westergaard 作品分析

映画、ミュージカル、音楽、自分が好きなものを分析して語ります。

Broadway Frozenから Frozen II を予想するヒントを読み解く(2/19追記)

[2/19 追記 赤字で記入済み]

はじめに

 


Frozen 2 | Official Teaser Trailer

米国では今週Ralph Breaks the Internet のストリーミングが始まったので、それをじっくり分析しようと思っていたら、それに手をつけ始めた朝にFrozen IIのティザートレイラーが出るし、今朝は今度はToyStory4の本編映像の30秒前出しがGMAであったおかげでそっちに気を取られ、これだけ愛するコンテンツの考えなきゃいけないことであふれていて本当にうれしい悲鳴なのですが、いかんせん私もこれだけやっているわけではないので手が回り切らない笑

となっているわけなのですが、今回はFrozen IIの予告編を見ていろいろな方が展開の予想や妄想を繰り広げている中で私が目について面白いなと思ったものを紹介しつつ、それをBroadway版の追加・変更要素と付き合わせて考えた時にどうかという考察をしてみようと思います。

 

用語定義

いつも短く書こうと思いつつも誤解のないように丁寧に説明し始めつい長くなってしまうので、少しでも文字数を減らそうということで略語を定義しておきます。私のツイート(@westergaard2319)やこのブログをいろいろご覧になっている方は「ブローズン」はすでにお分かりと思いますが、整理します。

【F1(または「映画版」「アニメ版」)】(F2がでたのでこうする):Frozen:2013年公開の映画(公開年は米国に合わせるので2013ということで。)

【アナ雪】:アナと雪の女王:私がこの用語を使うときは「吹替版」のそれを指す。基本的に私は、吹替版と原語版を別物として扱う。なぜなら吹替版はあくまで吹き替えの訳をつけた人の解釈が反映され、さらに日本語でしか表せないニュアンスが含まれている時点で原語版そのものの日本語バージョンと捉えることはできないと考えるから。

【DCAフローズン】:Frozen: Live at the HyperionアナハイムにあるDisneyland ResortにあるDisney California Adventure のハイピリオンシアターで2016年5月より行われている映画により忠実で全長約60分という短縮版のミュージカル形式のショー。Frozenの監督で脚本家のジェニファー・リー、作曲のロペス夫妻も関わっているが、基本的に新曲はない。新たに追加されたアレンジや、既存の曲を別の形で利用している部分はある)

【ブローズン(または「舞台版」)】:Frozen: the Broadway Musical (2018年3月よりブロードウェイSt.James Theaterで上演している映画版Frozenをベースに、Frozenの監督で脚本家のジェニファー・リーが脚本に、作曲のロペス夫妻は新曲を作曲という形で関わっている。DCAフローズンと制作期間は被っていると思われるも公開はこちらの方が後であり、DCAはむしろブローズンと差別化されているはずである。)

【F2】:Frozen II:2019年公開予定の続編

 

※ちなみに私は恐れ多くも「OUAT」ことOnce Upon a Timeシリーズは全く見ていないのでこれについては言及できないです。また、「DCLフローズン」ことDCLディズニークルーズラインのワンダー号で2016年11月から上映中の映画に忠実なミュージカルショーも見たことがないので言及できませんが、@1cVam (twitter)  さんのレポートを見る限りではDCA版とほぼ同じ台本でほぼ同じ演出のようです。上演時間や公開時期がほぼ同じなことからもそれは納得がいきます。

 

記事の構造

@moonboat_srさんがツイートされた、3つの予想と希望について紹介しながら、それを切り口に、

  1. <エルサの魔法>と<オラフ>
  2. <イデュナ女王>と<トロール
  3. <アナ>と<魔法>
  4. <エルサ>と<両親>
  5. <オーロラ>と<“The Sky Is Awake”(お空が起きてる)>

の5つの観点から、F1とブローズンを横断的に分析しながら、考察していきます。ブローズンを20回以上観劇しているからこそわかる私の視点を踏まえ、F2についていろんな想像や妄想を巡らせる姉妹ファンにとって少しでもヒントになればと思います。

 

*注意*

この記事は非常に長いです。が、ブローズンを見たことない方にも理解していただけるように詳細に記述しておりますので、どなたでもお楽しみいただけるようにしているつもりです。

 

@moonboat_sr さんの予想・希望

@moonboat_srさんは本記事を執筆し始めたアメリ東海岸時間2月16日までに大きく分けて3度ほどの予想・希望を投稿されています。

今回扱うのは2つ目の予想「予想(改)」と3つ目の「希望」というもの。
ちなみに1つ目の「予想」を要約すると次のようでした。 

@moonboat_sr さんの「予想」(1つ目) 

