渡されない)
  9. 唱えているのがJoikであることやノルウェーの北方遊牧民であることから、サーミである可能性が高い
  10. クリストフもこのJoikを知っていて、サーミはトナカイを遊牧するのでクリストフも同じ北方遊牧民出身だった可能性がある
  11. さらにブローズンの舞台を囲っている柱には、トナカイと雪の結晶の象形文字?のような模様が彫られていることもわかっています。(画像参照)これらはFrozenの世界観独自のものなのか、元の文化に関係しているのか、私にはわかりません。サーミの文化に詳しい方、ぜひご協力をお願いしいます。

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当然これらのことはあくまでブローズンではの話であって、例えばF1で登場したエルサとイデュナに共通して見られるブローチなどは一切登場していません。映画からブローズンになる過程でアグナルからいデュナに役割が変更された部分も、あくまで舞台版での話であり、これによって一昨目が改変されるわけではなく、何もはっきりとは言い切れません。ただし、脚本家と作曲家が同一で、続編の制作期間とかぶせて制作していた舞台版で、上記のような設定変更をわざわざ行っていることを元に考えると、@moonboat_sr さんのおっしゃるようにイデュナさんが何らかの形でトロールに関係していて、魔法とも関連性がある可能性は非常に高いとみてよさそうでしょう。 

 

<エルサ> と <両親>

 そして @moonboat_srさんが続けるのは再び両親の話。

 まず、新しい家族の形(未来)については以前自分がツイートしていたのでそれを引用します。 

ちなみに "True Love"はブローズンで追加されたアナのソロ曲。ハンスに裏切られて、一人部屋に残されてだんだん凍りついていくアナが自分の最期を悟りながら歌うバラード。

@moonboat_srさんがおっしゃる「2つの意味の『アンサー』」
  1. 何故こうなったのか(出生や魔力、両親の死の真実)
  2. 娘として「私たちが選んだこの道でいいのよね?パパとママは喜んでくれてる?」

これらにつながるヒントがブローズンにないか、少しずつ検証していきましょう。
ブローズンではエルサがF1よりも両親について気にしていることがはっきりわかる描写が多く追加されています。

 

先ほど紹介したシーンで、アグナルがイデュナの手袋をエルサにつけさせることは説明しました。

アグナル:「Put these on. Keep it (magic/power) inside.」

映画と同様に、王は召使いを減らし、エルサと他の人との接触を最小限に抑え、アナとも隔離すると宣言します。

ブローズンではそれに対しイデュナが反対します。

イデュナ:「No! They're sisters! We can't expect them to stay away from each other!」

ここから再び歌に。(これもサントラに入っておらず劇場のみ。またこれも Monster のプリプライズに当たる部分。)

[エルサ]
Mother, it's how it has to be 
(お母さま、きっとこうしなくちゃいけないのよ

What's best for her is best for me
(アナにとって最善の選択なら、それは私にとっての最善なの)
Father, I'll do as you say
(お父さま、言われた通りにするわ)

[アグナル]
We'll help you to control it, I know we'll find a way
(お母さま、きっとこうしなくちゃいけないのよ

[イデュナ]
Only until we gain more ansers in hand
(でも離れ離れになるのも、もっと別の答えが見つかるまでのことよ)
We'll find a way back
(一緒に方法を探しましょう)

[イデュナ&アグナル]
To be a family again

ここで四人は手を取り合おうとしますが、エルサはアナが差し出す手を握れずに走って去ってしまいます。

そしてDo You Want to Build a Snowman中に亡くなった両親は、フィナーレで舞台脇に再登場するDCAフローズンのとは異なり、カーテンコールまで2度と登場することはありません。しかし、エルサが度々「Father」「Mother」と呼びかけるかたちで言及されます。

まず、戴冠式を乗り切った直後。天井の方を見上げてエルサが笑顔で次のセリフを言います、

[エルサ]
Father, I did it! (無邪気に笑う)

曲としては Dagerous to Dream の最中。詳しくはこちら。

ikyosuke.hatenablog.com

 

つづいてエルサが両親について言及するシーンは、「Let It Go」。
ブローズンのうち公開されている数少ない本編映像にabcのThe VIEWという番組で放映された映像です。ちなみにこんなに各所全てで歓声があがることは稀です。おそらくテレビの演出なのではないでしょうか。

youtu.be

ここでは「Father」「Mother」と言う言葉こそないものの、「Heaven knows I tried」という歌詞があるのは皆さんもご存知かと思います。私はこの「Heaven」が両親を指していると解釈しています。

それは「Heaven Knows I tried」が枕詞となって、アグナルに仕込まれ劇中なんどもエルサが唱えるあのマントラ「Don't let them in, don't let them see, be the good girl you always have to be, Conceal, don't feel, don't let them know」が導かれるからです。がこれはF1の時点でも言えることでした。

ブローズンで加わったさらなるヒントは、エルサの衣装にありました。戴冠式エルサのあの衣装、ブローズンではアナの口によってはっきりイデュナが着ていたドレスだったことが明かされます。それに気づいた時の私のツイートがこちら。

「Let It Go」の終盤で、エルサが変身した時もともときていた戴冠式ドレスが消える件については、最近シュガラオでプリンセスに助けられたラルフがドレスを着た時、中の服が消えることとも関連して再び話題になりましたが。

ブローズンでは「Let It Go」の演出も異なる部分が多くあります。

まず、F1では最初のサビに入る直前の「Well now they know」で父アグナルからもらった手袋を飛ばし、最初の「Let it go」で有名なあの魔法を出しますが、ブローズン「Let It Go」ではサビの最初の「Let it go」でアグナルがつけさせた母イデュナの手袋を飛ばします。魔法はまだ使いません。

またF1では魔法を使い始めてすぐ「Can't hold it back anymore」でオラフwithoutニンジンを作りますが、ブローズンではその演出もありません。そして後ほど、オラフはニンジンまでついた状態でアナたちの元に現れます。これは「Let It Go」がF1の時系列と異なり、第一部の最後に移動されたことで、それよりも先にオラフが登場しなくてはならないことが関係していると思われます。

ただ、アレンデールの紋章の入った重たい長いマントをCold Never Botherd Me Anywayとともに吹き飛ばすところはF1もブローズンも同じです。

また、最後に変身するタイミングも「And I'm rise like a break of dawn」ではなくその手前の「Past is in the past」のあと最後のサビの「Let it go」の前の裏拍になっています。これは音楽的な盛り上がりと変身のタイミングを合わせることが関係しています。ここではほぼ必ず拍手が起こり「フォー」と歓声とともに会場全体が沸きます 笑。(Well, you know, this is broadway.)

さらに映画と異なるのはF1では「Past is in the past」で投げるティアラを投げません。これはブロードウェイショーの多くはマイクがウィッグについていることが関係していると思います。ただ髪の毛は一本三つ編みに手で直します。

つまりLet It Goが母イデュナから授かった「手袋」「ドレス」からの解放のように描かれている、ということが示されます。映画では父親に教わったマントラ「Conceal, Don't feel」からの解放が強調されますが、ブローズンでは衣装を通して母イデュナからの解放も描かれるのです。

つづいて、両親について言及があるのは、アイスパレスに訪ねてきたアナの心臓に魔法を直撃させてしまって混乱する中、ハンスたちが攻めてきてそれに応戦するシーンで歌われる「Monster」の最中。

 

ikyosuke.hatenablog.com

 

こちらがその一節。

 

[エルサ]
Was I a monster from the start?
私は生まれつきモンスターだったの?
How did I end up with this frozen heart?
どうしてこの凍りついた心になってしまったの?
Bringing destruction to the stage
世界に破壊をもたらし
Caught in a war that I never meant to wage
関与する予定のなかった争いに巻き込まれて
Do I kill a monster?
モンスターは私自身で殺すしかないの?

Father
お父様
You know what's best for me
私にとっての最善を知ってるはずよね
If I die, will they be free?
私が死ねば、みんなは自由になるの?

Mother
お母様
What if after I'm gone
もしも私が逝った後
The cold gets colder and storm rages on?
寒さはさらに増して、嵐が強くなってしまったら?

ここでまた上を向いて両親に語りかけます。この時エルサは地面に跪いて、両手を合わせてすがるように上(おそらく両親のいる「Heaven」)を見ます。

もちろん二人は亡くなっていて、答えてはくれません。エルサは自分で答えを出します。

No, I have to stay alive to fix what I've done

ダメよ、私は生き続けて 自分のしでかしたことを解決しなきゃ

Save the world from myself

私自身から世界を救うの

And bring back the sun

そして太陽を取り戻すの

これが彼女の出した答えで、実際にこれを成し遂げます。そう、アナと一緒に。「together that's the key」という「A Little Bit of You」で歌われた言葉が全てのアンサーだったのです。 

寄り道しすぎましたが、@moonboat_sr さんのおっしゃるエルサが両親に求める二つの「アンサー」に戻ります。

  • 何故こうなったのか(出生や魔力、両親の死の真実)
  • 娘として「私たちが選んだこの道でいいのよね?パパとママは喜んでくれてる?」

 

結局どちらもブローズンでは得ることはできていませんが、エルサとアナがそれぞれ自分が納得するかたちで見つけてそれに従い二人が手と手を取り合う(文字通り)ことで、凍りついた世界(と多分二人の関係性、と多分王家と国民の関係性)を解いていることがF1よりもわかりやすく描写されていることは確かであり、これらを加味すると、

こちらのツイートで@1cVam さんのおっしゃるような意味での両親との関係性についてはF2で改めては言及されないパターンも多いにあるのではないかと個人的には考えています。

*記事を書き終わった後の追記*

記事公開前に@moonboat_srさんご本人に確認させていただいたところ、2つ目のアンサーについては次のように説明されていました。「」内はご本人のお言葉です。

「エルサの『呪縛』」=「パパママとのわだかまり」が「まだ解けていないと言う意味」ではなく「フローズンフィーバー(エルサプ)で姉妹が離れていた13年間を埋めようとしていたり家族の思い出(オラアド)で両親亡き後姉妹で新しい『アレンデール』『家族』『伝統』をつくっていくということについて、娘として、国を担う者として両親がどう思っているか」のアンサーのことを指しておられたそうです。

さてF2ではどのように両親との関係性が描かれるのか。
楽しみですね。 

 

おわりに

ということでこのの記事では 

以下の

  1. <エルサの魔法>と<オラフ>
  2. <イデュナ女王>と<トロール
  3. <アナ>と<魔法>
  4. <エルサ>と<両親>
  5. <オーロラ>と<“The Sky Is Awake”(お空が起きてる)>

の5つの観点のうち

2と4について抜粋して紹介しました。これらを含む全ての内容は、以下の記事に掲載していますので、ご興味のある方はお時間のある時にお読みください。

ikyosuke.hatenablog.com

この記事が、F2についていろんな想像や妄想を巡らせる姉妹ファンにとって少しでもヒントになればと願っています。 

読んでいただいた方、ありがとうございました。
Frozen II 公開まで9ヶ月以上ありますが、公開までの間の謎解きは今しか楽しめませんので、公開されているヒントを集めながら考察して楽しんでいきましょう。笑 

Broadway Frozenから Frozen II を予想するヒントを読み解く(2/19追記)

[2/19 追記 赤字で記入済み]

はじめに

 


Frozen 2 | Official Teaser Trailer

米国では今週Ralph Breaks the Internet のストリーミングが始まったので、それをじっくり分析しようと思っていたら、それに手をつけ始めた朝にFrozen IIのティザートレイラーが出るし、今朝は今度はToyStory4の本編映像の30秒前出しがGMAであったおかげでそっちに気を取られ、これだけ愛するコンテンツの考えなきゃいけないことであふれていて本当にうれしい悲鳴なのですが、いかんせん私もこれだけやっているわけではないので手が回り切らない笑

となっているわけなのですが、今回はFrozen IIの予告編を見ていろいろな方が展開の予想や妄想を繰り広げている中で私が目について面白いなと思ったものを紹介しつつ、それをBroadway版の追加・変更要素と付き合わせて考えた時にどうかという考察をしてみようと思います。

 

用語定義

いつも短く書こうと思いつつも誤解のないように丁寧に説明し始めつい長くなってしまうので、少しでも文字数を減らそうということで略語を定義しておきます。私のツイート(@westergaard2319)やこのブログをいろいろご覧になっている方は「ブローズン」はすでにお分かりと思いますが、整理します。

【F1(または「映画版」「アニメ版」)】(F2がでたのでこうする):Frozen:2013年公開の映画(公開年は米国に合わせるので2013ということで。)

【アナ雪】:アナと雪の女王:私がこの用語を使うときは「吹替版」のそれを指す。基本的に私は、吹替版と原語版を別物として扱う。なぜなら吹替版はあくまで吹き替えの訳をつけた人の解釈が反映され、さらに日本語でしか表せないニュアンスが含まれている時点で原語版そのものの日本語バージョンと捉えることはできないと考えるから。

【DCAフローズン】:Frozen: Live at the HyperionアナハイムにあるDisneyland ResortにあるDisney California Adventure のハイピリオンシアターで2016年5月より行われている映画により忠実で全長約60分という短縮版のミュージカル形式のショー。Frozenの監督で脚本家のジェニファー・リー、作曲のロペス夫妻も関わっているが、基本的に新曲はない。新たに追加されたアレンジや、既存の曲を別の形で利用している部分はある)

【ブローズン(または「舞台版」)】:Frozen: the Broadway Musical (2018年3月よりブロードウェイSt.James Theaterで上演している映画版Frozenをベースに、Frozenの監督で脚本家のジェニファー・リーが脚本に、作曲のロペス夫妻は新曲を作曲という形で関わっている。DCAフローズンと制作期間は被っていると思われるも公開はこちらの方が後であり、DCAはむしろブローズンと差別化されているはずである。)

【F2】:Frozen II:2019年公開予定の続編

 

※ちなみに私は恐れ多くも「OUAT」ことOnce Upon a Timeシリーズは全く見ていないのでこれについては言及できないです。また、「DCLフローズン」ことDCLディズニークルーズラインのワンダー号で2016年11月から上映中の映画に忠実なミュージカルショーも見たことがないので言及できませんが、@1cVam (twitter)  さんのレポートを見る限りではDCA版とほぼ同じ台本でほぼ同じ演出のようです。上演時間や公開時期がほぼ同じなことからもそれは納得がいきます。

 

記事の構造

@moonboat_srさんがツイートされた、3つの予想と希望について紹介しながら、それを切り口に、

  1. <エルサの魔法>と<オラフ>
  2. <イデュナ女王>と<トロール
  3. <アナ>と<魔法>
  4. <エルサ>と<両親>
  5. <オーロラ>と<“The Sky Is Awake”(お空が起きてる)>

の5つの観点から、F1とブローズンを横断的に分析しながら、考察していきます。ブローズンを20回以上観劇しているからこそわかる私の視点を踏まえ、F2についていろんな想像や妄想を巡らせる姉妹ファンにとって少しでもヒントになればと思います。

 

*注意*

この記事は非常に長いです。が、ブローズンを見たことない方にも理解していただけるように詳細に記述しておりますので、どなたでもお楽しみいただけるようにしているつもりです。

 

@moonboat_sr さんの予想・希望

@moonboat_srさんは本記事を執筆し始めたアメリ東海岸時間2月16日までに大きく分けて3度ほどの予想・希望を投稿されています。

今回扱うのは2つ目の予想「予想(改)」と3つ目の「希望」というもの。
ちなみに1つ目の「予想」を要約すると次のようでした。 

@moonboat_sr さんの「予想」(1つ目) 

エルサたちは、未来を変えたいために過去を書き換えたい「なにか」に巻き込まれ、まだアレンデールが建国される前の太古の北欧へタイムスリップし、大昔のアレンデリアン(アレンデール国民)になる人たち(新キャラ)に出会いながら過去を冒険することになる。
過去を変えれば未来が変わる、というところから、エルサが魔法を持たなければ姉妹は引き裂かれず、その解決法を見つけるべく旅立った両親も事故にあってなくならないだろうという選択肢を前にする姉妹。しかしアナが魔法を持った今のエルサを愛するため、孤独に苦しむ13年を選択する。結果1作目で起こった通りのことが全て起こり、再び世界は凍り、同じ結末が巡ってくる。

(尚このプロットは、公開されているツイートに加えご本人から直接補足していただいたものをもとに私がまとめています。)

このバージョンもとっても観てみたいですね。
人生が繰り返し、外部からの影響で変わったり、未来を変えるために過去を変えようとするというところが、アナの声優クリステン・ベルが主演しているテレビドラマ「The Good Place」みたいでとっても面白そうに感じます。

が、今はこちらには深く触れずに二つ目へ。後ほどこの予想についても言及します。

 

<エルサの魔法> と <オラフ>

ここから本題です。 

@moonboat_sr さんの「予想(改)」(2つ目) 

テーマは「命」になるのではないかという予想。
その理由はエルサの魔法は雪や氷を操るだけでなく、オラフやマシュマロウ、スノーギースなどの「命」を生み出す部分こそがすごいから、とのこと。

そしてこのツイートです。

実は、オラフが「エルサとアナの一部分ずつ」であることは実際ブローズンでオラフをつくるシーンの曲になっています。それもタイトルになっています。

「A Little Bit of You」

[Elsa]
"You know, there's a recipe to making a proper snowman"
あのね、 雪だるまを作るのには '正しい' やり方があるの

というエルサのセリフをきっかけに始まるこの曲。

[Elsa]
A little bit of you, a little bit of me
アナのひとかけと私のひとかけ

(中略)

[Anna]
A little like me, a little like you
私にちょっとにてて、エルサにもちょっと似てる

(中略)

[Both]
He'll love warm hugs and the bright sunlight
あったかいハグと明るい陽の光が大好きで 

[Anna]
And he'll really love the summer
夏がとっても大好き 

[Elsa]
But he'll melt!
でも溶けちゃうわ!

