westergaard 作品分析

映画、ミュージカル、音楽、自分が好きなものを分析して語ります。

*Frozen Broadway* 18. Monster

18. Monster

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位置付け

ブローズン楽曲のなかで一番最初に公開されたナンバー Monster。

エルサが妹との再会の際に再び魔法で襲ってしまった後、映画では真っ赤に染まるアイスパレスの中で、Conceal Don't feel と自分に言い聞かせながら歩き回っているシーンが象徴的ですが、あのシーンと、ハンスたちが城に迫ってきて対峙するシーンの二つを一曲で再現したナンバーです。

エルサが自死までも考慮に入れるなかなか重たいナンバーですが、映画で表現されなかったエルサの苦悩が非常によく現れていて私はとても気に入っています。

曲の直前はハンスがアレンデール兵を先頭に、ウェーゼルトン公爵とその部下、加えてアレンデール国民の志願兵たちを引き連れてアイスパレスに向かうシーンからスタート。続いてアイスパレス内のエルサが、彼らの掛け声「End this Winter, Bring back Sumer, Keep your guard up!」を耳にするところからピアノのイントロが始まります。

 


Monster (From "Frozen: The Broadway Musical")

 

歌詞と対訳

 

[Elsa] 

It's finally come

ついに来る

Come to knock down my door

私の扉を打ち破りに

I can't hide this time

今回は隠れられなそうね

Like I hid before

これまでとは違って

 

The storm is awake

嵐はもう起こってしまい

The danger is real

危険は現実に

My time's running out

イムリミットは迫ってる

Don't feel, don't feel

感じないように 感じないように 

 

Fear will be your enemy and death its consequence

恐れが敵となり 死をもたらす

That's what they once said to me

いつかそう告げられたけど

And it's starting to make sense

その意味がわかってきた

All this pain, all this fear began because of me

この辛さ、恐怖は全て自分のせい

Is the thing they see

私はそう見られているの?

The thing I have to be

私がなるのを避けられないもの

 

A monster

モンスター

Were they right?

彼らは正しかったのかしら

Has the dark in me finally come to light?

私の中の闇が明るみに出るの?

Am I a monster full of rage?

私は怒りに満ちたモンスター?

Nowhere to go but on a rampage

行き場もなく ただ暴れまわるだけ

Or am I just a monster in a cage

それとも囚われのの身のモンスター? 

 

[Men] 

End this winter

冬を終わらせろ

Bring back summer

夏を取り戻せ

Keep your guard up

警戒を続けろ

 

[Hans] 

No harm comes to her

女王に危害は加えないぞ

 

[Men] 

End this winter

冬を終わらせろ

Bring back summer

夏を取り戻せ

Keep your guard up

警戒を続けろ

 

[Elsa] 

What do I do?

どうしよう

No time for crying now

泣いてる暇はない

I started a storm

私が引き起こした嵐を

Gotta stop it somehow

どうにかして止めなくちゃ

 

 

Do I keep on running?

ずっと逃げ続けるの?

How far do I have to go?

どこまで行かなきゃいけないの?

And would that take the storm away

逃げれば嵐はなくなるの?

Or only make it grow?

それとも酷くなるだけ?

I'm making my world colder

私は自分の世界を冷やし続けてる(犠牲にし続けてる)

How long can it survive

どこまで持ちこたえるかしら?

Is everyone in danger as long as I'm alive?

自分が生きてる限り みんなは危険に晒されるの?

 

Was I a monster from the start?

私は生まれつきモンスターだったの?

How did I end up with this frozen heart?

どうしてこの凍りついた心になってしまったの?

Bringing destruction to the stage

世界に破壊をもたらし

Caught in a war that I never meant to wage

関与する予定のなかった争いに巻き込まれて

Do I kill a monster?

モンスターは私自身で殺すしかないの?

 

 

Father

お父様

You know what's best for me

私にとっての最善を知ってるはずよね

If I die, will they be free?

私が死ねば、みんなは自由になるの?