エルサたちは、未来を変えたいために過去を書き換えたい「なにか」に巻き込まれ、まだアレンデールが建国される前の太古の北欧へタイムスリップし、大昔のアレンデリアン(アレンデール国民)になる人たち(新キャラ)に出会いながら過去を冒険することになる。
過去を変えれば未来が変わる、というところから、エルサが魔法を持たなければ姉妹は引き裂かれず、その解決法を見つけるべく旅立った両親も事故にあってなくならないだろうという選択肢を前にする姉妹。しかしアナが魔法を持った今のエルサを愛するため、孤独に苦しむ13年を選択する。結果1作目で起こった通りのことが全て起こり、再び世界は凍り、同じ結末が巡ってくる。

(尚このプロットは、公開されているツイートに加えご本人から直接補足していただいたものをもとに私がまとめています。)

このバージョンもとっても観てみたいですね。
人生が繰り返し、外部からの影響で変わったり、未来を変えるために過去を変えようとするというところが、アナの声優クリステン・ベルが主演しているテレビドラマ「The Good Place」みたいでとっても面白そうに感じます。

が、今はこちらには深く触れずに二つ目へ。後ほどこの予想についても言及します。

 

<エルサの魔法> と <オラフ>

ここから本題です。 

@moonboat_sr さんの「予想(改)」(2つ目) 

テーマは「命」になるのではないかという予想。
その理由はエルサの魔法は雪や氷を操るだけでなく、オラフやマシュマロウ、スノーギースなどの「命」を生み出す部分こそがすごいから、とのこと。

そしてこのツイートです。

実は、オラフが「エルサとアナの一部分ずつ」であることは実際ブローズンでオラフをつくるシーンの曲になっています。それもタイトルになっています。

「A Little Bit of You」

[Elsa]
"You know, there's a recipe to making a proper snowman"
あのね、 雪だるまを作るのには '正しい' やり方があるの

というエルサのセリフをきっかけに始まるこの曲。

[Elsa]
A little bit of you, a little bit of me
アナのひとかけと私のひとかけ

(中略)

[Anna]
A little like me, a little like you
私にちょっとにてて、エルサにもちょっと似てる

(中略)

[Both]
He'll love warm hugs and the bright sunlight
あったかいハグと明るい陽の光が大好きで 

[Anna]
And he'll really love the summer
夏がとっても大好き 

[Elsa]
But he'll melt!
でも溶けちゃうわ!

[Anna]
Yeah, you're right
あぁ、そっか。 

"Oh!" So we'll build him back together
あ! 溶けたら一緒に作り直そうよ

[Elsa]
Yes, together, that's the key!
そう、一緒に、それが大事ね! 

[Both]
'Cause he's a little bit of you and me
だってこの子は、私たち二人のひとかけずつだもん

 

ikyosuke.hatenablog.com

歌詞の全文と和訳、さらに詳しい解釈・解説はこちらの記事参照していただくとして、まさにこのツイートの内容が歌詞になって現れていることがお分かりいただけると思います。

なぜこの曲がブローズンにあるかといえば、実はF1と描写が大きく異なる部分があることが関係していると思っています。

それはニンジンです。

F1では雪だるまを作るのがエルサ、ニンジンを挿すのがアナで、それによって完璧になるのです。ニンジンをアナにさしてもらった後の「now. I'm perfect」というオラフの発言からもあるように。

しかしブローズンで、あの事故の夜に姉妹が作るオラフは正確にはいわゆる「雪だるま」ではありません。ご存知の方はいらっしゃると思いますが、エルサとアナのそれぞれのおもちゃ箱からボールや太鼓、ボートそして顔のついたニット帽を取り出してきて、それを組み合わせて雪だるまの形にします。そしてそこにエルサが魔法をかけることで、そのおもちゃでできた「雪だるま」の手が動くという風に改変されています。


これが劇場で販売されているそのオラフのレプリカで、ネットで購入することもできます。お尻の部分はまるでピクサーボールのようです。なぜこのデザインなのかはよくわかりません。

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www.playbillstore.com

 

もちろんこの改変は雪だるまを作るというのを舞台上で再現しにくいという技術的な制約も関わっていると思いますが、このシーンは本物の雪だるまでなくても代用できるということを公式が示しているというのが重要な点です。そしてエルサの魔法で大切なのは命を宿すこと、動かすことなんです。

ここで再び @moonboat_sr さんのツイートです。

確実に言えることは...