[Anna]
Yeah, you're right
あぁ、そっか。 

"Oh!" So we'll build him back together
あ! 溶けたら一緒に作り直そうよ

[Elsa]
Yes, together, that's the key!
そう、一緒に、それが大事ね! 

[Both]
'Cause he's a little bit of you and me
だってこの子は、私たち二人のひとかけずつだもん

 

ikyosuke.hatenablog.com

歌詞の全文と和訳、さらに詳しい解釈・解説はこちらの記事参照していただくとして、まさにこのツイートの内容が歌詞になって現れていることがお分かりいただけると思います。

なぜこの曲がブローズンにあるかといえば、実はF1と描写が大きく異なる部分があることが関係していると思っています。

それはニンジンです。

F1では雪だるまを作るのがエルサ、ニンジンを挿すのがアナで、それによって完璧になるのです。ニンジンをアナにさしてもらった後の「now. I'm perfect」というオラフの発言からもあるように。

しかしブローズンで、あの事故の夜に姉妹が作るオラフは正確にはいわゆる「雪だるま」ではありません。ご存知の方はいらっしゃると思いますが、エルサとアナのそれぞれのおもちゃ箱からボールや太鼓、ボートそして顔のついたニット帽を取り出してきて、それを組み合わせて雪だるまの形にします。そしてそこにエルサが魔法をかけることで、そのおもちゃでできた「雪だるま」の手が動くという風に改変されています。


これが劇場で販売されているそのオラフのレプリカで、ネットで購入することもできます。お尻の部分はまるでピクサーボールのようです。なぜこのデザインなのかはよくわかりません。

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www.playbillstore.com

 

もちろんこの改変は雪だるまを作るというのを舞台上で再現しにくいという技術的な制約も関わっていると思いますが、このシーンは本物の雪だるまでなくても代用できるということを公式が示しているというのが重要な点です。そしてエルサの魔法で大切なのは命を宿すこと、動かすことなんです。

ここで再び @moonboat_sr さんのツイートです。

確実に言えることは...

以上見てきたように、

  1. エルサの魔法がすごいのは「命」を宿すこと
  2. オラフはエルサとアナの一部分ずつ
  3. オラフはいつかは溶けてしまうけど二人でbuilt backすることができる、すなわち「繰り返す」あるいは「やり直せる」

これら@moonboat_srさんの解釈は全て「A Little Bit of You」の中に含まれていることがわかります。 

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また、先ほどスルーしてしまった一つ目の予想に登場した、アナが魔法を持っている今のエルサが好きであることも実はこの歌のなかではっきり示されます。

でもその前に一つ説明すべきことがありました。ブローズンでは「Do You Want to Build a Snowman」は劇の冒頭「Vuelie」の直後に一度プリプライズの形で歌われるのです。幕が開いて最初は幼少期姉妹が二人で「Do You Want to Build a Snowman」を歌うところから始まるのです。

そこについては是非こちらをご確認ください。詳しく描写しております。

ikyosuke.hatenablog.com

とにかくその冒頭のプリプライズ部分で、「じゃあ今夜寝る前に雪だるま作ろうね」とエルサがアナに約束し、アナが大喜びするところでオープニングナンバー「Let the Sun Shine On」が始まるという形で舞台が幕を開けます。

さて、時間は「A Little Bit of You」に戻してきます。おもちゃでできた「雪だるま」を作ってアナが「オラフ」となづけ「And I love warm hug」のくだりをエルサがオラフ声で言います。もともとアナとの約束は雪だるまを作ることだったので、約束を果たしたエルサは眠りにつこうとします。

[Elsa]
"Okay, time for bed!"
さぁ寝る時間よ! 

[Anna]
"What? No! Time for more magic, please and thank you!"
え?ダメ!もっと魔法を見せてくれるんでしょ、お願い!

[Elsa]
"Anna, you know I'm not supposed to even be doing this!"
アナ、こんなことだってしちゃいけないことだってわかってるでしょ!

[Anna]
"But your magic is the most beautiful, wonderful, perfectful thing in the whole wide world!"
でもエルサの魔法は、広い世界で一番キレイで、ステキで、完璧なんだよ!  

[Elsa]
"Do you really think so?"
本当にそう思うの? 

[Anna]
"Yes! So do it, please, before I burst from inside to outside!"
うん!だからやってよ!早くしないと爆発しちゃうよ! 

[Elsa]
"Okay, okay, don't burst!"
わかった、わかったって。落ち着いて!

ここからアナの魔法への要求がエスカレートして、あの事故へ至ってしまいこの曲が終わります。サントラでこの曲を再生するたびに心が痛みます。。。

「でもエルサの魔法は、広い世界で一番キレイで、ステキで、完璧なんだよ!」 ですって。これはもうアナのエルサへの愛の告白なんではないでしょうか。これを言われた後のエルサの顔の嬉しそうな表情を子役エルサたちがしっかり再現してくれています。喜ぶアナをみて嬉しくなってどんどんやってしまうエルサというのは映画と同じように描かれています。

このような点からも、ブローズンを反映するとしたら@moonboat_sr さんの一つ目の予想のアナのエルサに対する認識は対応していると見ることができます。

 

<姉妹の母:イデュナ女王> と <トロール

つづいてお母様イデュナ女王の話題へ。これ、この記事のメインディッシュです。

まず @moonboat_sr さんはツイートの中で、ティザートレーラーの中盤に登場した謎の新キャラクターの少女について、イデュナの幼少期かもしれないし そうでなくてもイデュナさんの出身族の一人ではないかという予想をしています。

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この辺りは事実確認が難しいのですが、ヒントになりそうなブローズンで追加された要素を確認していきましょう。

まずオープニングナンバー「Let the Sun Shine On」に早速ヒントが二つあります。

1)「some things we can't do in public」

「Let the Sun Shine On」はオープニングナンバーなのでアンサンブルのパートが語りとして説明をしている部分が冒頭に設けられています。

[Ensemble]
Elsa was a special child / From her first frozen tear
Her magic filled her parents' hearts / With so much love and fear
エルサは特別な子だった / 最初に流した凍った涙から
両親の心は彼女に対する愛と恐れであふれていた

[Queen Iduna]
"Elsa, no! What did we say?"
「エルサ、ダメよ!約束したでしょ?」

[Elsa]
"Magic must stay secret"
「魔法は秘密にしてなきゃいけない」

[Queen Iduna]
"And there's just some things we can't do in public"
私たちには人前ではやっていけないことがあるのよ

[Anna]
"Like, run naked in the breeze"
「そよ風あびながら裸で走ることとかね!」

[Queen Iduna & King Agnarr & Elsa]
"Anna!"
「アナ!」

 

これは何がヒントかと言うと「there's just some things YOU can't do in public」でも成り立つはずです。当然サラッと聞き流してしまえば、「we」は「ロイヤルファミリー」を指し、ロイヤルとしてやってはいけないことがある、と言う風に読むことができましょう。しかし、これ以降のヒントをみていくと単にそれだけではない気がしてきます。
(もちろんアナは裸で走りまわっちゃダメだけど。笑) 

2)「A family with secrets to keep」

そして1度目のサビを挟んで、続く語りの部分でこのようにアンサンブルが付け加えます。

[Ensemble]
Once there was a family / With secrets to keep
As rulers in a land where / Respect for the crown runs deep
かつて隠すべき秘密(複数形)をもった家族がいた
王家への尊敬が深く浸透している王国の統治者として

こちらももしエルサのことだけでよければ「a secret」でも良いはずです。しかしわざわざ「secrets」と複数形になっております。これはエルサの魔法以外にも秘密がある可能性をほのめかしています。「we」と「secrets」は皆さんもサントラで確認できるのでぜひ耳を澄まして聴いてみてください。歌詞と和訳と描写はこちらの記事参照。

3)イデュナのペンダントとHidden Folks

「Let the Sun Shine On」を経て「A Little Bit of You」の最後に起きる事故。その直後、駆けつけてくるアグナル王とイデュナ女王。イデュナ女王は状況を察すると、追いかけてきて何か対応しようとする召使いたちを追い払うようアグナルに指示します。

窓を開け始めるイデュナ。アグナルはイデュナが何をしようとしているのかわからず尋ねると、「Hidden Folks を呼ばなくちゃ」とイデュナさん。開いている窓に向かって呪文を唱え始め(これをJoik:ヨイクと言うらしい)ると、イデュナさんの首についているペンダントが緑色に光り始めます。次の画像は公式のパンフレットより。

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アグナル王は何もできず、ただただ凍っていくアナをだいて戸惑っています。イデュナがヨイクを終わると、外には黄色く光る無数の目が。

ヨイクを終えた後、Hidden Folksが入ってくるのを待つ間、イデュナはエルサの手を取り、自分の胸についている緑色に光るペンダントに当てさせます。

二人だけ窓から姉妹の寝室に入ってきます。それがパビーとブルダです。画像の左がパビー、中央がブルダ。
(ちなみにオリジナルキャストのパビー役Timothy Hughesさんは2月17日を持ってFrozenを去られましたが、映画「グレイテスト・ショーマン」にサーカスのメンバーで出演していますので探してみてください。)

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ブローズンではトロールではなくHiddenFolksとなっているのはアニメチックな可愛いキャラクターではなく、より神秘的な生物として描きたいからなのでしょうか。尻尾が生えていて、眉が濃くつながっており、イデュナさんのペンダントと同じようなクリスタルを胸に1つ〜複数つけてます

入ってきたパビーはイデュナにこう言います。

パビー:「A Queen who knows our call?」(私たちの呼び方を知っている女王か?)

イデュナ:「I'm a child of Northern Nomads*」(私は北方遊牧民の子どもよ【※Frozen Jr.という米国の学校向けの短縮版ブローズンの台本で答え合わせができました。その台本はコピーライト的に貼るとまずそうなので、リンクを置いておきます。この台本の17ページに掲載されています。なおこの台本とブローズンは言い回しやセリフを言うキャラクターなど大きく異なる部分も多いですが単語レベルでは参照して良さそうです。)】

issuu.com

ブルダ:「Now you're Queen. Good for you.
それが今じゃアレンデールの女王様? やるじゃないの(ここで大体会場ウケる))

イデュナ:「Our daughter is hurt.」
(娘が傷を負ったの)

で、この魔法は生まれつきか?というあの映画の会話に入っていきます。

ではこのシーンを映画と比較します。F1では、魔法を受けたエルサに対し即座にに対応するのはアグナル王。彼が図書室へ行って古くから伝わると思われる資料を取り出してきてそこに挟まっている地図を持ち出し、馬でトロールのいるリビングロックの谷へ向かうということになっています。

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ではなぜ、わざわざイデュナさんが「Northern Nomads:北方遊牧民」の子孫であることを告げるのか、そしてなぜイデュナは「Hidden Folks」たちが持っているのと同じ光クリスタルのペンダントを持っているのか。なぜエルサに触らせるのか。そしてなぜ彼らを呼ぶことのできる呪文を知っているのか。これらの設定はF1からわざわざ変更・追加されているわけです。

 

ここで @moonboat_sr さんのツイートの続きを見てみます。 

これらは非常にブローズンにおけるイデュナさんの描かれ方と合致しているように思えます。北方遊牧民の子孫であると言うことは「人」ではありそうです。しかし、少なくとも「自然とより近しい民族」であることは確かになりました。

もちろんF2はブローズンの続きではなくあくまでF1の続きですので、F2であらためて描写が必要になる点は多いと思いますが、ジェニファー・リー監督やロペス夫妻がわざわざこのように脚本を変え、この呪文を唱える時の新曲(これはCDに入っていないので劇場でしか聴けない)を用意していることからも、十分にF2へ入れる要素と関連している可能性はあるはずです。

ちなみにエルサのアイスパレスを訪れて、For the First Time in Forever Repriseの最後で心に魔法をくらってしまったアナの髪の毛が白くなっていることに気づいたクリストフは、イデュナが使ったのと同じ呪文を唱えて、「HIdden Folks」を呼び、「Fixer Upper」のシーンが始まります。(映画と異なり、クリストフは幼少期のアナの治癒を目撃しているわけではないので、多分僕の「家族」が助けてくれるはずだ、といって穴を連れて行きます。そして「パビーが直したのみたことある」と言うのはブルダが言います。)

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「Hidden Folks」とクリストフの関わりについては、映画とまた少しだけ変えられていて、それはパビーたちがアナの魔法を取り除くシーンが寝室で行われるため、幼少期クリストフが目撃するというシーンがないためです。パビーがアナの魔法を取り除いてさって行く時、ブルダがこういうのです。

ブルダ:「Call on us anytime. We love children. Raised a few strange ourselves」
(いつでも頼りにしてね。子どものこと大好きなの。2、3人血縁のない子を私たちで育てたことあるの。)

と。もちろん映画の時系列であればこの時点で、クリストフについて「raised」と過去形になっているのはおかしいです。しかし、クリストフの年齢は舞台では明かされていないこと、またクリストフがアナを治癒してもらいに行く時アナに「自分とスヴェンが他に頼る人がいなくなった時、拾ってくれたんだ」とHidden Folksのことについて説明をします。そして、ブローズンでは他に幼少期クリストフの描写がないことから、この「a few strange (childrenが省略されている)」のなかにクリストフが含まれているという解釈がいちばん都合が良さそうです。そのように考えると、クリストフのように Hidden Folks に育てられた子どもたちは Hidden Folksを呼ぶ呪文を知っている可能性が高いです。

 

と思っていたのですが!この記事の下書き段階を共有しながら @moonboat_sr さんと議論をした翌日 2月17日にクリストフ、オラフ、ハンス、パビーのオリジナルキャスト最終公演を観に行った際に、私が今まで気づいていなかった些細な演技に目が止まりました。

 

4)イデュナと手袋

先ほど紹介した、「Let the Sun Shine On」の一節、「Once there was a family / With secrets to keep」が歌われる時、イデュナはアグナル王と肩を寄せ合いながら、手袋を抑えています。ここまで書き忘れておりましたが、イデュナは登場時から手袋をしていて、それを事故後にエルサの手につけさせます。 

手袋といえば、F1ではハンスも手袋をしており、アナを裏切るときだけ手袋を外すという描写から、「手袋=秘密」というセオリーがフローズンファンには一般に浸透していると思われます。しかし、ブローズンのハンスは手袋をしていません。このことからブローズンにおいて「手袋」というアイテムが重要になる登場人物はエルサとイデュナに絞られています。(例外として山登りするときのアナの手袋はありますが、それは実用性をもっての手袋ということで加味しません。)

そして、Do You Want to Build a Snowman」で再び登場するときイデュナは別の手袋をつけていることに気づきました。

 

さらに掘り返すと、事故後にエルサがパビーによって未来を見せられ「自分のことを人々がモンスターを見つめる目で睨んでくる」と歌う際に、イデュナは手袋をした自分の両手を見つめながら眉をひそめて首を横に振ります。

ほかにも、「Do You Want to Build a Snowman」曲中にアグナル国王がエルサに「Conceal, Don't feel」を教えるときや「There will come a day you have to stand before your people without them」(手袋を外して国民の前に立たねばならない日(=戴冠式)がくるんだぞ)と言うときなど事あるごとに手袋をした自分の手を気にしている演技をしていることに気がつきました。

どうしても舞台だと映画と違って見る場所が多く、ついつい喋っている登場人物ばかり目で追ってしまうため、この辺りは何度も見ていたにも関わらず見逃しておりました。

 

5)イデュナはクリストフ同様トロール(ないしHidden Folks)に育てられた?