Mother

お母様

What if after I'm gone

もしも私が逝った後

The cold gets colder and storm rages on?

寒さはさらに増して、嵐が強くなってしまったら?

 

No, I have to stay alive to fix what I've done

ダメよ、私は生き続けて 自分のしでかしたことを解決しなきゃ

Save the world from myself

私自身から世界を救うの

And bring back the sun

そして太陽を取り戻すの

 

[Elsa (Men) ] 

If I'm a monster (End this winter)

もし私がモンスターなら

And it's true (Bring back summer)

そしてそれが真実なら

There's only one thing that's left me to do (Keep your guard up)

私に残されたすべきことはたった一つ

But before I fade to white (End this winter, Bring back summer)

でも自分が真っ白になる前に

I'll do all that I can to make things right (Keep your guard up)

自体を戻すためにできることはなんでもやるわ

 

I cannot be a monster

モンスターになんてなれない

I will not be a monster

モンスターになんてならないわ

Not tonight!  (Monster!)

今夜は!

 

 

 

解釈と解説

 

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[Elsa] 

It's finally come

ついに来る

Come to knock down my door

私の扉を打ち破りに

I can't hide this time

今回は隠れられなそうね

Like I hid before

これまでとは違って

 

door は映画の段階からこの作品において重要なモチーフですが、これまでドアの向こうに隠れていた時は、ノックしに来る妹はいたものの、knck downされることはありませんでした。knock と knock down がうまくかかっている感じです。

 

Fear will be your enemy and death its consequence

恐れが敵となり 死をもたらす

That's what they once said to me

いつかそう告げられたけど

And it's starting to make sense

その意味がわかってきた

 

All this pain, all this fear began because of me

この辛さ、恐怖は全て自分のせい

Is the thing they see

私はそう見られているの?

The thing I have to be

私がなるのを避けられないもの 

 

A monster

モンスター

Were they right?

彼らは正しかったのかしら

 

Hidden Folksによる予言が繰り返されます。

パビーがアナの頭からエルサの氷と魔法の記憶を取り除いた際、エルサはパビーに自分の魔法も消して欲しいと言いますが、それはエルサの一部分(a part of you)だから消すことはできないと言われます。代わりにエルサが見せられたのは、自分の魔法に人々が怯える姿。そして自分のことを Monster と見る人々の視線。

実はこのシーンのナンバーはCDに収録されていませんが非常に重要な曲だと思っています。なにせこの Monster のメロディが初出し、しかも Monster というキーワードもエルサによって初めて口にされる場面ですから。

ここの部分一部いまだに歌詞が正確に聞き取れない箇所があるのですができる限り再現すると次のような感じです。

 

[Elsa]

I see Arendelle a winter night

ある冬の夜のアレンデールが見える

People stare at me in fright

怯える人々が私を睨んでる

Angly corwd, XXXX ice, terror in their eyes 

怒る群衆、XXXな氷、恐怖に怯える人々の目

It's all because of me, they look my way and see 

すべては自分のせい、みんなが私を見つめる視線はまるで

A monster 

モンスターを見るかのよう

[Pabbie]

Fear wil be your enemy and death its consequence

 

と、このようにパビーの予言へ繋がります。

"all because of me" もここが初出で、それが Monster で繰り返されています。

パビーは決してエルサをモンスター扱いしていませんが、エルサには人々の目線が彼女をモンスターとして見る目線として映ったようです。これを考慮に入れると、いかにウェーゼルトン公爵の「She is a MONSTER!」というセリフがエルサにとって恐怖だったかが伝わって来ます。

 

また、これより前の記事にも書いたことがあるかもしれませんが、エルサの歌う歌詞には「they」が頻出します。アナや他のキャラクターの歌詞には多少はありますが、ほとんど出て来ません。エルサにとって他の人から自分がどのように見られているか、認識されているかがいかに重要であるかを表していると考えられます。そしてもはやそこに区別はなく、Hidden Folksも両親も、国民も公爵も他の来賓もひっくるめての they なのです。

そしてここからエルサは自分が何者かという問いを自らに投げかけ続けます。

 

Has the dark in me finally come to light?