以上見てきたように、

  1. エルサの魔法がすごいのは「命」を宿すこと
  2. オラフはエルサとアナの一部分ずつ
  3. オラフはいつかは溶けてしまうけど二人でbuilt backすることができる、すなわち「繰り返す」あるいは「やり直せる」

これら@moonboat_srさんの解釈は全て「A Little Bit of You」の中に含まれていることがわかります。 

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また、先ほどスルーしてしまった一つ目の予想に登場した、アナが魔法を持っている今のエルサが好きであることも実はこの歌のなかではっきり示されます。

でもその前に一つ説明すべきことがありました。ブローズンでは「Do You Want to Build a Snowman」は劇の冒頭「Vuelie」の直後に一度プリプライズの形で歌われるのです。幕が開いて最初は幼少期姉妹が二人で「Do You Want to Build a Snowman」を歌うところから始まるのです。

そこについては是非こちらをご確認ください。詳しく描写しております。

ikyosuke.hatenablog.com

とにかくその冒頭のプリプライズ部分で、「じゃあ今夜寝る前に雪だるま作ろうね」とエルサがアナに約束し、アナが大喜びするところでオープニングナンバー「Let the Sun Shine On」が始まるという形で舞台が幕を開けます。

さて、時間は「A Little Bit of You」に戻してきます。おもちゃでできた「雪だるま」を作ってアナが「オラフ」となづけ「And I love warm hug」のくだりをエルサがオラフ声で言います。もともとアナとの約束は雪だるまを作ることだったので、約束を果たしたエルサは眠りにつこうとします。

[Elsa]
"Okay, time for bed!"
さぁ寝る時間よ! 

[Anna]
"What? No! Time for more magic, please and thank you!"
え?ダメ!もっと魔法を見せてくれるんでしょ、お願い!

[Elsa]
"Anna, you know I'm not supposed to even be doing this!"
アナ、こんなことだってしちゃいけないことだってわかってるでしょ!

[Anna]
"But your magic is the most beautiful, wonderful, perfectful thing in the whole wide world!"
でもエルサの魔法は、広い世界で一番キレイで、ステキで、完璧なんだよ!  

[Elsa]
"Do you really think so?"
本当にそう思うの? 

[Anna]
"Yes! So do it, please, before I burst from inside to outside!"
うん!だからやってよ!早くしないと爆発しちゃうよ! 

[Elsa]
"Okay, okay, don't burst!"
わかった、わかったって。落ち着いて!

ここからアナの魔法への要求がエスカレートして、あの事故へ至ってしまいこの曲が終わります。サントラでこの曲を再生するたびに心が痛みます。。。

「でもエルサの魔法は、広い世界で一番キレイで、ステキで、完璧なんだよ!」 ですって。これはもうアナのエルサへの愛の告白なんではないでしょうか。これを言われた後のエルサの顔の嬉しそうな表情を子役エルサたちがしっかり再現してくれています。喜ぶアナをみて嬉しくなってどんどんやってしまうエルサというのは映画と同じように描かれています。

このような点からも、ブローズンを反映するとしたら@moonboat_sr さんの一つ目の予想のアナのエルサに対する認識は対応していると見ることができます。

 

<姉妹の母:イデュナ女王> と <トロール

つづいてお母様イデュナ女王の話題へ。これ、この記事のメインディッシュです。

まず @moonboat_sr さんはツイートの中で、ティザートレーラーの中盤に登場した謎の新キャラクターの少女について、イデュナの幼少期かもしれないし そうでなくてもイデュナさんの出身族の一人ではないかという予想をしています。

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この辺りは事実確認が難しいのですが、ヒントになりそうなブローズンで追加された要素を確認していきましょう。

まずオープニングナンバー「Let the Sun Shine On」に早速ヒントが二つあります。

1)「some things we can't do in public」

「Let the Sun Shine On」はオープニングナンバーなのでアンサンブルのパートが語りとして説明をしている部分が冒頭に設けられています。

[Ensemble]
Elsa was a special child / From her first frozen tear
Her magic filled her parents' hearts / With so much love and fear
エルサは特別な子だった / 最初に流した凍った涙から
両親の心は彼女に対する愛と恐れであふれていた

[Queen Iduna]
"Elsa, no! What did we say?"
「エルサ、ダメよ!約束したでしょ?」

[Elsa]
"Magic must stay secret"
「魔法は秘密にしてなきゃいけない」

[Queen Iduna]
"And there's just some things we can't do in public"
私たちには人前ではやっていけないことがあるのよ

[Anna]
"Like, run naked in the breeze"
「そよ風あびながら裸で走ることとかね!」

[Queen Iduna & King Agnarr & Elsa]
"Anna!"
「アナ!」

 

これは何がヒントかと言うと「there's just some things YOU can't do in public」でも成り立つはずです。当然サラッと聞き流してしまえば、「we」は「ロイヤルファミリー」を指し、ロイヤルとしてやってはいけないことがある、と言う風に読むことができましょう。しかし、これ以降のヒントをみていくと単にそれだけではない気がしてきます。
(もちろんアナは裸で走りまわっちゃダメだけど。笑) 