私はてっきり「Call on us anytime. We love children. Raised a few strange ourselves」の「a few strays ourselves」はクリストフについての説明だと思っていましたが、 @moonboat_sr さんからこれにイデュナが含まれるのでは、と言われました。それを頭において舞台を観に行くと、それが多いにありえそうだということにある演技から気づきました。

このセリフを言うときブルダはイデュナの手を取って言っており、言い終わった後にイデュナは微笑んで「Thank you.」と言います。

その直後、間髪入れずに、アグナルの方へ振り返って「She can learn to control it. I'm sure of it.」(この子なら必ず制御できるようになるはず。絶対よ。)

アグナルが「Give me your gloves. Put these on Elsa.(略)」という流れになります。

ブルダとの会話の直後に、イデュナはエルサが魔法をコントロールできるようになる、と言い切れるわけです。

確実に言えることをまとめると...

  1. イデュナさんが何らかの形で、パビーたち Hidden Folks に関係がある(クリスタルのペンダントを持っている、呪文を知っている)
  2. 少なくともその先祖である「Northern Nomads」のことは Hidden Folks たちは認識している
  3. イデュナはもともと王族ではなく北方遊牧民の子孫であるため、Hidden FolksでさえアレンデールのQueenになるとは思っていなかった=どこかの段階でアグナルに嫁ぐことでアレンデール王家に入っている(ただし少なくとも人である)
  4. Hidden Folks は複数人の血縁のない(おそらく人間の)子どもを育てており、その子どもの一人であるクリストフはイデュナ同様呪文を知っている

    <ここまでが言語化されている、あるいは視覚的に表されていること。
    これ以降ははっきりと言及されないが、ほのめかされること。>
  5. イデュナはブルダたちHidden Folksに育てられた可能性が高い(「Raised a few strays ourselves」)
  6. イデュナは魔法を使える可能性が高い(常につけている手袋、エルサの魔法についてアグナルのとる行動に対する反応、コントロールできるようになると言い切る発言)
  7. イデュナがつけているペンダントは何らかの魔法を抑える機能がありそう(事故直後のエルサに触れさせる)
  8. しかしペンダントはイデュナの魔法専用である可能性がある(エルサの魔法がそれで完全に抑えられるならそれを譲渡すれば良いはずだが、エルサには譲渡されない)
  9. 唱えているのがJoikであることやノルウェーの北方遊牧民であることから、サーミである可能性が高い
  10. クリストフもこのJoikを知っていて、サーミはトナカイを遊牧するのでクリストフも同じ北方遊牧民出身だった可能性がある
  11. さらにブローズンの舞台を囲っている柱には、トナカイと雪の結晶の象形文字?のような模様が彫られていることもわかっています。(画像参照)これらはFrozenの世界観独自のものなのか、元の文化に関係しているのか、私にはわかりません。サーミの文化に詳しい方、ぜひご協力をお願いしいます。

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当然これらのことはあくまでブローズンではの話であって、例えばF1で登場したエルサとイデュナに共通して見られるブローチなどは一切登場していません。映画からブローズンになる過程でアグナルからいデュナに役割が変更された部分も、あくまで舞台版での話であり、これによって一昨目が改変されるわけではなく、何もはっきりとは言い切れません。ただし、脚本家と作曲家が同一で、続編の制作期間とかぶせて制作していた舞台版で、上記のような設定変更をわざわざ行っていることを元に考えると、@moonboat_sr さんのおっしゃるようにイデュナさんが何らかの形でトロールに関係していて、魔法とも関連性がある可能性は非常に高いとみてよさそうでしょう。 

 

 

<アナ> と <魔法(magic)>

さて、今回のティザートレーラーのなかでもかなり諸説が飛び交っているのがこのショット。

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t.co

こちらがその記事からの引用。この記事を書かれた方は四季のシンボライズと予想しており、他の記事と異なっているのはそのうちの一つのパターンがアナの新しいドレスの裾に描かれているのをかなり早い段階で指摘していたこと。これは確かに重要そうです。 

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moonさんはさらに、エルサとアナの誕生日の設定がそれぞれ冬至夏至であることを踏まえ、アナのドレスにある模様が夏を表しているのではないかと予想。

左下については、一作目のあらゆるところで登場するエルサのおなじみの結晶に刻まれているダイヤ型から他にも多くの人がこれがエルサを表しているのではないかと予想されているようです。

アナに夏の魔力があるかどうか、「夏の女王」かどうかはわかりませんが、アナと魔法の関係についてはブローズンに少しだけヒントがあります。

まず一つ目は幼少期のドレスです。これははっきり見える写真がないのですが、幼少期のドレスの裾に、先ほどのポスターでは左上に位置している、丸としずくの形の模様の柄が刺繍されていることを発見しました。

これは、先ほどの記事で予想されていた、今回のティザーに登場するドレスの裾に刺繍されている柄とは異なるものです。

もちろんこれがどの程度関係してくるかはわかりませんが、この丸としずく以外の模様は一つも見つけることはできませんでした。特にイデュナの衣装にどれかひとつでもないか探したのですが、見つけられませんでした。カーテンコールの時の写真がありますので、イデュナさんのドレスが確認できる画像を貼っておきます。この画像の左にアナの衣装が写っていますが動画のキャプチャでブレていることもあり、詳細が確認できないです。

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(右からイデュナ、ブルダ、ウェーゼルトン公爵、クリストフ、ヤングアナ、アナ、エルサ 略)

 

ドレス以外に、アナと魔法の関係のヒントになる言及を確認していきます。

先ほどフィナーレ曲がLet It Goのリプライズであることは述べました。

ikyosuke.hatenablog.com

 

詳しくは是非サントラを聴きながらこの記事をお読みいただくのがベストなのですが、関係している部分だけを引っ張り出すとこのようになります。

[Elsa] 
There's so much I've longed to say
ずっと言いたかったことがたくさんあるの

[Anna]
Then say it all, beginning with today
なら言ってよ、今日から始めればいいのよ

[Elsa]
It's like a dream
まるで夢のよう
I thought could never be
現実になると思ってなかった 

[Anna] 
Elsa! You're free
エルサ!もう自由なんだよ

Let it go, let it go Show us what you can do
何ができるのか見せてよ

[Anna, Kristoff & Olaf] 
Let it go, let it go

[Elsa]
The magic one is you
魔法なのはアナ、あなたよ
'Cause here we stand
だってこうしてここに一緒に立ってる
In the light of day
陽の光の当たる中
Let the sun shine on
陽よ照らせ
I take this warmth within and sending up above
この内なる温もりを天高く送り上げ

[Elsa & Anna]
Goodbye to dark and fear let's fill this world with light and love
暗闇や恐怖には別れを告げて この世界を光と愛で溢れさせ

[Elsa, Anna, Kristoff & Olaf]
And here surrounded by a family at last
そしてようやくここで家族に囲まれて

[All] 
We never going back
決して戻らない
The past is in the past
すべては過ぎたこと

 

アナが元に戻り、世界が氷解し、クリストフがアナにキスを申し出て、アナがそれに応えてキスをし、ハンスを殴った段階でこの曲が始まるわけですが、その中でエルサはずっと夢見るのさえ危険(c.f. 「Dangerous to Dream」)と思っていたアナと一緒に過ごせる時間を手に入れます。言いたいことがたくさんあるというエルサに対し、「もう過去の辛かったことは忘れて(Let it go)、何ができるのか見せてよ(Show us what you can do)」と語りかける形で歌が始まるのです。

もうこの時点で顔面が洪水なのですが、エルサがそれに応えて言うのが「The magic one is you(魔法なのはあなたの方よ、アナ)」なのです。

初めてここでアナに対して「magic(魔法)」という言葉が使われます。

「magic」については実は映画と異なる言及があり、それは事故のあった夜パビーがアナの頭に直撃した魔法を取り除いた直後にエルサと交わす会話の中にあります。

 

F1では、「念のため記憶も取り除いた」と言うパビーに対してエルサは「私の魔法のこと忘れちゃうの?」と言います。ブローズンにはそのセリフはなく、代わりにエルサはこう言います。

エルサ:「Remove my magic, too. Please!」(私の魔法も取り除いて。お願い!)

パビー:「I'm sorry. But that's what I cannot do.」 (すまない。でも、それはできないんだ。)

エルサ:「…」

パビー:「Your power is a part of you.」(君の力は君の一部分なんだ。)

エルサ:「But I'm afraid of what I do.」(でも私、自分がなにをしちゃうか怖いの。)

パビー:「Close your eyes. Tell me what you see.」(目を瞑って、何が見えるか言ってみなさい。) 

ここから歌になります。(これはサントラに入っておらず劇場のみで聴けます。ちなみにこれは Monster のプリプライズに当たる部分。)

エルサ:

I see Arendelle, a winter night, people stare at me in fright.
(アレンデールが見える。冬の夜、みんなが私を怯える目で見つめてる

Angry crowds, jagged ice, terroring their eyes.
(怒る群衆、尖った氷、彼らの目を怯えさせる)

It's all because of me, and they look my way and see.... a monster....
(それは全部私のせい、彼らは私の方を見つめる、モンスターを見る目で。)

 

パビー:Then fear will be your enemy, and death its consequence.(恐れが敵となりそして死がもたらされるだろう。)

アグナル王:We will not let that happen, we'll protect her.(それは起こらないようにする、この子を守る。)

 

ここからわかることは、エルサのmagic が彼女の一部分であり、パビーに取り除けるものでないということ。そしてアナの心に刺さった氷に「An Act of True Love」という解決策があったのと異なり、他の解決方法も示されないのです。

しかし、魔法は取り除けなくても世界は氷解し、コントロールできるようになりました。ブローズンではそれが「アナと一緒」だったのが重要であることが視覚的に示されます。

エルサが公爵に「Monster」呼ばわりされて逃亡した直後、エルサは舞台の柱の部分を触ることで舞台(=世界)全体が凍っていきます。(次の画像は公式CMから。Disney BroadwayのYouTubeチャンネルでご覧になれます。)

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そしてアナが解けた後、オラフの「An act of love will thaw a frozen heart」というセリフにハッとしたエルサは「Love wil thaw. Of course, Love!」と言ってアナの手を取り、エルサが最初に凍らせてしまった柱の同じ場所を、アナと手をつないだ状態で触ります。すると世界が氷解していくのです。

アナはエルサとは異なり、いわゆる「魔法」は持っていないはずですが、このことからもアナの持つ愛の力がある種の「魔法」として描かれていて、さらにその後エルサが歌う「The magic one is you」によってそのことが言葉として言及される、と考えて良いでしょう。

そして舞台開始一年前のメインビジュアル公開時のキャッチフレーズは、「Love is a force of nature」というものでした。「magic」とこそ言っていないものの、「force」はF1の「Frozen Heart」でも示される重要キーワードであったようにほぼ「magic」と同義で使われていると思われますから、アナの持っている「magic」はそのあふれんばかりの「love」であると解釈できるかもしれません。

アナの魔法は夏の力なのか?愛の力なのか?それとも愛が夏を象徴しているのか?ティザーできているドレスの裾の紋章や、ブローズンの幼少期アナのドレスの紋章は、ポスターの紋章と関係があるのか。これらについては結論は出せませんが、アナがmagic oneであるとエルサが歌うのは、この文脈においては見逃せないポイントではないでしょうか。

 

<エルサ> と <両親>

 そして @moonboat_srさんが続けるのは再び両親の話。

 まず、新しい家族の形(未来)については以前自分がツイートしていたのでそれを引用します。 

ちなみに "True Love"はブローズンで追加されたアナのソロ曲。ハンスに裏切られて、一人部屋に残されてだんだん凍りついていくアナが自分の最期を悟りながら歌うバラード。

@moonboat_srさんがおっしゃる「2つの意味の『アンサー』」
  1. 何故こうなったのか(出生や魔力、両親の死の真実)
  2. 娘として「私たちが選んだこの道でいいのよね?パパとママは喜んでくれてる?」

これらにつながるヒントがブローズンにないか、少しずつ検証していきましょう。
ブローズンではエルサがF1よりも両親について気にしていることがはっきりわかる描写が多く追加されています。

 

先ほど紹介したシーンで、アグナルがイデュナの手袋をエルサにつけさせることは説明しました。

アグナル:「Put these on. Keep it (magic/power) inside.」

映画と同様に、王は召使いを減らし、エルサと他の人との接触を最小限に抑え、アナとも隔離すると宣言します。

ブローズンではそれに対しイデュナが反対します。

イデュナ:「No! They're sisters! We can't expect them to stay away from each other!」

ここから再び歌に。(これもサントラに入っておらず劇場のみ。またこれも Monster のプリプライズに当たる部分。)

[エルサ]
Mother, it's how it has to be 
(お母さま、きっとこうしなくちゃいけないのよ

What's best for her is best for me
(アナにとって最善の選択なら、それは私にとっての最善なの)
Father, I'll do as you say
(お父さま、言われた通りにするわ)

[アグナル]
We'll help you to control it, I know we'll find a way
(お母さま、きっとこうしなくちゃいけないのよ

[イデュナ]
Only until we gain more ansers in hand
(でも離れ離れになるのも、もっと別の答えが見つかるまでのことよ)
We'll find a way back
(一緒に方法を探しましょう)

[イデュナ&アグナル]
To be a family again

ここで四人は手を取り合おうとしますが、エルサはアナが差し出す手を握れずに走って去ってしまいます。

そしてDo You Want to Build a Snowman中に亡くなった両親は、フィナーレで舞台脇に再登場するDCAフローズンのとは異なり、カーテンコールまで2度と登場することはありません。しかし、エルサが度々「Father」「Mother」と呼びかけるかたちで言及されます。

まず、戴冠式を乗り切った直後。天井の方を見上げてエルサが笑顔で次のセリフを言います、

[エルサ]
Father, I did it! (無邪気に笑う)

曲としては Dagerous to Dream の最中。詳しくはこちら。

ikyosuke.hatenablog.com

 

つづいてエルサが両親について言及するシーンは、「Let It Go」。
ブローズンのうち公開されている数少ない本編映像にabcのThe VIEWという番組で放映された映像です。ちなみにこんなに各所全てで歓声があがることは稀です。おそらくテレビの演出なのではないでしょうか。

youtu.be

ここでは「Father」「Mother」と言う言葉こそないものの、「Heaven knows I tried」という歌詞があるのは皆さんもご存知かと思います。私はこの「Heaven」が両親を指していると解釈しています。

それは「Heaven Knows I tried」が枕詞となって、アグナルに仕込まれ劇中なんどもエルサが唱えるあのマントラ「Don't let them in, don't let them see, be the good girl you always have to be, Conceal, don't feel, don't let them know」が導かれるからです。がこれはF1の時点でも言えることでした。

ブローズンで加わったさらなるヒントは、エルサの衣装にありました。戴冠式エルサのあの衣装、ブローズンではアナの口によってはっきりイデュナが着ていたドレスだったことが明かされます。それに気づいた時の私のツイートがこちら。

「Let It Go」の終盤で、エルサが変身した時もともときていた戴冠式ドレスが消える件については、最近シュガラオでプリンセスに助けられたラルフがドレスを着た時、中の服が消えることとも関連して再び話題になりましたが。

ブローズンでは「Let It Go」の演出も異なる部分が多くあります。

まず、F1では最初のサビに入る直前の「Well now they know」で父アグナルからもらった手袋を飛ばし、最初の「Let it go」で有名なあの魔法を出しますが、ブローズン「Let It Go」ではサビの最初の「Let it go」でアグナルがつけさせた母イデュナの手袋を飛ばします。魔法はまだ使いません。

またF1では魔法を使い始めてすぐ「Can't hold it back anymore」でオラフwithoutニンジンを作りますが、ブローズンではその演出もありません。そして後ほど、オラフはニンジンまでついた状態でアナたちの元に現れます。これは「Let It Go」がF1の時系列と異なり、第一部の最後に移動されたことで、それよりも先にオラフが登場しなくてはならないことが関係していると思われます。

ただ、アレンデールの紋章の入った重たい長いマントをCold Never Botherd Me Anywayとともに吹き飛ばすところはF1もブローズンも同じです。

また、最後に変身するタイミングも「And I'm rise like a break of dawn」ではなくその手前の「Past is in the past」のあと最後のサビの「Let it go」の前の裏拍になっています。これは音楽的な盛り上がりと変身のタイミングを合わせることが関係しています。ここではほぼ必ず拍手が起こり「フォー」と歓声とともに会場全体が沸きます 笑。(Well, you know, this is broadway.)