私の中の闇が明るみに出るの?

Am I a monster full of rage?

私は怒りに満ちたモンスター?

Nowhere to go but on a rampage

行き場もなく ただ暴れまわるだけ

Or am I just a monster in a cage

それとも囚われのの身のモンスター? 

これは文字通り、「nowhere to go:行き場がない」のと「go on rampage:暴れまわる」をかけているようです。 

また、檻の中という表現も、彼女がすでにLet it go後にはアイスパレスに立て籠もっていることと重なります。このシーンでは舞台の奥の方に半透明の氷の壁が降りて来ていて、近づいて来るハンスたちの影がうっすら見える演出になっています。

 

[Men] 

End this winter

冬を終わらせろ

Bring back summer

夏を取り戻せ

Keep your guard up

警戒を続けろ

 

[Hans] 

No harm comes to her

女王に危害は加えないぞ

 

[Men] 

End this winter

冬を終わらせろ

Bring back summer

夏を取り戻せ

Keep your guard up

警戒を続けろ

ハンスによる「No harm comes to her」は、アレンデール城を出発する前に公爵が部下にエルサを殺すことをほのめかすセリフを言っているのをハンスが立ち聞きしていたという演出の回収なのかなというのに最近観劇した際に 気づきました。

当然ハンスが自分でエルサを殺す必要があったからこの時点では殺させたくなかったというのは周知の事実でありますが。

ハンスたちが近づいて来るのが聞こえ、また氷の壁越しに見えて、エルサはさらにパニックになります。

 

[Elsa] 

What do I do?

どうしよう

No time for crying now

泣いてる暇はない

I started a storm

私が引き起こした嵐を

Gotta stop it somehow

どうにかして止めなくちゃ 

Do I keep on running?

ずっと逃げ続けるの?

How far do I have to go?

どこまで行かなきゃいけないの?

And would that take the storm away

逃げれば嵐はなくなるの?

Or only make it grow?

それとも酷くなるだけ?

 

 

エルサの思考は、For the first time in forever Repriseにあるように「Stay away and you'll be safe from me」という距離を置きさえすれば自分の力は及ばなくなるはずというロジックに基づいています。この考えがエルサをノースマウンテンまで導いたわけですが、アレンデールの状況を穴から知らされた今はそれではダメと気づいているはず。

にも関わらずこのようにここで繰り返されることによって、もはや離れる以外に方法がないという思考に追い込まれている様子が伺えます。

 

I'm making my world colder

私は自分の世界を冷やし続けてる(犠牲にし続けてる)

How long can it survive

どこまで持ちこたえるかしら?

Is everyone in danger as long as I'm alive?

自分が生きてる限り みんなは危険に晒されるの?

 

エルサは孤独を選択し続けることで、自分を犠牲にし続けながら、みんなを危険にさらさないようにして来た「つもり」です。それもかなり限界にきていることがこの部分から伺えます。同時にそれでも解決にならないことに直面して、「Is everyone is in danger as long as I'm alive」と歌うのです。もはや自分の死しか解決策はないのか、と。

 

Was I a monster from the start?

私は生まれつきモンスターだったの?

How did I end up with this frozen heart?

どうしてこの凍りついた心になってしまったの?

Bringing destruction to the stage

世界に破壊をもたらし

Caught in a war that I never meant to wage

関与する予定のなかった争いに巻き込まれて

Do I kill a monster?

モンスターは私自身で殺すしかないの?

 

「Was I a monster from a start?」や「Caught in a war that I never meant to wage」に現れているように、エルサ自身モンスターとして生まれた覚えもなければ、こんな戦いを起こしたくもなかったことがはっきり言及されています。彼女が「モンスターに仕立て上げられた」こと、そしてそれがどれほど彼女を苦しめているかが強調され、曲を聴くために心が痛むフレーズです。

そして極め付けの「Do I kill the monster?」もはやモンスターは自分で殺害するしかないのか、と。つまりこの時点では自死も選択肢にあると。

 

Father

お父様

You know what's best for me

私にとっての最善を知ってるはずよね

If I die, will they be free?