2)「A family with secrets to keep」

そして1度目のサビを挟んで、続く語りの部分でこのようにアンサンブルが付け加えます。

[Ensemble]
Once there was a family / With secrets to keep
As rulers in a land where / Respect for the crown runs deep
かつて隠すべき秘密(複数形)をもった家族がいた
王家への尊敬が深く浸透している王国の統治者として

こちらももしエルサのことだけでよければ「a secret」でも良いはずです。しかしわざわざ「secrets」と複数形になっております。これはエルサの魔法以外にも秘密がある可能性をほのめかしています。「we」と「secrets」は皆さんもサントラで確認できるのでぜひ耳を澄まして聴いてみてください。歌詞と和訳と描写はこちらの記事参照。

3)イデュナのペンダントとHidden Folks

「Let the Sun Shine On」を経て「A Little Bit of You」の最後に起きる事故。その直後、駆けつけてくるアグナル王とイデュナ女王。イデュナ女王は状況を察すると、追いかけてきて何か対応しようとする召使いたちを追い払うようアグナルに指示します。

窓を開け始めるイデュナ。アグナルはイデュナが何をしようとしているのかわからず尋ねると、「Hidden Folks を呼ばなくちゃ」とイデュナさん。開いている窓に向かって呪文を唱え始め(これをJoik:ヨイクと言うらしい)ると、イデュナさんの首についているペンダントが緑色に光り始めます。次の画像は公式のパンフレットより。

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アグナル王は何もできず、ただただ凍っていくアナをだいて戸惑っています。イデュナがヨイクを終わると、外には黄色く光る無数の目が。

ヨイクを終えた後、Hidden Folksが入ってくるのを待つ間、イデュナはエルサの手を取り、自分の胸についている緑色に光るペンダントに当てさせます。

二人だけ窓から姉妹の寝室に入ってきます。それがパビーとブルダです。画像の左がパビー、中央がブルダ。
(ちなみにオリジナルキャストのパビー役Timothy Hughesさんは2月17日を持ってFrozenを去られましたが、映画「グレイテスト・ショーマン」にサーカスのメンバーで出演していますので探してみてください。)

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ブローズンではトロールではなくHiddenFolksとなっているのはアニメチックな可愛いキャラクターではなく、より神秘的な生物として描きたいからなのでしょうか。尻尾が生えていて、眉が濃くつながっており、イデュナさんのペンダントと同じようなクリスタルを胸に1つ〜複数つけてます

入ってきたパビーはイデュナにこう言います。

パビー:「A Queen who knows our call?」(私たちの呼び方を知っている女王か?)

イデュナ:「I'm a child of Northern Nomads*」(私は北方遊牧民の子どもよ【※Frozen Jr.という米国の学校向けの短縮版ブローズンの台本で答え合わせができました。その台本はコピーライト的に貼るとまずそうなので、リンクを置いておきます。この台本の17ページに掲載されています。なおこの台本とブローズンは言い回しやセリフを言うキャラクターなど大きく異なる部分も多いですが単語レベルでは参照して良さそうです。)】

issuu.com

ブルダ:「Now you're Queen. Good for you.
それが今じゃアレンデールの女王様? やるじゃないの(ここで大体会場ウケる))

イデュナ:「Our daughter is hurt.」
(娘が傷を負ったの)

で、この魔法は生まれつきか?というあの映画の会話に入っていきます。

ではこのシーンを映画と比較します。F1では、魔法を受けたエルサに対し即座にに対応するのはアグナル王。彼が図書室へ行って古くから伝わると思われる資料を取り出してきてそこに挟まっている地図を持ち出し、馬でトロールのいるリビングロックの谷へ向かうということになっています。

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ではなぜ、わざわざイデュナさんが「Northern Nomads:北方遊牧民」の子孫であることを告げるのか、そしてなぜイデュナは「Hidden Folks」たちが持っているのと同じ光クリスタルのペンダントを持っているのか。なぜエルサに触らせるのか。そしてなぜ彼らを呼ぶことのできる呪文を知っているのか。これらの設定はF1からわざわざ変更・追加されているわけです。

 

ここで @moonboat_sr さんのツイートの続きを見てみます。 

これらは非常にブローズンにおけるイデュナさんの描かれ方と合致しているように思えます。北方遊牧民の子孫であると言うことは「人」ではありそうです。しかし、少なくとも「自然とより近しい民族」であることは確かになりました。

もちろんF2はブローズンの続きではなくあくまでF1の続きですので、F2であらためて描写が必要になる点は多いと思いますが、ジェニファー・リー監督やロペス夫妻がわざわざこのように脚本を変え、この呪文を唱える時の新曲(これはCDに入っていないので劇場でしか聴けない)を用意していることからも、十分にF2へ入れる要素と関連している可能性はあるはずです。