さらに映画と異なるのはF1では「Past is in the past」で投げるティアラを投げません。これはブロードウェイショーの多くはマイクがウィッグについていることが関係していると思います。ただ髪の毛は一本三つ編みに手で直します。

つまりLet It Goが母イデュナから授かった「手袋」「ドレス」からの解放のように描かれている、ということが示されます。映画では父親に教わったマントラ「Conceal, Don't feel」からの解放が強調されますが、ブローズンでは衣装を通して母イデュナからの解放も描かれるのです。

つづいて、両親について言及があるのは、アイスパレスに訪ねてきたアナの心臓に魔法を直撃させてしまって混乱する中、ハンスたちが攻めてきてそれに応戦するシーンで歌われる「Monster」の最中。

 

ikyosuke.hatenablog.com

 

こちらがその一節。

 

[エルサ]
Was I a monster from the start?
私は生まれつきモンスターだったの?
How did I end up with this frozen heart?
どうしてこの凍りついた心になってしまったの?
Bringing destruction to the stage
世界に破壊をもたらし
Caught in a war that I never meant to wage
関与する予定のなかった争いに巻き込まれて
Do I kill a monster?
モンスターは私自身で殺すしかないの?

Father
お父様
You know what's best for me
私にとっての最善を知ってるはずよね
If I die, will they be free?
私が死ねば、みんなは自由になるの?

Mother
お母様
What if after I'm gone
もしも私が逝った後
The cold gets colder and storm rages on?
寒さはさらに増して、嵐が強くなってしまったら?

ここでまた上を向いて両親に語りかけます。この時エルサは地面に跪いて、両手を合わせてすがるように上(おそらく両親のいる「Heaven」)を見ます。

もちろん二人は亡くなっていて、答えてはくれません。エルサは自分で答えを出します。

No, I have to stay alive to fix what I've done

ダメよ、私は生き続けて 自分のしでかしたことを解決しなきゃ

Save the world from myself

私自身から世界を救うの

And bring back the sun

そして太陽を取り戻すの

これが彼女の出した答えで、実際にこれを成し遂げます。そう、アナと一緒に。「together that's the key」という「A Little Bit of You」で歌われた言葉が全てのアンサーだったのです。 

寄り道しすぎましたが、@moonboat_sr さんのおっしゃるエルサが両親に求める二つの「アンサー」に戻ります。

  • 何故こうなったのか(出生や魔力、両親の死の真実)
  • 娘として「私たちが選んだこの道でいいのよね?パパとママは喜んでくれてる?」

 

結局どちらもブローズンでは得ることはできていませんが、エルサとアナがそれぞれ自分が納得するかたちで見つけてそれに従い二人が手と手を取り合う(文字通り)ことで、凍りついた世界(と多分二人の関係性、と多分王家と国民の関係性)を解いていることがF1よりもわかりやすく描写されていることは確かであり、これらを加味すると、

こちらのツイートで@1cVam さんのおっしゃるような意味での両親との関係性についてはF2で改めては言及されないパターンも多いにあるのではないかと個人的には考えています。

*記事を書き終わった後の追記*

記事公開前に@moonboat_srさんご本人に確認させていただいたところ、2つ目のアンサーについては次のように説明されていました。「」内はご本人のお言葉です。

「エルサの『呪縛』」=「パパママとのわだかまり」が「まだ解けていないと言う意味」ではなく「フローズンフィーバー(エルサプ)で姉妹が離れていた13年間を埋めようとしていたり家族の思い出(オラアド)で両親亡き後姉妹で新しい『アレンデール』『家族』『伝統』をつくっていくということについて、娘として、国を担う者として両親がどう思っているか」のアンサーのことを指しておられたそうです。

さてF2ではどのように両親との関係性が描かれるのか。
楽しみですね。 

<オーロラ> と <「The Sky is Awake(お空が起きてる)」> 

@moonboat_sr さんの「希望」(3つ目) 

最後は「予想というよりは希望」とおっしゃっていたお話。「オーロラ」について。

私は北欧とオーロラの言い伝えについての知識は全くありませんので、F1とブローズンの作品におけるオーロラの役割を分析することで考えてみましょう。

F1とブローズンで共通・相違するオーロラ要素について

まずF1で初めてオーロラが映るのは、オープニングナンバー「Frozen Heart」の曲の最後です。

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ここからチルトダウン(カメラを垂直方向に下に振るカメラワークのこと)してアレンデール城が映され、そこから姉妹の寝室のショットへトランジションします。

オーロラを見上げる直前に Ice Harvester たちの歌う最後の歌詞が、吹き替えではひろわれていませんが、「Beware the Frozen Heart(氷の心に気をつけろ)」ですので、オーロラが不吉なことを予言しているという可能性は高いです。

ちなみにFrozen Heartは、「Cold」「Winrter」「Icy Force」「Frozen Heart」「Love」「Fear」「Beauty」「Let It Go」「Dangerous」「Magic」といった映画で重要になるキーワードがほぼすべて盛り込まれている恐ろしく良くできた歌詞になっています。残念ながら吹き替えばんだとその重要性が伝わらない訳詞になってしまっていて「あの歌だけ浮いてる」などという評価がされてしまっているのが残念なところです。
「Frozen Heart」の曲については、また改めて近々まとめようと思います。

 

一方ブローズンでは、唯一「Frozen Heart」だけがカットされています。(しかしFrozen Heartのメロディは、事故の時、アイスパレスで再び魔法を直撃させてしまう時、クライマックスシーンの「Colder By the Minute」で使われます。)

 

しかし「Frozen Heart」がカットされているからと行ってオーロラが出てこないわけではありません。

こちらが開演前の舞台の様子です。幕に緑と青を主としたオーロラが投影されていて、キラキラとオーロラがたなびくのに合わせて音が鳴り響きます。
(ブロードウェイの舞台では基本的に開演前、幕間、カーテンコール開始後のみ撮影が可能です。)

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F1で Ice Harvester たちが「Beware the Frozen Heart」と歌いながら見上げるオーロラと形も色も似ていることがよくわかります。

またブローズンもF1同様、Let the Sun Shine Onが終わってベッドに入った後、召使いや両親が部屋をさると、アナがエルサを起こしに行って「Sky is awake, and I'm awake, so we have to play.(お空も起きてるし、わたしもおきてる、遊ばなきゃ)」という台詞を言います。 

次にF1でオーロラが登場するのは事故の後、アグナル王が姉妹を連れてトロールの住むリビングロックの谷を訪れた時です。これも緑色を基調としています。

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オーロラが画面に初めて映るのはこのショット。続くワイドショットでははっきりとオーロラが背景にあるのが確認できます。

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心に魔法が直撃した後クリストフに連れられてリビングロックの谷を訪れる時にも同じようにオーロラが出ていることからトロールとオーロラになんらかの関係があることは確かそうです。

パビーがエルサに未来を見せるときもオーロラではありませんが似たような光を操っているように見えます。

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続いて「Let It Go」の夜にオーロラが出ていたかどうかについて。

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結論から言うとF1では「見えて」ませんが、ブローズンでは「見えて」います。出ていてもエルサの起こした雪雲のせいで隠れていて見えていないだけという可能性が否めないからです。

また、ブローズンの「Let It Go」は、先程のクリップでは微かにしか見えませんが、青白いオーロラが背景に映像として写っていることが確認できると思います。

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続いて、F1で最後に登場するオーロラはトロールのいるリビングロックの谷へ向かうシーン。

ここでオーロラは、冒頭のFrozen Heart以来にはっきり全面画面に映し出されます。
このシーンの直前は再びアナを傷つけてしまったエルサが取り乱しているシーンで、そこからクロスディゾルブ(前の映像を残しながら次の映像へ徐々に変わっていくトランジションのこと)で転換します。クロスディゾルブは前の映像と後の映像の関連性を印象付けるために使われるトランジションでストレートカット(パッと次の画面に切り替わる)が多いF1では珍しいです。(本編全体での回数は数えていない。数えたら追記する。)

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このオーロラのショットからチルトダウン(またですよ!また!)してオラフがスヴェンに話しかけます。それが「Look, Sven. The sky is awake.」。

ブローズンではF1と異なり、この2回目の「sky is awake」は登場しません。 つまりブローズンでは「the sky is awake」は繰り返されず、アナが事故の夜に、エルサを遊びに誘うときに言う一回のみです。

ここから「Fixer Upper」 のシーンまで。こちらは映画では基本的にずっと青緑色のオーロラが背景に登場していて、「Fixer Upper」の途中でピンクが登場します。

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ピンクのオーロラ初めて映されるのは「His isolation is confirmation of his desperation for human hugs」(彼が独りでいるのは人間のハグを諦めていることの証拠)と言う歌詞にアナが反応するリバースショットから。

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ここからピンクのオーロラはしばらく出ていて、ブルダがアナに語りかけるシーンでもピンクと青緑のものが確認できます。

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歌の終盤は再び緑だけに戻りますが、歌が終わってアナが倒れた途端にオーロラがすべて消えます。

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このことからF1においては、

  1. 緑と青のオーロラはエルサの魔法・不吉な予兆を表している可
  2. ピンクのオーロラは愛あるいはアナの象徴である可能性

が指摘できます。一方で、曲が終わった瞬間にオーロラが消えることから、メタファーとしての要素だけでなく、ビジュアル的な演出の一部としての要素である可能性も否定しきれません。不吉なことの予兆であれば、もっとオーロラが光っても良いと思われます。

この点ブローズンが大きく違うのは、F1よりも多くの場面でオーロラが登場し、さらに場面によってオーロラの色が変わっていくことが挙げられます。

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基本的にブローズンの写真はないので私の記憶でしか語れませんが、Fixer Upperのシーンでは、緑と青を基調としたオーロラから始まり、ブルダがアナに語りかけるシーンの「Thraw a little love their way」のあたりで黄色いオーロラが現れ始めます。そこからしばらくは青・緑に黄色が加わっています。

さらに歌の途中で(ブローズン版にしかない)ダンスパートに入ると赤と青のオーロラも光り始めます。これらの色のオーロラは他に登場しないので、映画のそれと同じように、メタファーとしての意味はあまりないビジュアル的な演出の一環と私は解釈してます。上の写真はダンスパートですが、青と赤の光が見えにくくなっています。

この後パビーが心の魔法は取り除くのが難しいと語るシーンでF1とは異なるセリフが言われます。

「The heart is not easiy let go of its pain」(心から痛みを解き放たせるのは難しい)
ここで「Let go」が出てくるんですね。ここで映画とは異なりクリストフがとりあえずやってみてくれと頼み、パビーが魔法を取り除こうとしている間にクリストフが自分の心の中にアナのことを想う気持ちがあることに気づいた心境を吐露するナンバーが挟まれます(「Kristoff Lullaby」)。その最中も背景には緑・青・黄のオーロラが映されています。

しかしやはりパビーの力では魔法は取り除けず、「Only an act of true love will thaw a frozen heart」という下りになり、ハンスのいると思われるアレンデール城へ一行は向かいます。

そこから今度はアナを探しにエルサの城へ向かうハンス一行のシーンへ。

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F1で最後にオーロラが出てくるのはFixer Upperのシーンですが、ブローズンではその後のシーンにもオーロラが確認できます。最後にオーロラが出ているのは、ハンスたちがアイスパレスに向かうシーンの背景。こちらが公式の画像。ハンスの後ろにいる赤い服がウェーゼルトン公爵とその部下たち。そして後ろにアレンデールの国民の男性たちも続きます。後ろに出ているオーロラはまた青白く、Let It Goの背景で出ていたのと近いものに見えます。

このあとエルサが襲われることを考えれば、不吉なことが起こる予兆としてのオーロラという解釈は十分に当てはまりそうです。

ちなみに映画では明け方の黄色い空になっていました。 

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ブローズンのオーロラの色 と F1の氷の色

ここにきてブローズンにおけるオーロラが、F1におけるエルサの作り出す氷の色と似たような意味合いを持っている可能性が指摘できます。

F1では多くの人がすでに指摘しているようにエルサの出す魔法の氷の色がエルサの心境を反映しています。

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Let It Goで青々としていた氷は、アナを再び傷つけしまったところで少し水色に近くなり、赤みを帯びている部分も出てきます。その後取り乱すエルサの周りはどんどん赤くなり、トゲも生えてきます。公爵の部下たちが攻めてくると黄色になります。
黄色については、オラフが初登場シーンで色について言及していて「How about yellow? No, not yellow. Snow and yellow? No go.」と。黄色がよくない色であることがはっきり示されます。

この氷の色の変化はブローズンではほぼ再現されません。ほぼというのは、「For the First Time in Forever Reprise」でだんだんパニックになっていくエルサの周りだけ赤い照明で照らされるという演出が取られているからです。しかしその後城全体が赤くなったりはしませんし、ハンスらが攻めてくる「Monster」の時にも黄色くはなりません。

むしろ色に変化があるのはオーロラです。

開演前[青・緑]
=>「Sky is awake」[青・緑]
=>「Let It Go」[水色]
=>「Fixer Upper(序盤)」[青・緑]
=>「Throw a little love their way」[青・緑・黄]
=>「Fixer Upper(ダンスパート)」[青・緑・黄・赤]
=>「Fixer Upper(終盤)」[青・緑]
=>「Kristoff Lullaby」[青・緑・黄]
=>「Monster」[水色]

トロールが出ているときは基本的に青・緑のオーロラが。Love が言及されるときは黄色のオーロラが。エルサが出ているときは水色に近いオーロラがでているように整理できそうです。

ちなみにブローズンでは先ほどのオラフによる色に関するセリフがないので黄色がよくない色という設定はないと考えましょう。

むしろ「Finale  Let It Go」の際の背景は、朝焼けで波形の空全体が黄色とオレンジに染まりますので、ブローズンにおける黄色とオレンジは愛の象徴と解釈できそうです。

 

 

 

ところで、Frozenでオーロラといえばこんな小説が出ていたのを思い出しました。

「Disney's Frozen Northern Lights: Journey to the Lights」という公式の番外編小説。

これ、まだ私も読んでいないことに気づいたのですが、(多分購入して日本の実家のどこかに置いてある)もしこれを読まれた方で何かヒントになりそうなことが書いてあったという心当たりのある方はぜひコメント欄かTwitter(@westergaard2319)でお待ちしております。

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www.amazon.com

 

おわりに

ということで大変長くなりましたが、今回の記事では Frozen II のティザートレイラーをきっかけに、@moonboat_sr さんがツイートされた、3つの予想と希望について紹介しながら、それを切り口に、

  1. <エルサの魔法>と<オラフ>
  2. <イデュナ女王>と<トロール
  3. <アナ>と<魔法>
  4. <エルサ>と<両親>
  5. <オーロラ>と<“The Sky Is Awake”(お空が起きてる)>

 の5つの観点から、F1とブローズンを横断的に分析しながら、考察してまいりました。この記事が、F2についていろんな想像や妄想を巡らせる姉妹ファンにとって少しでもヒントになればと願っています。 

最後まで読んでいただいた方、本当に、本当に、ありがとうございました。
Frozen II 公開まで9ヶ月以上ありますが、公開までの間の謎解きは今しか楽しめませんので、公開されているヒントを集めながら考察して楽しんでいきましょう。笑 

A Place Called Slaughter Race 『あたしの居場所』独自訳詞・オマージュ分析

はじめに

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以前このブログに書きました、こちらの記事ではまだ米国公開当初のタイミングだったということもあり、細かい分析は十分にできておりませんでした。 

ikyosuke.hatenablog.com

 

が、2月12日より米国ではストリーミング配信が始まり、セリフも全て字幕という形であれば確認できる愛ようになりましたので、重箱の隅をつついていきたいと思っております。そして今回は前のブログの中で、やると宣言していた挿入歌「A Place Called Slaughter Race」の分析、考察をしていきたいと思います。また解釈していくうちに、吹替版上映に挿入されている吹替詞で納得のいかない部分が出て来たことをきっかけに独自で訳詞をつけてみるという試みをしてみました。