私が死ねば、みんなは自由になるの?

Mother

お母様

What if after I'm gone

もしも私が逝った後

The cold gets colder and storm rages on?

寒さはさらに増して、嵐が強くなってしまったら?

 

父王アグナルの教えを守ったためにこれほど苦しめられてきたにも関わらず、まだ出て来る「お父様」。エルサには他にすがるものがないことが強調されます。

この部分のメロディは最初に起こった事故の夜、Hidden Folksトロール)たちのアドバイスを聞いた父アグナル王のエルサ隔離宣言とそれに反対する母イデュナの二人に対するエルサの語りかけとして Pre-Prise(メイン楽曲の登場前に同じフレーズを歌うこと)されています。詳しくはの記事参照。

ikyosuke.hatenablog.com

 

[Elsa]

Mother,  it probably has to be

お母様、多分こうしなきゃいけないのよ

What's best for her is best for me

アナにとって最善の選択は 私にとっても最善な選択

Father, I'll do as you say

お父様、言われた通りにします

 

[King Agnarr]

We'll help you to control it, I know we'll find a way

魔法をコントロールできるようになるため助けるから 方法は見つけられるはず

 

 [Anna]

<意識を取り戻したアナが起き上がる>

"Mommy?"

ママ?

 

[Queen Iduna]

Only until we gain more answers in hand 

We'll find a way back

(こうして離れ離れになるのも)他の答えが見つかるまでのこと

なんとかして方法を探さなきゃ

 

[King Agnarr & Queen Iduna]

to be a family again

私たちが再び「家族」になれるように

 

母への語りかけの後エルサはすぐに首を横に振ります。まだどこかにいるはずのアナのことが頭をよぎったのでしょうか。  

 

No, I have to stay alive to fix what I've done

ダメよ、私は生き続けて 自分のしでかしたことを解決しなきゃ

Save the world from myself

私自身から世界を救うの

And bring back the sun

そして太陽を取り戻すの

 

 ここが実にカッコ良い。エルサは自分の手によって危険にさらされた世界を自分で救わねばと決意するのです。ヴィランでもありヒロインでもあるエルサならではの心境。

そして bring back the sun はこの世界のあるべき姿であるオープニングナンバー Let the sun shine on に呼応しています。

 

[Elsa (Men) ] 

If I'm a monster (End this winter)

もし私がモンスターなら

And it's true (Bring back summer)

そしてそれが真実なら

There's only one thing that's left me to do (Keep your guard up)

私に残されたすべきことはたった一つ

But before I fade to white (End this winter, Bring back summer)

でも自分が真っ白になる前に

I'll do all that I can to make things right (Keep your guard up)

自体を戻すためにできることはなんでもやるわ

 

白は死を意味するのだと考えられます。根拠としては、ラストの凍りつくアナの演出が挙げられます。映画では真っ青に凍りますが、部隊では真っ白になります。また、吹雪のシーンではアンサンブルが真っ白のコートを身につけて、4人の主人公たちを分断する吹雪を表現しています。 

 

I cannot be a monster

モンスターになんてなれない

I will not be a monster

モンスターになんてならないわ

Not tonight!  (Monster!)

今夜は!

 

曲の終了後、エルサは一同に対して、

 

[Elsa] 

I surrender, take me to the princess Anna.
降伏するわ。アナ王女の元に連れて行きなさい。

 

と、降伏しているにも関わらず女王として命令するという、少し理解しにくい状況ではありますが、アナと話をする決心をしたことが見受けられます。

ハンスはアナがまだ戻っていないことを伝えますが、城でクリストフといることを見ているエルサから状況を聞いたハンスは、「なんだと?王女が山男といるのか?」と憤ったような態度で怒鳴ります。
決して笑うシーンではないのですが、ハンスとクリストフの関係を考えるとつい笑ってしまいそうになります。

 

楽曲リストはこちら。