ちなみにエルサのアイスパレスを訪れて、For the First Time in Forever Repriseの最後で心に魔法をくらってしまったアナの髪の毛が白くなっていることに気づいたクリストフは、イデュナが使ったのと同じ呪文を唱えて、「HIdden Folks」を呼び、「Fixer Upper」のシーンが始まります。(映画と異なり、クリストフは幼少期のアナの治癒を目撃しているわけではないので、多分僕の「家族」が助けてくれるはずだ、といって穴を連れて行きます。そして「パビーが直したのみたことある」と言うのはブルダが言います。)

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「Hidden Folks」とクリストフの関わりについては、映画とまた少しだけ変えられていて、それはパビーたちがアナの魔法を取り除くシーンが寝室で行われるため、幼少期クリストフが目撃するというシーンがないためです。パビーがアナの魔法を取り除いてさって行く時、ブルダがこういうのです。

ブルダ:「Call on us anytime. We love children. Raised a few strange ourselves」
(いつでも頼りにしてね。子どものこと大好きなの。2、3人血縁のない子を私たちで育てたことあるの。)

と。もちろん映画の時系列であればこの時点で、クリストフについて「raised」と過去形になっているのはおかしいです。しかし、クリストフの年齢は舞台では明かされていないこと、またクリストフがアナを治癒してもらいに行く時アナに「自分とスヴェンが他に頼る人がいなくなった時、拾ってくれたんだ」とHidden Folksのことについて説明をします。そして、ブローズンでは他に幼少期クリストフの描写がないことから、この「a few strange (childrenが省略されている)」のなかにクリストフが含まれているという解釈がいちばん都合が良さそうです。そのように考えると、クリストフのように Hidden Folks に育てられた子どもたちは Hidden Folksを呼ぶ呪文を知っている可能性が高いです。

 

と思っていたのですが!この記事の下書き段階を共有しながら @moonboat_sr さんと議論をした翌日 2月17日にクリストフ、オラフ、ハンス、パビーのオリジナルキャスト最終公演を観に行った際に、私が今まで気づいていなかった些細な演技に目が止まりました。

 

4)イデュナと手袋

先ほど紹介した、「Let the Sun Shine On」の一節、「Once there was a family / With secrets to keep」が歌われる時、イデュナはアグナル王と肩を寄せ合いながら、手袋を抑えています。ここまで書き忘れておりましたが、イデュナは登場時から手袋をしていて、それを事故後にエルサの手につけさせます。 

手袋といえば、F1ではハンスも手袋をしており、アナを裏切るときだけ手袋を外すという描写から、「手袋=秘密」というセオリーがフローズンファンには一般に浸透していると思われます。しかし、ブローズンのハンスは手袋をしていません。このことからブローズンにおいて「手袋」というアイテムが重要になる登場人物はエルサとイデュナに絞られています。(例外として山登りするときのアナの手袋はありますが、それは実用性をもっての手袋ということで加味しません。)

そして、Do You Want to Build a Snowman」で再び登場するときイデュナは別の手袋をつけていることに気づきました。

 

さらに掘り返すと、事故後にエルサがパビーによって未来を見せられ「自分のことを人々がモンスターを見つめる目で睨んでくる」と歌う際に、イデュナは手袋をした自分の両手を見つめながら眉をひそめて首を横に振ります。

ほかにも、「Do You Want to Build a Snowman」曲中にアグナル国王がエルサに「Conceal, Don't feel」を教えるときや「There will come a day you have to stand before your people without them」(手袋を外して国民の前に立たねばならない日(=戴冠式)がくるんだぞ)と言うときなど事あるごとに手袋をした自分の手を気にしている演技をしていることに気がつきました。

どうしても舞台だと映画と違って見る場所が多く、ついつい喋っている登場人物ばかり目で追ってしまうため、この辺りは何度も見ていたにも関わらず見逃しておりました。

 

5)イデュナはクリストフ同様トロール(ないしHidden Folks)に育てられた?

私はてっきり「Call on us anytime. We love children. Raised a few strange ourselves」の「a few strays ourselves」はクリストフについての説明だと思っていましたが、 @moonboat_sr さんからこれにイデュナが含まれるのでは、と言われました。それを頭において舞台を観に行くと、それが多いにありえそうだということにある演技から気づきました。

このセリフを言うときブルダはイデュナの手を取って言っており、言い終わった後にイデュナは微笑んで「Thank you.」と言います。

その直後、間髪入れずに、アグナルの方へ振り返って「She can learn to control it. I'm sure of it.」(この子なら必ず制御できるようになるはず。絶対よ。)

アグナルが「Give me your gloves. Put these on Elsa.(略)」という流れになります。

ブルダとの会話の直後に、イデュナはエルサが魔法をコントロールできるようになる、と言い切れるわけです。

確実に言えることをまとめると...