この記事が少しでも、「A Place Called Slaughter Race」の元の歌詞の意味するところや、ヴァネロペの心境についてより深く考えるためのヒントになればと思って書きたいと思います。

 

初めて聴いた時の感想

シュガー・ラッシュ・オンラインことRalph Breaks the Internetでミュージカル作品でもないのに突如挟まれた挿入歌。

アランメンケン作曲ということもあり、dpost.jpさんなどの記事でも公開前からかなりの期待とともに考察されていたほどで、私もどんな爆弾ソングが投下されるのかとワクワクしておりました。

dpost.jp

結局私は、映画公開を待てずに曲だけ配信されたときに聴いてしまったのですが、その時の最初の感想が「???????????」

そうなんです、映像がなかったので曲だけでは判断できなかったのもあるのですが、曲としてはあまり刺さらなかったのです。他の方がどう感じたかはわかりませんが、Tangledの I've Got a Dreamの雰囲気の前半、デュエットになる後半、最後のチロリーンというアラン・メンケンのプリンセスソングのおきまりの終わり方、それはわかるのですがあまり曲として面白さが感じられないまま公開日を迎え、劇場で映画を鑑賞し、ようやくこの曲の面白さがわかりました。

先ほどの記事でdpostさんもご鑑賞される前から「ディズニーのスタイルを『パロディ』するという前提であることを考えると、アラン・メンケンミュージックも例外ではない」と書かれていたように、確かにアラン・メンケンも自らの作風をセルフパロディしていたのですが、ロペス夫妻以降のプリンセスソングはハードルが上がってしまっていて、パロディの積み重ねだけで曲としてのインパクトはあまりなくなってしまった仕上がりになったのかなという風に思いました。

でも映像の方がそれを補っており、曲を聴くだけではわからないパロディ・オマージュが山のようにあった、というのが蓋を開けた感想でした。

 

まず前半でパロディ・オマージュを整理して、後半は原詞に対訳をつけながら、それを吹替詞と比較しつつ、私がつけた独自訳詞を紹介します。

 

パロディ・オマージュとしての A Place Called Slaughter Race

パロディ・オマージュ(1):ビジュアルとして引用されたアランメンケンソングたち

この歌の導入自体としてある、Oh My Disneyのプリンセスたちとの会話の中で前振りで「プリンセスが夢について歌い始めると音楽がどこかから流れて来てスポットライトが当たる」と教えられたヴァネロペがハンドルについて歌うとうまくいかず、ハンドルが「本当に望んでいるもの(somthing that you really want)」でないことが明らかになります。

うまくいかないヴァネロペに対してポカホンタスが言ったのが「自分が反射する場所へ行くこと・水面をみつけて見つめること(go some place to reflect / finding a form of water and staring at it)」でした。これは明らかにMulanでムーランが歌う「Reflection(リフレクション)」をはじめとする楽曲に対する言及であり、ヴァネロペがOhMyDisneyをあとにしてすぐコップからこぼれてできた水たまりに顔を移すショットは「Reflection」のイントロのショットそのもの。

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ラルフから着信がありハンドルがついに手に入ることがわかると、今まで曲が流れてこなかったヴァネロペに音楽が聴こえて来て、気づくと水溜まりはスローター・レースの壊れた消火栓から溢れた水に変わっています。

ヴァネロペにとっての「Important water」はスローターレースの消火栓の水だったのです。

そしてスポットライトの代わりにヘリコプターのサーチライトが当たるショットはプリンセスと魔法のキスこと Princess and the Frog のティアナのI Want Song「Almost There(夢まであとすこし)」のショットに類似。

手にとまるハトに歌いかけるショットはSnow Whiteの白雪姫のそれを、カートに捕まって移動するショットや、カートが倒れて地面に降りる動作はBeauty and the Beastのベルの「Belle(朝の風景)」のシーンを、それぞれ想起させます。

シャンク登場以降はしばらくスローター・レース内にあるものやいる人・動物の紹介が続き、タトゥーのおじさんが出てくるショットからはしばらくディズニーでないミュージカル映画のオマージュが挟まれます。

 

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タトゥーのおじさんのショットの後ろでは、Singin' in the Rain(雨に唄えば)以降 最近ではLa La Land や Mary Poppins Returns に至るまで、ミュージカルで電灯が出てくればあらゆるところで引用され続けている、電灯に捕まって回る振り付けが目に入ります。

そして続くショットはカラフルな車の上でカラフルな衣装で踊る人たち。これはもう明らかに La La Land のオープニングナンバー Another Day of Sun の引用とみてよいでしょう。

 

ここでまたアランメンケンソングからの引用に戻ります。
車の上で踊っているダンサーたちが左右を入れ替えるようにジャンプするドリーショットが続くのですが、これは Beauty and the Beast のショーストップナンバー「Be Our Guest」の最初のサビの終盤でジョッキたちがジャンプするショットの動きを再現しているように見えます。

続くショットはこれまたミュージカルといえばのバークレーショットと呼ばれる、真上から撮影することで万華鏡のように見えるショットのこと。

ブロードウェイで振付師をしていた Busby Berkeley (バスリー・バークレー1895〜1976)がミュージカル映画を手がけていく際に導入し、彼を一躍有名にした作品42nd Street (1933)でもしっかりこの真上から撮るショットが使われています。同年に公開されたFootlight Parade (1933) のプールのシーンも有名で、これはディズニー関連だと、アニメ版Beauty and the Beast (1991)のBe Our Guestでも、実写版(2016)のそれでも引用されています。

今回のバークレーショットは車で再現されるのですが、紫のライティングが実写版Beauty and the Beastの「Be Our Guest」のポット夫人のシーンに近い気がしたので並べて見ました。

バークレーショットからトランジションはタイヤが転がって来てワイプするというもの。これはまたお皿が左右から転がって来てトランジションする1991年アニメ版Be Our Guestのトランジションの引用とみてよさそうです。

そして自分の車をゲットしたヴァネロペが走り出すときの左右のダンサーたちは動きこそ逆ですがBe Our Guestの燭台たちのショット構図に酷似。

 

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反射する床の上を走って行くバックショットは、Aladdinの A Whole New Worldの終わりのショットも想起させます。

また照明で作られた星空のようなセットから、実際の星空へ移って行く様子は La La Landのプラネタリウムのシーンのようでもあります。

シャンクと二人で月に向かって車を走らせて行くシーンは A Whole New World そのもの。

そして途切れた高速道路の上で太陽に向かって歌うのは、構図こそ逆ですが、Pocahontasの「Color of the Wind」の終盤のショットを想起させます。

花火がわりに爆弾が爆発して散ってくる火花が背景にボカされて映るショットは、Tangledでラプンツェルが水面に映る無数のランタンを背景に空を眺めるショットに似ています。

 

と、このようにプリンセスものであればアラン・メンケン作曲のミュージカルナンバーのシーンからのビジュアル的な引用が大量になされており、さらにミュージカル映画といえば、という振り付けや最近のミュージカルの中でもアイコン化されるようなショットが盛り込まれているわけです。

ミュージカル映画好きなら、曲が刺さらなくてもこの映像を見ればいかにこれがパロディ作品であるかがよく伝わってくるのです。

でも残念ながら、いまに書いたように「ミュージカル映画好きなら」という条件がついてしまいます。それを別の方法で乗り越えようとしたのが吹替版「あたしの居場所」でした。

 

パロディ・オマージュ(2):歌詞として引用した吹替歌詞「あたしの居場所」

私は毎度、吹替歌詞がどのような要素を拾って、どのような要素を(やむなく)落としているかというのはかなり関心があって、比較をするようにしています。

というのは1〜2音節で一語の英語と異なり一音節で仮名一文字しか網羅できない日本語に、英語で作られた歌詞を翻訳するとどうやっても情報量が半分かそれ以下に削減されてしまうからです。

現在はアメリカに滞在しており、吹替版の上映を観ることができない予定だったので、サントラが出たら分析しようと思っていたのですが、それが出ず。結局たまたま急用で帰国した際に、字幕版と吹替版を一度ずつ見ることができたのですが、そこで驚きました。

前半部分の歌詞が元の英語歌詞と全然異なっていたのです。もともとあった要素が半分程度に削られるならともかく、なかった要素がガンガン加えられていたのです。

その部分がこちら

a) いつか必ず王子様が 連れてってくれる… なんてね

b) 鳥とおしゃべりできないけど それでもプリンセス?

c) そう!ここはホールニューワールド!

d) そーれ!もっと素敵な世界が待ってる

e) そうよありのままで

生きようこのスローター・レースで!

a) は白雪姫、b) はシンデレラやオーロラを想起させる言葉が並んでおり、c) はジャスミン、d) はベル、e) はエルサの歌うナンバーから直接歌詞を引用しています。

上でみたように、白雪姫やベルはこのシーンにビジュアルとして確かに引用されています。またジャスミンも後半でビジュアルとして引用されます。

エルサはロペス夫妻作曲なので、ほとんど触れられていないわけですが、吹替版ではホールニューワールドと同格くらいの感じで曲のタイトルがガッツリと入れられているわけです。

でもこれらの要素は元の歌詞に全くありません。後ほどしっかりと対訳をつけますが、原詞ではむしろ、一見魅力のないように見えるスローター・レースにどうしてか惹きつけられてしまう自分について歌っているのです。

たしかにこの吹替詞はビジュアルとして引用されていることに気がつかない人でも歌詞を知っていればプリンセスソングの引用だということにすぐ気づけるようになっていてしゃれていると思います。

が、もし元の歌詞に忠実な訳詞がつけられていたらどうなっていただろうか、と考えてしまうわけです。

 

実験的に独自で訳詞をつけてみた

もし吹替えの歌詞が原詞の直訳に近かったら? 

私は、自分の気に入ったいろんなミュージカルナンバーを対象に、元の英詞を解釈して翻訳し、さらに気が向くとメロディに乗っけられるような独自の和訳詞を考えるというのを趣味的にやっているのですが、今回はこの「A Place Called Slaughter Race」について、原詞の意味するところや、大幅に歌詞の内容が変更されて翻訳された経緯を探るために私が独自で訳詞をつけてみました。

 もちろん、これには賛否があると思いますし、そもそもサラ・シルヴァーマンさんやガル・ガドットさんの声の上にボイスオーバーを載せるなどありえないなどという声もあると思いますので、再生される前に先に書かせていただきます。

 

<注意!>

これは、Ralph Breaks the Internet (2018) (邦題:『シュガー・ラッシュ・オンライン』)(2018)の挿入歌 "A Place Called Slaughter Race"(邦題:『あたしの居場所』)の原詞をブログ筆者が独自に和訳して詞をつけたものです。
元の映像の音声の上に、素人が歌声をボイスオーバーで重ねておりますので、不快に感じる可能性がある方は再生しないか、音声をオフにして再生することをお勧めします。冗談半分で、笑ってみていただけると幸いです。
また、訳詞の全文と、訳詞をこのようにつけた背景などについては、以下で紹介しておりますのでよかったら動画より下の部分をご覧ください。動画の下に、オリジナル歌詞とその対訳、吹替詞、そしてこの動画にて公開した独自訳詞の三種類とその解説を掲載しています。

 

youtu.be

 

原詞と対訳(直訳に近いもの)・吹替詞・独自訳詞

(凡例)

原詞:イタリックの英字

吹替詞:斜体青字

原詞の対訳:黒字

独自訳詞:赤字

 

(なお青字表記の吹替詞は公式から出ていないので、まだ私が吹替え版を確認しに行けなかった段階で、Twitterアカウント@kanatoto33 さんが提供してくださったものを許可を得て掲載しています。ありがとうございます。) 

[Vanellope]

What can it be that calls me to this place today? <いつか必ず王子様が>
今日この場所にあたしを呼ぶものはなんだろう?
あたしは何に魅せられて

This lawless car ballet, what can it be? <連れてってくれる…なんてね>
この無法地帯の車のバレエで、何が呼んでるのかしら?
来ちゃったのかな 無法地帯

Am I a baby pigeon, sprouting wings to soar? <鳥とおしゃべりできないけど>
あたしは飛び立つための羽が生え始めたハトの赤ちゃん?
羽が生え始めたハトさん

Was that a metaphor? <それでもプリンセス?>
いまのって(ベルが言ってた)隠喩なのかな?
それって あたしのこと?

Hey, there's a Dollar Store <そう!ここはホールニューワールド!>
ねぇ、1ドルショップだよ!
見て 1ドルショップ!

Look, I'm rhyming <そーれ!もっと素敵な>
見て!私いま韻を踏んで歌ってる
ねぇ 歌えてる

My spirit's climbing <世界が待ってる>
心が高鳴ってる
心が高鳴る

As I'm called through this fog of mace <そうよありのままで>
催涙ガスの霧の向こうから呼ばれて
霧の中 みちびかれ

To this place called Slaughter Race <生きようこのスローター・レースで!>
たどり着いたのはここ スローター・レース
たどり着いた スローター・レース!

 

[Shank]

Welcome Back, watch your head <おかえり気をつけて>
おかえり、頭上注意
おかえり、気をつけて

Hate to see you end up dead <危険がいっぱい>
あなたが死ぬとこ見たくない
死ぬのは早い

 

[A Thief]

Let's get this party rollin' <冷蔵庫お持ち帰り!>
さぁパーティはこれからだよ
さぁ パーティ始めようぜ

 

[Vanellope]

Is that appliance stolen? <あのおじさんドロボウ?>
あの電化製品盗まれてるの?
あれ盗んでってるの?

 

[Shank]

We have <まあね>
ここには
ここには

 

[Butcher Boy]

Falling wires <電線注意>
切れて落ちてる電線
切れてる電線

 

[Little Debbie]

Dumpster fires <燃えるゴミ>
ゴミ箱の炎
燃えてるゴミ箱

 

[Clown]

Creepy clowns <ピエロだよ>
気味の悪いピエロ
おかしなピエロ

 

[Felony]

And burning tires <タイヤはいかが?>
火のついて燃えてるタイヤ
焼けてるタイヤ

 

[Shank]

That great white in the sewer <下水道のサメ>
下水道にいる あの大きな白いの(Great White Shark:ホオジロザメ
下水道の白い子

You'll be happy that you knew her <でもホントはいい子>
もう会ってて良かったと思うはずよ
前にも会ってるよね?