  1. イデュナさんが何らかの形で、パビーたち Hidden Folks に関係がある(クリスタルのペンダントを持っている、呪文を知っている)
  2. 少なくともその先祖である「Northern Nomads」のことは Hidden Folks たちは認識している
  3. イデュナはもともと王族ではなく北方遊牧民の子孫であるため、Hidden FolksでさえアレンデールのQueenになるとは思っていなかった=どこかの段階でアグナルに嫁ぐことでアレンデール王家に入っている(ただし少なくとも人である)
  4. Hidden Folks は複数人の血縁のない(おそらく人間の)子どもを育てており、その子どもの一人であるクリストフはイデュナ同様呪文を知っている

    <ここまでが言語化されている、あるいは視覚的に表されていること。
    これ以降ははっきりと言及されないが、ほのめかされること。>
  5. イデュナはブルダたちHidden Folksに育てられた可能性が高い(「Raised a few strays ourselves」)
  6. イデュナは魔法を使える可能性が高い(常につけている手袋、エルサの魔法についてアグナルのとる行動に対する反応、コントロールできるようになると言い切る発言)
  7. イデュナがつけているペンダントは何らかの魔法を抑える機能がありそう(事故直後のエルサに触れさせる)
  8. しかしペンダントはイデュナの魔法専用である可能性がある(エルサの魔法がそれで完全に抑えられるならそれを譲渡すれば良いはずだが、エルサには譲渡されない)
  9. 唱えているのがJoikであることやノルウェーの北方遊牧民であることから、サーミである可能性が高い
  10. クリストフもこのJoikを知っていて、サーミはトナカイを遊牧するのでクリストフも同じ北方遊牧民出身だった可能性がある
  11. さらにブローズンの舞台を囲っている柱には、トナカイと雪の結晶の象形文字?のような模様が彫られていることもわかっています。(画像参照)これらはFrozenの世界観独自のものなのか、元の文化に関係しているのか、私にはわかりません。サーミの文化に詳しい方、ぜひご協力をお願いしいます。

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当然これらのことはあくまでブローズンではの話であって、例えばF1で登場したエルサとイデュナに共通して見られるブローチなどは一切登場していません。映画からブローズンになる過程でアグナルからいデュナに役割が変更された部分も、あくまで舞台版での話であり、これによって一昨目が改変されるわけではなく、何もはっきりとは言い切れません。ただし、脚本家と作曲家が同一で、続編の制作期間とかぶせて制作していた舞台版で、上記のような設定変更をわざわざ行っていることを元に考えると、@moonboat_sr さんのおっしゃるようにイデュナさんが何らかの形でトロールに関係していて、魔法とも関連性がある可能性は非常に高いとみてよさそうでしょう。 

 

 

<アナ> と <魔法(magic)>

さて、今回のティザートレーラーのなかでもかなり諸説が飛び交っているのがこのショット。

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t.co

こちらがその記事からの引用。この記事を書かれた方は四季のシンボライズと予想しており、他の記事と異なっているのはそのうちの一つのパターンがアナの新しいドレスの裾に描かれているのをかなり早い段階で指摘していたこと。これは確かに重要そうです。 

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moonさんはさらに、エルサとアナの誕生日の設定がそれぞれ冬至夏至であることを踏まえ、アナのドレスにある模様が夏を表しているのではないかと予想。

左下については、一作目のあらゆるところで登場するエルサのおなじみの結晶に刻まれているダイヤ型から他にも多くの人がこれがエルサを表しているのではないかと予想されているようです。

アナに夏の魔力があるかどうか、「夏の女王」かどうかはわかりませんが、アナと魔法の関係についてはブローズンに少しだけヒントがあります。

まず一つ目は幼少期のドレスです。これははっきり見える写真がないのですが、幼少期のドレスの裾に、先ほどのポスターでは左上に位置している、丸としずくの形の模様の柄が刺繍されていることを発見しました。

これは、先ほどの記事で予想されていた、今回のティザーに登場するドレスの裾に刺繍されている柄とは異なるものです。

もちろんこれがどの程度関係してくるかはわかりませんが、この丸としずく以外の模様は一つも見つけることはできませんでした。特にイデュナの衣装にどれかひとつでもないか探したのですが、見つけられませんでした。カーテンコールの時の写真がありますので、イデュナさんのドレスが確認できる画像を貼っておきます。この画像の左にアナの衣装が写っていますが動画のキャプチャでブレていることもあり、詳細が確認できないです。

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(右からイデュナ、ブルダ、ウェーゼルトン公爵、クリストフ、ヤングアナ、アナ、エルサ 略)

 

ドレス以外に、アナと魔法の関係のヒントになる言及を確認していきます。

先ほどフィナーレ曲がLet It Goのリプライズであることは述べました。

ikyosuke.hatenablog.com

 

詳しくは是非サントラを聴きながらこの記事をお読みいただくのがベストなのですが、関係している部分だけを引っ張り出すとこのようになります。

[Elsa] 
There's so much I've longed to say
ずっと言いたかったことがたくさんあるの

[Anna]
Then say it all, beginning with today
なら言ってよ、今日から始めればいいのよ

[Elsa]
It's like a dream
まるで夢のよう
I thought could never be
現実になると思ってなかった 

[Anna] 
Elsa! You're free
エルサ!もう自由なんだよ

Let it go, let it go Show us what you can do
何ができるのか見せてよ

[Anna, Kristoff & Olaf] 
Let it go, let it go

[Elsa]
The magic one is you
魔法なのはアナ、あなたよ
'Cause here we stand
だってこうしてここに一緒に立ってる
In the light of day
陽の光の当たる中
Let the sun shine on
陽よ照らせ
I take this warmth within and sending up above
この内なる温もりを天高く送り上げ

[Elsa & Anna]
Goodbye to dark and fear let's fill this world with light and love
暗闇や恐怖には別れを告げて この世界を光と愛で溢れさせ

[Elsa, Anna, Kristoff & Olaf]
And here surrounded by a family at last
そしてようやくここで家族に囲まれて

[All] 
We never going back
決して戻らない
The past is in the past
すべては過ぎたこと

 

アナが元に戻り、世界が氷解し、クリストフがアナにキスを申し出て、アナがそれに応えてキスをし、ハンスを殴った段階でこの曲が始まるわけですが、その中でエルサはずっと夢見るのさえ危険(c.f. 「Dangerous to Dream」)と思っていたアナと一緒に過ごせる時間を手に入れます。言いたいことがたくさんあるというエルサに対し、「もう過去の辛かったことは忘れて(Let it go)、何ができるのか見せてよ(Show us what you can do)」と語りかける形で歌が始まるのです。

もうこの時点で顔面が洪水なのですが、エルサがそれに応えて言うのが「The magic one is you(魔法なのはあなたの方よ、アナ)」なのです。

初めてここでアナに対して「magic(魔法)」という言葉が使われます。

「magic」については実は映画と異なる言及があり、それは事故のあった夜パビーがアナの頭に直撃した魔法を取り除いた直後にエルサと交わす会話の中にあります。

 

F1では、「念のため記憶も取り除いた」と言うパビーに対してエルサは「私の魔法のこと忘れちゃうの?」と言います。ブローズンにはそのセリフはなく、代わりにエルサはこう言います。

エルサ:「Remove my magic, too. Please!」(私の魔法も取り除いて。お願い!)

パビー:「I'm sorry. But that's what I cannot do.」 (すまない。でも、それはできないんだ。)

エルサ:「…」

パビー:「Your power is a part of you.」(君の力は君の一部分なんだ。)

エルサ:「But I'm afraid of what I do.」(でも私、自分がなにをしちゃうか怖いの。)

パビー:「Close your eyes. Tell me what you see.」(目を瞑って、何が見えるか言ってみなさい。) 

ここから歌になります。(これはサントラに入っておらず劇場のみで聴けます。ちなみにこれは Monster のプリプライズに当たる部分。)

エルサ:

I see Arendelle, a winter night, people stare at me in fright.
(アレンデールが見える。冬の夜、みんなが私を怯える目で見つめてる

Angry crowds, jagged ice, terroring their eyes.
(怒る群衆、尖った氷、彼らの目を怯えさせる)

It's all because of me, and they look my way and see.... a monster....
(それは全部私のせい、彼らは私の方を見つめる、モンスターを見る目で。)

 

パビー:Then fear will be your enemy, and death its consequence.(恐れが敵となりそして死がもたらされるだろう。)

アグナル王:We will not let that happen, we'll protect her.(それは起こらないようにする、この子を守る。)

 

ここからわかることは、エルサのmagic が彼女の一部分であり、パビーに取り除けるものでないということ。そしてアナの心に刺さった氷に「An Act of True Love」という解決策があったのと異なり、他の解決方法も示されないのです。

しかし、魔法は取り除けなくても世界は氷解し、コントロールできるようになりました。ブローズンではそれが「アナと一緒」だったのが重要であることが視覚的に示されます。

エルサが公爵に「Monster」呼ばわりされて逃亡した直後、エルサは舞台の柱の部分を触ることで舞台(=世界)全体が凍っていきます。(次の画像は公式CMから。Disney BroadwayのYouTubeチャンネルでご覧になれます。)

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そしてアナが解けた後、オラフの「An act of love will thaw a frozen heart」というセリフにハッとしたエルサは「Love wil thaw. Of course, Love!」と言ってアナの手を取り、エルサが最初に凍らせてしまった柱の同じ場所を、アナと手をつないだ状態で触ります。すると世界が氷解していくのです。