 

[Shark]

Dogs and cats, they sure taste great <ワンコニャンコ可愛いし>
犬さん、猫さん、もちろんとっても美味しい
犬さん 猫さん とっても美味しい

 

[Wolf]

With a side of license plate <ナンバープレートも>
ナンバープレートの付け合わせもついてくる
ナンバープレートの付け合わせ

 

[Dog]

Some find us deplorable <かわいそうなオレたち>
ボクらを悲惨な状況だって見る人もいる
哀れなボクら

 

[Vanellope]

Well, I think you're adorable <そうかな?楽しそうだよ>
そうかな、あたしはとっても可愛いと思うよ
とっても可愛いと思うよ

 

[Shank]

We may be a motley crew, but our hearts ring true <怖く見えても意外とピュア>
わたしたちは雑多な集団だけど、心は誠実なの
メンツはカオス でも誠実

 

[Tatoo Guy]

And just for you, a face tatoo <こころ込めてタトゥー>
そしたらキミだけ特別に、フェイスタトゥーを
キミだけにフェイスタトゥー

 

[Vanellope]

My heart's in flight, and, wow, it's a blast <ワクワクがわぉ!止まんない>
心が飛んでるみたい うわぁ ホントに最高
心ウキウキ もう最高

Feels like my dreams are real at last <夢をついに見つけた!>
ようやくあたしの夢が現実になるみたいに感じる
ついに夢が叶うの

 

[Shank]

No trace of a frown upon your face <もう何も迷わないで>
しかめっ面してたけど跡形もなく消えたね
悩みが消えたなら

 

[Vanellope]

Flying so fast <飛び立とう>
すごい速さで飛んで行こう
飛ばそう

 

[Shank]

Setting the pace <今こそ>
先頭に立ってリードして(「ペースを作る」から転じてこのような意味)
先頭を

 

[Vanellope]

Living the life <生きよう>
人生を送ろう
生きよう

 

[Shank]

Loving the chase <レースに>
競争を愛しながら
競争に

 

[Vanellope]

Now is the time <あたしの>
いま時が来たの
いまこそ

 

[Shank]

Here is the place <居場所は>
ここがその場所
この場所で

 

[Both]

This Slaughter Race <このスローター・レース>
このスローター・レースが
そう スローター・レース

 

[Vanellope]

I know I should go <帰れないよ>
わかってる 帰るべきだっていうのは
帰らなくちゃ

But home feels so slow <お菓子の国>
でもお家は何もかもがとってもゆっくりに感じる
でも 見つけたの

These roads are paved with dreams <探してたマイドリーム>
ここの道はたくさんの夢で敷き詰められてるんだもん
この夢の道

 

[Clown]

Happy dreams, not creepy clown dreams <お嬢ちゃん死んでも知らないよ〜>
楽しい夢ね、奇妙なピエロの夢じゃなくてね
楽しい夢ね、ピエロが出ないやつ

 

[Vanellope]

What would Ralph say <ラルフ ごめん>
ラルフはなんて言うかな?
なんて言うかな

If it turns out I stay <あたしは生きる>
もしあたしがここに残るってわかったら
でも 気づいちゃったの

 

[Vanellope & Chorus]

In this place called Slaughter Race <このスローター・レースで>
スローター・レースって呼ばれてるこの場所に
あたしの居場所は スローター・レース

 

[Vanellope]

In this place called Slaughter Race <このスローター・レースで>
スローター・レースって呼ばれてるこの場所に
居場所はスローター・レース

 

 

独自訳詞について この語選びになった背景の解説

基本的に
1)できるだけ原詞で表現されている要素をそのまま入れ
2)音節数をできる限り合わせ
3)各節の歌い始めの子音か母音をできるだけ合わせる
4)歌い終わりや伸ばす部分の母音をできるだけ合わせる
という方向性で、元の響きの雰囲気を残しつつ意味を拾えた訳詞をつけています。

それではここから、一節ごとにどうして私が上記の赤字のような語を選んだのか背景を解説します。

 

(凡例)

原詞:イタリックの英字吹替詞:斜体青字原詞の対訳:黒字独自訳詞:赤字

 

[Vanellope]

What can it be that calls me to this place today? <いつか必ず王子様が>
今日この場所にあたしを呼ぶものはなんだろう?
あたしは何に魅せられて

This lawless car ballet, what can it be? <連れてってくれる…なんてね>
この無法地帯の車のバレエで、何が呼んでるのかしら?
来ちゃったのかな 無法地帯

ヴァネロペがOhMyDisney付近でコップから溢れた水たまりを眺めているうちに、いつの間にかスローター・レースの中にワープしています。これについてヴァネロペは、「call」されているからと認識しているわけです。

この場所の何が自分を呼んでいるかわからない。でも何かに呼ばれているのです。それも一見あまり魅力的に見えないこの無法地帯のカオスな場所に。でも何かに呼ばれている気がするんです。

でcar balletは盛り込めませんでしたが、このballetという言葉は、ヴァネロペがゴミを避けながら歩くことで知らず識らずのうちにステップを踏んでしまうところに対応しています。そしてその背景に流れる音楽はバレエの雰囲気のある管楽器のサウンド
普通に独り言を言っているだけだったらステップなんて踏まないよね(笑)っていう皮肉なのか。

 

Am I a baby pigeon, sprouting wings to soar? <鳥とおしゃべりできないけど>
あたしは飛び立つための羽が生え始めたハトの赤ちゃん?
羽が生え始めたハトさん

Was that a metaphor? <それでもプリンセス?>
いまのって(ベルが言ってた)隠喩なのかな?
それって あたしのこと?

Hey, there's a Dollar Store <そう!ここはホールニューワールド!>
ねぇ、1ドルショップだよ!
見て 1ドルショップ!

ヴァネロペが歌い始めたのをきっかけに飛んで来たのはハト。それも白雪姫に飛んで来たような白い鳩ではなく、都会にいるようなハト。これは「Enchanted(魔法にかけられて)」でおとぎの世界からニューヨークに来たジゼルが歌ったときにハトやゴキブリが現れたことのパロディのようにも見えます。ですがこれについては原詞では歌っていません。むしろ、自分を生まれたてのハトに投影しているのです。

そしてここでハンドルについてプリンセスたちの前で歌ったときにベルに言われた「それ(ハンドル)って何かのメタファー?」という言葉が頭を遮ります。自分をハトになぞらえるなど、実際の会話ではしませんが歌の中でよくなされるそれをヴァネロペは自分もやっていたことに気がつくのです。

ここは一番解釈が難しいのですが、特別な場所でもなんでもないのですがONE DOLLAR STOR(アメリカに住んでいる感覚だと、日本でいう百均よりも品揃えはイマイチ)を見つけて歌います。大したものではないですが、シュガーラッシュの世界にはないものなので、ヴァネロペにとってはテンションの上がるものなのかもしれません。でもそれが見ている観客の感覚では、特になんの変哲も無い100均なので、それをわざわざ歌詞に盛り込んでしまうほど興奮しているヴァネロペとのギャップが面白いのです。
ここは結構劇場でもウケていました。

 

Look, I'm rhyming <そーれ!もっと素敵な>
見て!私いま韻を踏んで歌ってる
ねぇ 歌えてる

My spirit's climbing <世界が待ってる>
心が高鳴ってる
心が高鳴る

As I'm called through this fog of mace <そうよありのままで>
催涙ガスの霧の向こうから呼ばれて
霧の中 みちびかれ

To this place called Slaughter Race <生きようこのスローター・レースで!>
たどり着いたのはここ スローター・レース
たどり着いた スローター・レース!

個人的には吹替詞が落としてしまった一番重要な要素はこの「I'm rhyming」だと思っています。なぜなら、ラプンツェルに言われて歌って見たハンドルの歌では音楽は流れてこなく、スポットライトも当たりませんでした。そのときヴァネロペは次のような会話を言います。(セリフの対訳も筆者による独自のもの)

[Vanellope] Wait. You're saying if I just stare at some water...
え待って。つまりあたしがなんかの水をみつめると…

[Ariel] Duh! IMPORTANT water. 
もう、わかってないわね。「自分にとって大切な水」よ。

[Venellope] Right, of course. Important water. I stare at that important water and somehow magically I'll start singing about my dream?
そうよね。もちろん。「大切な水」ね。あたしがその「大切な水」を見つめると、なんか魔法のように自分の夢について歌い始めちゃうってわけ?
[Princesses] Yeah. / For sure.
えぇ、そうよ。/もちろん。

[Venellope] I don't think so, ladies. But thanks.
あたしはそんなことないと思うわ。でも、ありがと。

つまり、ヴァネロペは表向きには「magicaly I'll start singing about my dream」について非常に懐疑的です。にも関わらず、そのOhMyDisneyを去った直後、ラルフからハンドルが手に入ったという連絡を受ける前、ヴァネロペはなぜか水たまりを覗き込みながら、次のような独り言を言っています。

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[Vanellope]
Come on song, come on. I'm REFLECTING!
歌よ出てこい、出てきて! あたし反射してるじゃん!!

What is that I want? What is my quest? What is my dream?
よし、あたしの望みはなに?あたしが探してるものは?あたしの夢って?

Raah! (OhMyDisneyの城に目をやり)Well, ladies I tried. No song for this princess I guess.(ポケットに手を入れてゴミを蹴飛ばすw)
はぁ。プリンセスのみんな、やってみたよ。でもこのプリンセスには歌はないみたい。

f:id:ikyosuke203:20190215043812p:plain
ちなみにこのシーンで後ろに写っている「J・I・V・E」はなんの略称かわかりませんが、Jiveというのは俗語で「調子のいいことを言って人をだます/いいかげんなことを言う(英辞郎 on the web参照)」という意味がありますので、ヴァネロペはプリンセスたちに騙されたと(この時点では)思っているのを反映しているのかもしれません。


ただここで再度トライしていることからもわかるように、なんだかんだ言ってヴァネロペは自分にも歌が出て来て欲しかった、つまり自分をプリンセスの一人としてアイデンティファイしたかったんです。

ヴァネロペはプリンセスの素養を持っていることが、OhMyDisneyのシーンで明らかになっていて、それはラプンツェルの問うたこれでした。

youtu.be

[Rapunzel]
And now for the million-dollar question.
じゃあこれは一番大事な質問。
Do people assume all your problems got solved because a big strong man showed up?
大きな力持ちの男の人が出て来たことであなたの問題が解決されたと周りの人たちから思われてる?

[Venellope]
Yes! What is up with that?
そう!ほんとアレなんなのよ?

[Princesses]
She is a princess!
この子はプリンセスね!

ここの翻訳は色々争点になっていますが、(親がいないかどうかはおいておいても)唯一この質問に当てはまったことで、彼女はプリンセスの一人として認められます。
そしてティアナのセリフでは、

[Tiana]
That's what happens when a princess sings about her dream
プリンセスが自分の夢について歌うとそうなるのよ

つまりヴァネロペが本当に「プリンセス」としての素養を満たしているプリンセスだったら(ちょっとややこしい言い方だけど)、これも当てはまるはずなんです。
あのゴミを蹴っている時のヴァネロペの心境としては「やっぱり歌えないってことはあたしはホンモノのプリンセスじゃないのね。あーあ。」って感じなんだと思われます。

寄り道しすぎましたが、だ・か・ら この「I'm rhyming」はどうしても訳して欲しかったんです。「韻を踏んでる!!歌えてる!!」っていうこのヴァネロペの喜びは一ドルショップがどうこうよりもずっと大きく重要なはずです。
これこそがまさに彼女が自分自身をプリンセスだとアイデンティファイできた瞬間なんです!

 

熱くなりすぎました。つづけます。

 

[Shank]

Welcome Back, watch your head <おかえり気をつけて>
おかえり、頭上注意
おかえり、気をつけて

Hate to see you end up dead <危険がいっぱい>
あなたが死ぬとこ見たくない
死ぬのは早い

[A Thief]

Let's get this party rollin' <冷蔵庫お持ち帰り!>
さぁパーティはこれからだよ
さぁ パーティ始めようぜ

[Vanellope]

Is that appliance stolen? <あのおじさんドロボウ?>
あの電化製品盗まれてるの?
あれ盗んでってるの? 

[Shank]

We have <まあね>
ここには
ここには

[Butcher Boy]

Falling wires <電線注意>
切れて落ちてる電線
切れてる電線 

[Little Debbie]

Dumpster fires <燃えるゴミ>
ゴミ箱の炎
燃えてるゴミ箱 

[Clown]

Creepy clowns <ピエロだよ>
気味の悪いピエロ
おかしなピエロ 

[Felony]

And burning tires <タイヤはいかが?>
火のついて燃えてるタイヤ
焼けてるタイヤ

 

このあたりはどうしても一節ごとの音節数が少なすぎるのでいろんな遊びを盛り込むことが難しいです。 Dumpster FIreは燃えるゴミといいつつゴミ箱ごと燃えているので、吹替詞では「燃えるゴミ」というあえて普通の言い方を持ってくることでギャップでウケ狙いしようという翻訳の意図だったのだと思います。

次行きます。

[Shank]

That great white in the sewer <下水道のサメ>
下水道にいる あの大きな白いの(Great White Shark:ホオジロザメ
下水道の白い子

You'll be happy that you knew her <でもホントはいい子>
もう会ってて良かったと思うはずよ
前にも会ってるよね?

Great White Shark でホオジロザメなのですが、見たらわかるだろうということであえて白い子と言いました。その方がシャンクが可愛がっているのが伝わる気がしたからです。また、「You'll be happy that you knew her」というのも面白くて。
これは、最初にスローター・レースに足を踏み入れた時、このサメに二人は怯えてしまいます。で、シャンクはなんらかの形でヴァネロペがすでにこのサメにあっていることを知っていて、You'll be happyというのは前にあってたけどその印象とは本当は違うから、今もう一度紹介してあげると前に出会えててよかったと思えるはずだよ!っていう意味だと解釈できます。なので前にもあってるよね?という確認風にしました。

[Shark]

Dogs and cats, they sure taste great <ワンコニャンコ可愛いし>
犬さん、猫さん、もちろんとっても美味しい
犬さん 猫さん とっても美味しい

[Wolf]

With a side of license plate <ナンバープレートも>
ナンバープレートの付け合わせもついてくる
ナンバープレートの付け合わせ 

[Dog]

Some find us deplorable <かわいそうなオレたち>
ボクらを悲惨な状況だって見る人もいる
哀れなボクら

[Vanellope]

Well, I think you're adorable <そうかな?楽しそうだよ>
そうかな、あたしはとっても可愛いと思うよ
とっても可愛いと思うよ 

サメさんは、犬猫のことを「可愛い」とは言ってません。「味がすごくいい」と言ってます。スローター・レースの世界はシュガー・ラッシュのように「甘い」世界ではありません笑
むしろ、「可愛い」という評価を持ち込むのはヴァネロペの方です。これは重要だと共います。彼女はラルフが逃げ出したくなってしまうようなこの世界をadoreできる、愛せるのです。
ナンバープレートはメインディッシュである犬猫についてくる「付け合わせ」だそうです。

[Shank]

We may be a motley crew, but our hearts ring true <怖く見えても意外とピュア>
わたしたちは雑多な集団だけど、心は誠実なの
メンツはカオス でも誠実

[Tatoo Guy]

And just for you, a face tatoo <こころ込めてタトゥー>
そしたらキミだけ特別に、フェイスタトゥーを
キミだけにフェイスタトゥー 

元の英詞では、crew, true, tatoo で伸ばす部分で韻を踏んでいるので、ここではたまたま良い言葉が見つけられたので、「ツ」「ス」「つ」「トゥ」を合わせてみました。

 

[Vanellope]

My heart's in flight, and, wow, it's a blast <ワクワクがわぉ!止まんない>
心が飛んでるみたい うわぁ ホントに最高
心ウキウキ もう最高

Feels like my dreams are real at last <夢をついに見つけた!>
ようやくあたしの夢が現実になるみたいに感じる
ついに夢が叶うの

ここは、La La Landの車のシーンの引用の直後空を飛んでいるので、あのプラネタリウムのシーンや、Moulin RougeのYour Songのシーンを彷彿とさせます。要するにこれは本当に飛んでいるかどうかはともかく、彼女的に軽くなって上昇し飛んでいる気分になっていることが重要です。その感じを出すために響き的に浮いてそうなウキウキにしてみました(笑)。

[Shank]

No trace of a frown upon your face <もう何も迷わないで>
しかめっ面してたけど跡形もなく消えたね
悩みが消えたなら 

ここは、traceというのがトレースという言葉があるように跡、痕跡を意味しており、顔にしかめっ面をしていた跡がなくなっていることをシャンクが鋭く観察していうわけです。(シャンクの観察力というのもヴァネロペの気づいたザンギエフのムダ毛処理の話とつながってくるのですが今回は置いておきます。)

そして Nから始まっているので「悩み」というワードをチョイスしました。

[Vanellope]

Flying so fast <飛び立とう>
すごい速さで飛んで行こう
飛ばそう

すでに「飛んで」はいますし、「飛ばそう」とすることでスピードを飛ばしていく方にかかるなと思いこうしました。

[Shank]

Setting the pace <今こそ>
先頭に立ってリードして
先頭を

「set the pace」というのは、集団で走っている時に先頭に立つことで自らがレースのペースをつくるという意味です。「リードしよう」なども考えましたが、元がSから始まっているので、「先頭」を選びました。 

[Vanellope]

Living the life <生きよう>
人生を送ろう
生きよう

 

[Shank]

Loving the chase <レースに>
競争を愛しながら
競争に

 

[Vanellope]

Now is the time <あたしの>
いま時が来たの
いまこそ

 

[Shank]

Here is the place <居場所は>
ここがその場所
この場所で

 

[Both]

This Slaughter Race <このスローター・レース>
このスローター・レースが
そう スローター・レース 

この辺りはとくに深く解説することはありません。

[Vanellope]

I know I should go <帰れないよ>
わかってる 帰るべきだっていうのは
帰らなくちゃ

But home feels so slow <お菓子の国>
でもお家は何もかもがとってもゆっくりに感じる
でも 見つけたの

These roads are paved with dreams <探してたマイドリーム>
ここの道はたくさんの夢で敷き詰められてるんだもん
この夢の道 

ヴァネロペは「帰れないよ」とは言ってません。「帰らなくちゃいけないのはわかってる。でもお家はゆっくりすぎる」と感じています。その要素を入れたかったのですが、むしろそのあとの「These roads are paved with dreams」を大事にしたかったのでそちらを優先しました。

これは「pave」が舗装するという同士なので、「ここにある道路は夢で舗装されてる、夢で敷き詰められている、夢であふれている」というかなり洒落た言い回しになっています。「夢の道」という語にすることで、夢の溢れている道であることを反映するとともに、それをたどっていくことで夢に迎えるという意味合いも私が勝手に加えてしまいました。

[Clown]

Happy dreams, not creepy clown dreams <お嬢ちゃん死んでも知らないよ〜>
楽しい夢ね、奇妙なピエロの夢じゃなくてね
楽しい夢ね、ピエロが出ないやつ

ここについてはなぜ、吹替詞が「死んでも知らないよ」にしたのかよくわかりません。
ここもこちらの劇場ではかなり爆笑ポイントだったのですが、それはピエロの夢じゃないと言っているにも関わらずピエロが出て来てそれを言っているというギャップが面白いのです。そもそもピエロがいてもここは夢で溢れているというのがヴァネロペの視点なので、ヴァネロペがいかに観客である我々やラルフと価値観が違うかというのも示されます。

[Vanellope]

What would Ralph say <ラルフ ごめん>
ラルフはなんて言うかな?
なんて言うかな

If it turns out I stay <あたしは生きる>
もしあたしがここに残るってわかったら
でも 気づいちゃったの 

ここもまた、吹替詞が曲げてしまった大きなポイントだと思います。
ラルフに対しごめんとは言っていません。ラルフにごめんとは言っていません!
ヴァネロペがラルフに謝るのは、死にかけたのを助けてくれたあそこではじめて謝ります。

ちなみに全編の中で「sorry」という言葉は11回登場しており、そのうちラルフとヴァネロペの間で交わされたのはたったの4回のみ。

  1. ラルフ:自分が作ったコースのせいでヴァネロペがコースアウトしてしまった時
  2. ヴァネロペ:ゲームレスになって取り乱し、ラルフが単なる友達では不十分だと言ってしまった時
  3. ラルフ:クローンが生成されたことについて何をしたの?と問われてわからないと答える時
  4. ヴァネロペ:ラルフから半分のペンダントを渡され、壊してしまったことに気づいた時

特に注目すべきなのは、スローターレースがクラッシュしたあと、ラルフに助けられたヴァネロペがラルフに言うセリフにsorry は含まれていないとうことです。

[Vanellope]

Ralph, I messed up so bad.
ラルフ、あたしめちゃくちゃにしちゃった。

It's all because of me and my glitch.
これぜんぶあたしとあたしのグリッチのせいなの。

I should've just stayed with you instead of following some stupid dream!
バカみたいな夢を追いかけたりしないで、ただただラルフと一緒にいるべきだった!

I've ruined everything!
何もかも台無しにしちゃったよ!

「心配かけてごめん」くらい言っても良い気がするのですが、それは言いません。むしろここで言うのが「I should've just stayed with you」なのです。

ちなみにこれは先ほど出て来た「I know I should go」に対応しています。だからあそこは「帰れないよ」ではニュアンスが違いすぎる気がすると言うのもお分かりいただけるかと思います。

 

とにかく、これだけ「sorry」と言う言葉がタイミングを選ばれて使われている以上、勝手に一回ここで増やしてはマズイと思うんです。

(このようなキーワードで分析する考察はちまちまとツイッターの方で呟き始めようと思っています。後々このブログでもまとめるかもしれません。)

 

つづけます。

[Vanellope & Chorus]

In this place called Slaughter Race <このスローター・レースで>
スローター・レースって呼ばれてるこの場所に
あたしの居場所は スローター・レース 

[Vanellope]

In this place called Slaughter Race <このスローター・レースで>
スローター・レースって呼ばれてるこの場所に
居場所はスローター・レース

どうしても「あたしの居場所」というのを回収したかったのと、「スローター・レースで」という吹替詞だとスのところでウを伸ばしてしまうのが気持ち悪いということや、できるだけキーワードとなる部分は元のままにしたかったというのもあり、そしてIn thisというiから始まっているので「居場所」を盛り込めるなと気づいたのでこのようにしました。

 

おわりに

ということで、私がつけた訳詞やその音声によって不快な思いをさせてしまった場合は申し訳ありません。

でも、元の歌詞のニュアンスを私以外の方にも知っていただけたらという思いから、もし吹替詞が直訳に近かったらどうなっているのかをみる実験としてやらせていただきました。

最後までお読みいただいた方、そしてお粗末なものをお聞きいただいた方、本当にありがとうございました。

引き続き、この作品を分析していきたいと思います。

 

 

La La Land 音楽分析メモ(主要6曲の様々なアレンジによるリプライズ)

La La Land 音楽分析メモ(主要6曲の様々なアレンジによるリプライズ)

これは私が2017年3月12日に書いた記事ですが、このブログでは公開していなかったので、金曜ロードショウに合わせてこちらで公開してみました。
 

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(以下2017年3月12日に記入)
 

 2月24日の公開日以来、La La Land の批評・分析に関する記事は毎日のようにネット上にアップされていて、最近は少なくとも一日一回それを検索するのが日課になっている。単なる感想から構造批評まで様々だが、記事ごとに色々な解釈や関連知識が得られるので興味深く読ませていただいている。もちろん私も公開初日以来何度も映画館に通い、La La Landの虜になったうちの一人だ。

 

 ここでは事細かにストーリーを分析したり、批評記事を書いたりしたいわけではない。取り上げたいのは音楽だ。と言っても巷でホットなジャズやミュージカルの観点ではなく、あくまで「反復の演出としての音楽」に注目したい。

 この作品はミュージカル形式をとっているにも関わらず、主人公たちが歌ういわゆる「ミュージカル ・ナンバー」が少ないことは多くの人によって指摘されている。しかし、反復の演出によって二度目以降は歌わずとも「リプライズ」がなされているのが私にとっては印象的だった。それどころか、既に曲としてはインストで登場しており、ミュージカル・ナンバーとして歌うのが二度目以降である場合すらあったことに驚かされた。

既にお気づきの方も多いかもしれないが、この映画の音楽は主要な6曲のアレンジと組み合わせで構成されている。

何度も繰り返し映画を観られるようになったらまた改めて細かい分析ができたらとは思っているが、これを書いている時点ではこのことを言及している日本語の記事が見当たらなかったので、メモ程度にまとめておくことにした。

 

 映画の中で主人公たちによって歌われる(ないし演奏される)主要な楽曲は、『♫Another Day of Sun』『♫Someone In the Crowd』『♫Mia & Sebastian’s Theme』『♫A Lovely Night』『♫City of Stars』『♫Start a Fire』『♫Audition』の7曲だ。

 オリジナル・サウンドトラックには、これらを含めた15曲が収録されているが、iTunesAmazonでデジタル配信されている「ラ・ラ・ランド(コンプリート・ミュージカル・エクスペリエンス)」にはオリジナル・サウンドトラックに収録されていない他の曲も含め、映画で使われたほとんどすべての楽曲(全44曲)が収録されいて、冒頭のハイウェイで夢追い人たちがそれぞれの車内で聴いているラジオや音楽に始まり、エンドクレジットの曲まで映画全体の音楽を視聴することができる。今回は「ラ・ラ・ランド(コンプリート・ミュージカル・エクスペリエンス)」を元に書いている。

 
 

 さて、先ほども言及したように、この映画の音楽は主要な6曲のアレンジと組み合わせで構成されている。それは『♫Start a Fire』を除く、『♫Another Day of Sun(ADS)』『♫Someone In the Crowd(SIC)』『♫Mia & Sebastian’s Theme(MST)』『♫A Lovely Night(ALN)』『♫City of Stars(COS)』『♫Audition(ADT)』の6曲だ。

以下に、どの楽曲が6つのうちのどのメロディーをとっているかを図に示した。

 

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 順を追って解説を加えていく。なお分析としてのオチはなく、淡々と各シーンで流れる音楽(インスト)のメロディーがどのミュージカルナンバーに対応しているかを記録したものになることをご了承いただきたい。今後分析するための参考程度にメモしておくつもりだ。


【冬】

ミアと同じく孤独な夢追い人であるセブが、もっと堅実な生活をしろと言う姉のローラに「ロマンチックの何が悪い」と反論するシーンでは『♫Someone In the Crowd』のメロディーが流れている。(『♫Classic Rope-A-Dope』)このことからセブも、夢を実現するチャンスを作ってくれる “Someone In the Crowd” を必要としていることが表現される。逆に、このシーンでローラに対してセブが『♫Someone In the Crowd』のリプライズ的な曲を歌い始めたら、私だったら引いてしまう(笑)。ちなみにこの曲の後、セブがオーナーの指示で弾くクリスマスソングを挟んで、ついに『♫Mia & Sebastian’s Theme』を演奏し、そこでミアとセブが本当の意味で出会うが、それ以降ミアがLAを去って故郷に帰るシーンまで『♫Someone In the Crowd』のメロディーが登場することはない。『♫Mia & Sebastian’s Theme』をきっかけに、夢を実現するチャンスを作ってくれる “Someone In the Crowd” としてのお互いの存在を見つけてしまったためなのだろう。


【春】

『♫A Lovely Night』の直後のシーンでは、二人で踊った時間を名残惜しく感じるのか、ミアのプリウスが見えなくなったあとでセブが少しまたタップダンスのステップを踏んでみたり、翌朝ミアが職場へ向かう際にターンをしたりする様子が描かれるが、その背景には『♫A Lovely Night』のメロディーが流れている。(『♫There the Whole Time / Twirl』) その次のシーンで、仕事を終えたミアとセブが撮影現場を散歩するシーンでは、ミアが自身の夢の原点となった叔母さんとの思い出を語るが、そのシーンの音楽はなんと映画終盤の見せ場の一つ目に当たる『♫Audition』のメロディーだ。(『♫Bogart & Bergman』)一方で、そんな夢を持ちながらもオーディションに落ち続けていると言う現実を語りだし「ジャスは嫌いなの」と告白するまでの音楽は、後にセブが歌う『♫City of Stars』のメロディーがかかっている。『♫City of Stars』では、2つの "dream that I cannot make true” について歌われるので、『♫City of Stars』のメロディーは「叶わぬ夢のテーマ」と位置付けることができよう。(『♫Mia Hates Jazz』) その直後、LIGHTHOUSE CAFEでセブが自分のジャズバーを開くという自分の夢を語った後に、ミアがオーディションの1次を通過したという知らせを受けRIALTOでの映画デートを約束するシーンでは、『♫A Lovely Night』のジャズアレンジがかかる。 セブの『♫City of Stars』を挟んで、オーディションでまともに取り合ってもらえなかったミアが、RIALTOの看板を見てセブとの約束を思い出して気を取り直すシーンでは再び『♫A Lovely Night』が流れる。それを機に『♫A Lovely Night』のメロディーは聴かれなくなる。この後『♫A Lovely Night』のメロディーが登場するのは、ミアのオーディション後「ずっと愛してる」と言い合った後のシーン、すなわち空白の5年間の直前になる。 そこから遅刻してRIALTOに行き、グリフィス天文台でのデートを経て初のキスに至るまでは一貫して『♫Mia & Sebastian’s Theme』のアレンジが続く。ミアと目線もあまり合わせず、兄カップルとの食事でもほとんどミアを会話に入れない今彼グレッグ。ミアはそんなつまらない食事をしているレストランで、ふと聞き覚えのあるメロディにハッとする。『♫Mia & Sebastian’s Theme』はセブが作ったオリジナル曲なはずなので、レストランでBGMとして流れているとは考えにくい。そのため、これはミアがセブのことを無意識のうちに考えていて、その時レストランでBGMとして流れてきた、多くの人には聞き流されてしまい会話によってかき消されてしまうジャズ音楽に、意識が行きセブへの想いを募らせるという演出なのではないかと解釈している。そして映画館でのフィルムが焼けるというアクシデントを経て、ミア提案の「聖地巡礼」として向かったグリフィス天文台プラネタリウムにて『♫Someone In the Crowd』に登場したフレーズ “the one to finally lift you off the ground” が、文字通りに実現したところで【春】は幕を閉じる。


【夏】

『♫Summer Montage』を経た後、行きつけのLIGHTHOUSE CAFEでキースが声をかけてくる際にかかるのは映画冒頭の『♫Another Day of Sun』のアレンジだ。(『♫It Pays』)その夜ミアの一人芝居の脚本を聞いたセブが、自分のバーのことについて話し始めるシーンでは、再び『♫Another Day of Sun』のアレンジが流れる(『♫Chicken On a Stick』)。その翌朝は,あまり批評記事には書かれないが、セブにとってはかなりのターニングポイントとなったであろうシーンだ。ミアが母親にセブのことについて電話で話していて、「今は安定した職についていないけど、きっと貯金があるのよ。とにかくジャズバーは開くし、気に入るはずよ」と言う。それを聞いたセブは、キースには連絡を取らないときっぱり言っていたにも関わらず、キースのバンドMessengersの練習場所へ向かう。彼にとってある意味での “Another Day of Sun” が昇ってしまった瞬間だったのではないだろうか。ちなみに劇中でこのシーン以外で『♫Another Day of Sun』のアレンジがわかりやすいカタチで登場するシーンは『♫Epilogue』以外他にはない。印象的な冒頭からだいぶ時間の経過したところでこのキャッチーなメロディーを使ったことには、ターニングポイントのマーカーとして大きな意味があるのではないかと考えている。 続いて、この作品において本当の意味でリプライズされた唯一の曲『♫City of Stars / Mat Finally Come True』を経ながら、ミアは一人芝居の準備を着々と進め、セブはミアとの暮らしのための稼ぎとしてのバンド活動を続けていく。クリスマスソングや80年代ポップスを弾かさせられていた時のように、彼が本当にやりたい “pure jazz” ではないものを演奏するとき、彼は生き生きしていない。しかし、物語全体の折り返し地点となる『♫Start a Fire』のライブでピアノとキーボードを演奏するセブは、“pure jazz” ではないにも関わらず、それまでとは違って楽しそうに生き生きとした表情を見せる。その表情を見たミアが、夢をどこかへおいてきてしまった彼にはっきりと気づいたところで【夏】は終わる。
 


【秋】

バンド活動で忙しいセブとは滅多に会えない日々を送りながら一人芝居を二週間後に控えたミアがチャイナタウンのカフェで作業をしているところから始まる。ここでは非常にわかりづらいが、『♫Chicken On a Stick』の最初の部分で使われた『♫Another Day of Sun』のアレンジのフレーズがピッチを下げて再登場する。ミアは唯一の夢の応援者であるセブとなかなか会えなくなってしまったつらい日々においても引き続き、翌朝昇る太陽 “Another Day of Sun” を信じて夢に向かい続けていることを象徴しているかのようだ。その後、久しぶりに帰宅したセブがサプライズディナーを振る舞うシーンでは、彼が劇中の世界観の中でレコードで再生しているBGMとして『♫City of Stars』のアレンジが流れる。(『♫Boise』)そしてこの時が、『♫City of Stars』のメロディの劇中最後の登場となる(ただし『♫Epilogue』を除く)。 この位置付けの意味するところについては、『♫City of Stars』のメロディが最初に登場したのが『♫Mia Hates Jazz』としてだったこと、『♫Boise』が流れたシーンでは、ミアは「私は今はもうジャズが好きだ」と言うこと、クレジットタイトルの後にミア一人のハミングによる『♫City of Stars (Humming)』があることなどがヒントになりそうだが、まだ私は解釈ができていない。
 そしてついに二人の関係が一旦は破綻するシーンである、セブがミアの一人芝居に間に合わなかった時の音楽『♫Missed the Play』ではマイナーアレンジで『♫Mia & Sebastian’s Theme』の一節が流れる。 それに続くミアの帰郷シーンでは、映画始めの【冬】のシーン以来初めての『♫Someone In the Crowd』のメロディーが登場するが、その曲の途中からLAにいるセブにう映像が切り替わりその曲がセブによって婚約パーティーのBGMとして演奏されていることが描かれる。二人はそれぞれの “Someone In the Crowd” を失ってしまい再び独りずつになってしまった描写だろう。 その曲の直後セブの携帯に、ミアの一人芝居を見たキャスティングディレクターから電話が入り、連絡のつかないミアに知らせるために、セブはミアの自宅を探しに行く。その時セブがミアの自宅を探すヒントにしたのは、演劇のタイトル「So Long Boulder City」と『♫A Lovely Night』の翌日お互いの夢を語り合ったあの【春】の日にミアが発した「よく叔母と家の目の前にある図書館で古い映画をみた」という一言だったのだと言うことが前後の演出から理解できる。セブが翌朝ミアを迎えに自宅前に来た時にかかる曲(『♫The House In Front of the Library』)のメロディーは、もちろんヒントになった言葉をミアは発したあの時に流れていた『♫Bogart & Bergman』と同じ『♫Audition (The Fools Who Dream)』のメロディーだ。その後ようやくミアにより『♫Audition (The Fools Who Dream)』が歌われ、すべての曲が出揃ったところで、再び【春】以来の『♫A Lovely Night』のメロディを使った『♫You Love Jazz Now』が登場して【秋】が幕を閉じ、空白の5年を迎える。


【冬】

 そして5年後の【冬】は『♫Epilogue』として『♫A Lovely Night』を除いた5曲がリプライズの形で奏でられながら、「what ifシーン」が描かれ、二人が視線を交わし合うところで再び『♫Mia & Sebastian’s Theme』のメロディが『♫The End』として流れて映画は終了となる。

 

 

この映画はとっても好きなので、考察も色々していますが、この記事はこの分析メモという形で終わらせたいと思います。(2017年3月12日)

「無限の彼方へは行けない」「ボニーは大切にしてくれなかった?!」Toy Story 4 インタビューと30秒広告の考察

ティム・アレンのインタビューと30秒広告の考察二本立て

またまた Toy Story 4 の記事です。

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今回は、Pixar Postに投稿されていた記事なのでお読みになった方も多いと思いますが、このティムアレンのインタビュー。 

www.pixarpost.com

それからこの、30秒予告編を二本立てで考察したいと思います。

どちらも私なりに和訳をつけて、その上で考察することにします。

www.youtube.com

 

 

(1)バズ・ライトイヤー声優 ティム・アレンのインタビュー

すでに日本語のサイトで訳されていたりもしますがちょっと解釈が違うのではないかなと思う部分もあるので、トイストーリーフランチャイズをよく知っている身として、いろいろと行間を捕捉しながら訳していこうと思います。ですので、和訳にはすでに私の解釈が大いに含まれています。

※なお、記事翻訳の下に、今回判明したことのまとめと考察を加えました。

 

こちらが元記事のさらに元になっている動画(1分42秒)です。直で見た方が早いという方は是非こちらをご覧ください。 

www.youtube.com

 

以下翻訳。

なお、英文は、PixarPostの書き起こしをベースに私が映像を見てより彼の喋った通りに近いように書き換えています。翻訳も独自で一部意訳し説明も加えたものをつけています。

 

◯イントロ◯

"This is funny because not even 20 minutes ago I left Disney and came here, I just finished up a little bit of Toy Story 4 and Hanks was coming in right after me — we're old good buddies and I asked him "What can I tell them about this?", and he goes "You've already said a bit too much".

まあこれは面白い話だよ、だってまだ20分も経ってないけど、僕はディズニー(のスタジオ)からここへきたんだ。ちょうど Toy Story 4 の録音を少し終わらせたばっかりでね。(トム)ハンクスが入れ替わりにスタジオに入ってきたんだけど、もちろん僕らは中の良い友達さ、で、彼に聞いたんだ「番組でこの作品について何なら言えるかな?」って、そしたら「君はもう喋りすぎだよ」ってさ。

 

◯ 最後のセリフについて◯

Cause I say Tom and I both (I gotta be careful), we both read the last two lines of this movie, I get choked up and he even said "I had to turn around in the booth", and I said, "I did too".

だから喋り過ぎちゃわないように気をつけないといけないんだけど、トム(ハンクス)と僕は、この映画(Toy Story 4)の最後の二行のセリフを読んで、言葉がでなくなるほど胸が詰まって、トムは「レコーディングブースでは顔は向けられないな」とまで言ってきて、「僕もだよ」って返したよ。


The last couple of scenes, especially the last lines of the movie will be a memorable moment for everybody. Oh, it's wonderful, it's wonderful.

最後の数シーンは、特に映画の最後のセリフはみんなに記憶される瞬間になるだろうね。本当に素晴らしいんだ。

 

◯ボーピープについて◯

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Bo Peep has been missing and you're going to find out in a very tragically where she's been and what that means for toys like her, and Woody has to decide where he's gonna fall on that deal. It's really so clever, so wonderful, so warm about and how they (Pixar) do this? How these guys (creators at Pixar), I just say this story is so emotional, so funny, so brilliant.

ボー・ピープはしばらく登場していなかったんだけど、彼女がどこで過ごしてきたか、とっても悲劇的な形で映画の中でわかるんだ、それが彼女のようなおもちゃにとって何を意味するのか、そしてウッディはどこでそのような処遇に向きあうことにするのかを決めねばならないんだ。とっても巧みで、とっても素晴らしく、とっても心温まる展開で、ほんとピクサーはどうやって作ってるんだろう?とにかく彼らは、まあ僕がいうならこの物語はとっても感動的で、とっても面白くて、本当に見事なんだ。

 

◯ボニーについて◯

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Toy Story 3 ended originally with a little girl sitting there, and all of us saw that little girl smile and Andy said with his eyes (a cartoon character) she might take care of these toys — cause we were originally in Toy Story 3 waving on the porch, that was it. It looked like maybe this little girl will take care of us — well, maybe she didn't take care of us so well.

前作の Toy Story 3 は少女(ボニー)が座っていて、僕ら(観客)がみんな見たように、ボニーが微笑んでて、(まぁアニメーションのキャラクターではあるからこういうのも変なんだけど)アンディーの送る視線は「きっとこの子が自分の大事にしてきたおもちゃたちを可愛がってくれるんだ」って言ってるようだったでしょう。だってほら、僕ら(おもちゃたち)は Toy Story 3 で最後(ボニーの家の)玄関に座って(車で大学に向かってさっていくアンディに)手を振っていてそれで終わったでしょう。それで、この女の子ボニーがきっと僕らを大事にしてくれるだろうって感じだったじゃない?でも、どうやらボニーは僕らおもちゃたちをあんまり大切にしてくれなかったようだね。」

(どよめくスタジオ)

 

◯アウトロ◯

It's just wonderful where it goes and how it comes together.

ただただ素晴らしいんだ、物語の結末とどうやって話がまとまるのかってとこが。

(スタジオの出演者の一人: "I just can't wait to see the drama of it" もうその展開が見られるのが待ちきれないね。)

Oh, it's wonderful. But it's, the best thing is Forky, is the new character.

ああとっても素晴らしいよ。でも最高なのはフォーキー。新しいキャラクターだよ。

 

ティム・アレンのインタビューで判明したこと

  • 最後のシーンはウッディとバズの会話で、非常に感動的な展開になるということ。
  • ボー・ピープが2作目以降どのように過ごしてきたかは「悲劇的な形」で語られるということ。
  • ボー・ピープのようなおもちゃ(というのが何を指すのか明確ではないが)にとってそのような状態(これも明確ではない)が何を意味するのか、がウッディたちにとっても重要なことであるということ。(この点は下で考察する)
  • ウッディはなんらかの決断を下さなければいけないということ。(これも以下で考察)
  • 3作目でアンディがおもちゃたちを託したボニーはあまり大事に扱ってくれなかったようであるということ。(これが今回の一番の衝撃事実)
  • それでもやっぱり最高なのは新キャラクター、フォーキー。

 

(2)Super Bowlに際して公開された30秒予告編

www.youtube.com

 

こちらもせっかくなので書き起こしましょう。

Woody: Wow! This place is amazing.

ウッディ:うわぁ!ここはすごい場所だな。

Boo: Wasn't that Buzz gonna meet us here?

ボー:私たちはここでバズと会うんじゃなかったっけ?

Woody: He must be held up somewhere.

ウッディ:どっかにくくりつけられてるはずだよ。

Ducky: Hey, up here Astro Boy.

ダッキー:おい、アトムくん、上だよ。

Bunny: If you think you can take our top prize spot, you're wrong.

バニー:もし自分が最高賞の場所にくくりつけてもらえると思ってたんだったら、お前は勘違いしてる!

Ducky: Dead wrong!

ダッキー:ものすごくな!

Buzz: Help me get out of here.

バズ:ここから出るのを助けてくれ

Ducky: I will help you. With my foot!

ダッキー:助けてやるさ、オレの足でな!

Ducky: How you like that, cheater?

ダッキー:どうだ、気に入ったか?この詐欺師が。

Ducky: Oh! To infinity and my foot! Boom!

ダッキー:あ、これはどうだ、無限の彼方へさあ「足で」!バーン!

Bunny: Hahaha.

バニー:(笑)

Ducky: And back in the space they can ac..scaaaaaa!

ダッキー:それから宇宙に戻ったら、みんなはあああああああ!

Bunny: Wow!

バニー:おぉい!

 

Super Bowlの30秒予告編で判明したこと

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  • 舞台となるカーニバルは山間にありそうだということ。
  • 観覧車や出店、ゲームがある後ろには大きめのアンティーク屋さんの店舗が構えられているということ。
  • バズがカーニバルのゲームの景品としてくくりつけられてしまうということ。
  • ウッディはボーと落ち合い、バズが括られているところを見にいくということ。
  • バズはゲームの景品の中でトッププライズにはなれないということ。

おそらくまとめるとこの5つくらいでしょう。

 

 

2つを合わせた考察

 ではインタビューと予告編からわかったことを合わせながら考察していきます。

 

【1】ボニーはおもちゃたちを手放してしまう?!

さあ大変です。ボニーはあまり大事に扱ってくれなかったらしいということです。

まあこれまでに発表されている公式のプロットでは、次のように書かれていました。

 

But when Bonnie takes the whole gang on her family's road trip excursion, Woody ends up on an unexpected detour that includes a reunion with his long-lost friend Bo Peep (voice of Annie Potts).

しかし、ボニーがおもちゃの仲間たちを家族で行く小旅行に連れて行くと、ウッディは予期せぬ寄り道をすることになり、そこで長年離れ離れになっていた友、ボー・ピープとの再会を果たすのです。

(これについて詳しくはこちらの記事参照。)

ikyosuke.hatenablog.com

 

おそらくこの小旅行というのが、数日前にSuper Bowlにあわせて登場したこの30秒の広告に出てくるカーニバルへの旅行なのだろうとは思っていましたが、この「unexpected detour(予期せぬ寄り道)」というのがもしかすると、ロッツォのように忘れられてしまうということなのかもしれませんし、そうでないのかもしれませんし、なんともわかりませんでしたが、ティム・アレンのインタビューを見る限り、ボニーが簡単に手放してしまうという展開の可能性も否めなくなりましたね。どんな展開だったとしても、アンディ的にもおもちゃたち的にも相当ショックでしょうね。

 

 

【2】ウッディが向き合わねばならない運命とは?

次にインタビューにあったこの一節を考えます。

 

Bo Peep has been missing and you're going to find out in a very tragically where she's been and what that means for toys like her, and Woody has to decide where he's gonna fall on that deal. 

ボー・ピープはしばらく登場していなかったんだけど、彼女がどこで過ごしてきたか、とっても悲劇的な形で映画の中でわかるんだ、それが彼女のようなおもちゃにとって何を意味するのか、そしてウッディはどこでそのような処遇に向きあうことにするのかを決めねばならないんだ。

 

一つずつ整理していきましょう。

 

1)「(ボー・ピープが)どこで過ごしてきたか」

これは前の記事ですでに判明したように、路上です。誰かの家ではありません。

After years of being on her own, Bo's adventurous spirit and life on the road belie her delicate porcelain exterior.

何年もの間一人で生きてきた結果、ボーの冒険精神と道端での暮らしは、彼女の壊れやすい陶器製の体をそぐわないものにしていました。

 

2)「悲劇的な形で」

これはティムアレンの喋り方的に、「悲劇的に」が判明の仕方の方にかかるのか、それとも彼女が過ごしてきた場所やその展開が「悲劇的」なのか、どちらとも取れそうな曖昧な言い方をしていました。そのため少し訳すのに悩みました。

ただ悲しい過去に相当するものはすでに判明していてそれは前の記事でも書いたように次のように語られていました。

"While Woody was watching Andy grow up, Bo gathered dust until she took upon herself to head out into the world. And when Woody shows up, they can't believe that they've found each other again."

「ウッディがアンディの成長を見守っていた一方、ボーは自身の選択で外の世界に飛び出すまでの間、埃をかぶって使用されずに放置されていました。そしてウッディが姿を現した時、二人はお互いを再び見つけたことを信じられないのです。」

つまり、使用されずに埃をかぶって放置されていたということです。これは次のポイントにつながってきます。

 

3)「彼女(ボー・ピープ)のようなおもちゃ」

これは、彼女がベビー用ルームランプの飾りであることを指しています。アンディのような想像力豊かな子でなければ、おもちゃとしてではなくあくまで置物くらいにしか見てもらえない、という意味でしょう。さらに彼女は陶器です。そもそも子どものおもちゃには向いていません。

また、ここで重要になるのが、30秒予告編の最初のショットで見せられるカーニバルの後ろにある建物です。

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アンティークと書かれている建物で、他のテントと比較してもアンティークショップにしてはかなり大きく見えます。

ボーピープが陶器であることと、ここにウッディたちがボニーによって連れてこられた際にボー・ピープと再会するであろうことが読めるため、それらを加味すると、ボー・ピープがアンディの次に渡った持ち主によって、このアンティーク店に出品されたのではないか、という可能性も出てきます。

埃をかぶっていた場所がどこなのか、明確にされていませんから、もしかしたら店で埃をかぶっていた可能性だってあり得ると思うんです。

 

***

 

では、これらを踏まえて、ウッディが向き合わねばならない運命を考えます。

ウッディは2作目で日本のコニシ博物館に高額で売られるほどのコレクターグッズだったことが判明していますが、それはもう20年以上前のこと。

そして95年にはアンディのような子どもがあれほど喜んだバズ・ライトイヤーは、20年以上経った今、30秒予告編で新キャラにしてカーニバルのプライズのおもちゃであるダッキーとバニーに茶化されているように、こんなカーニバルのゲームの景品ですらトッププライズになれないくらい価値が低くなっているのです。

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当然ここででてくる「To infinity and my foot」というのは、昨年11月に公開された、Teaser Trailer 2で、ダッキーとバニーが「To infinity and beyond」というバズのセリフを茶化していたところからつながってくるわけですが、単なるネタではなさそうなのです。

もう一度あの予告編を振り返ると、「To infinity and beyond」というバズのセリフに対して、ダッキーとバニーは次のようにリアクションしていました。

www.youtube.com

Ducky: That's the stupidest thing I've ever heard.

ダッキー:今まで聞いた中で一番馬鹿げてるって。

Bunny: You can't go to infinity dummy. It's impossible.

バニー:無限にはいけないって、マヌケが。不可能だって。

Ducky: You don't know nothing about science.

ダッキー:科学のことなんにもわかってないんだな。

 

これって単純なネタではないと思うんですね。

1作目では、新しいおもちゃも古いおもちゃも大事にしてくれる持ち主によって。

2作目では、ジェシーのように一度あきられたり、プロスペクターのように買ってくれる人があまりいなくても、どこかには大事にしてくれる人がいるからそれを信じようということで。

3作目では、成長しても次の持ち主への受け渡しによって、ウッディたちは主人+居場所と、おもちゃとしての人生をつなぐことができてきたわけです。

 

アンディからボニーへの受け渡しのようなものが永遠に行われていけばおもちゃたちは「無限の彼方」までいけるかもしれません。しかし、今回バズの価値が下がっていることや、ボーが割れてしまっていることなどからもわかるように、歳を重ねてしまうことに逆らうことはできないのです。

そういう意味で、「無限にはいけないって」なのではないでしょうか。

だとすると、ボー・ピープが怪我をしている=割れている、というのは単なるタフな女の子を描くフェミニズムの一環でもないような気もしてきます。

どのタイミングで割れたのかはっきりしない以上、なんとも言えませんが、例えば、割れてしまったせいで、ほぼお金にならないような額でアンティーク店に出品されるも誰にも見向きもされなくて、自分で直して外の世界へ出た、などもありえるかもしれません。

この辺りは妄想にすぎませんが、カーズ3がそうであったように、トイ・ストーリーも、おもちゃとしての経年劣化や価値の低下という「老い」に向きあい、どこで「持ち主に大事にしてもらう」という、ウッディがずっと大切にしてきたおもちゃとしての人生に諦めをつけるのか、考えることになるのかもしれません。

 

現時点で出ている情報で私が考える「ウッディが向き合わなければならない」ものは、「(持ち主に大切に遊んでもらえるという)おもちゃとしての現役人生」の終え方です。

 

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フォーキーがどう絡んでくるのかはまだ情報が少なすぎるのでまた情報が公開され次第追って考察していこうと思います。