アナはエルサとは異なり、いわゆる「魔法」は持っていないはずですが、このことからもアナの持つ愛の力がある種の「魔法」として描かれていて、さらにその後エルサが歌う「The magic one is you」によってそのことが言葉として言及される、と考えて良いでしょう。

そして舞台開始一年前のメインビジュアル公開時のキャッチフレーズは、「Love is a force of nature」というものでした。「magic」とこそ言っていないものの、「force」はF1の「Frozen Heart」でも示される重要キーワードであったようにほぼ「magic」と同義で使われていると思われますから、アナの持っている「magic」はそのあふれんばかりの「love」であると解釈できるかもしれません。

アナの魔法は夏の力なのか?愛の力なのか?それとも愛が夏を象徴しているのか?ティザーできているドレスの裾の紋章や、ブローズンの幼少期アナのドレスの紋章は、ポスターの紋章と関係があるのか。これらについては結論は出せませんが、アナがmagic oneであるとエルサが歌うのは、この文脈においては見逃せないポイントではないでしょうか。

 

<エルサ> と <両親>

 そして @moonboat_srさんが続けるのは再び両親の話。

 まず、新しい家族の形(未来)については以前自分がツイートしていたのでそれを引用します。 

ちなみに "True Love"はブローズンで追加されたアナのソロ曲。ハンスに裏切られて、一人部屋に残されてだんだん凍りついていくアナが自分の最期を悟りながら歌うバラード。

@moonboat_srさんがおっしゃる「2つの意味の『アンサー』」
  1. 何故こうなったのか(出生や魔力、両親の死の真実)
  2. 娘として「私たちが選んだこの道でいいのよね?パパとママは喜んでくれてる?」

これらにつながるヒントがブローズンにないか、少しずつ検証していきましょう。
ブローズンではエルサがF1よりも両親について気にしていることがはっきりわかる描写が多く追加されています。

 

先ほど紹介したシーンで、アグナルがイデュナの手袋をエルサにつけさせることは説明しました。

アグナル:「Put these on. Keep it (magic/power) inside.」

映画と同様に、王は召使いを減らし、エルサと他の人との接触を最小限に抑え、アナとも隔離すると宣言します。

ブローズンではそれに対しイデュナが反対します。

イデュナ:「No! They're sisters! We can't expect them to stay away from each other!」

ここから再び歌に。(これもサントラに入っておらず劇場のみ。またこれも Monster のプリプライズに当たる部分。)

[エルサ]
Mother, it's how it has to be 
(お母さま、きっとこうしなくちゃいけないのよ

What's best for her is best for me
(アナにとって最善の選択なら、それは私にとっての最善なの)
Father, I'll do as you say
(お父さま、言われた通りにするわ)

[アグナル]
We'll help you to control it, I know we'll find a way
(お母さま、きっとこうしなくちゃいけないのよ

[イデュナ]
Only until we gain more ansers in hand
(でも離れ離れになるのも、もっと別の答えが見つかるまでのことよ)
We'll find a way back
(一緒に方法を探しましょう)

[イデュナ&アグナル]
To be a family again

ここで四人は手を取り合おうとしますが、エルサはアナが差し出す手を握れずに走って去ってしまいます。

そしてDo You Want to Build a Snowman中に亡くなった両親は、フィナーレで舞台脇に再登場するDCAフローズンのとは異なり、カーテンコールまで2度と登場することはありません。しかし、エルサが度々「Father」「Mother」と呼びかけるかたちで言及されます。

まず、戴冠式を乗り切った直後。天井の方を見上げてエルサが笑顔で次のセリフを言います、

[エルサ]
Father, I did it! (無邪気に笑う)

曲としては Dagerous to Dream の最中。詳しくはこちら。

ikyosuke.hatenablog.com

 

つづいてエルサが両親について言及するシーンは、「Let It Go」。
ブローズンのうち公開されている数少ない本編映像にabcのThe VIEWという番組で放映された映像です。ちなみにこんなに各所全てで歓声があがることは稀です。おそらくテレビの演出なのではないでしょうか。

youtu.be

ここでは「Father」「Mother」と言う言葉こそないものの、「Heaven knows I tried」という歌詞があるのは皆さんもご存知かと思います。私はこの「Heaven」が両親を指していると解釈しています。

それは「Heaven Knows I tried」が枕詞となって、アグナルに仕込まれ劇中なんどもエルサが唱えるあのマントラ「Don't let them in, don't let them see, be the good girl you always have to be, Conceal, don't feel, don't let them know」が導かれるからです。がこれはF1の時点でも言えることでした。

ブローズンで加わったさらなるヒントは、エルサの衣装にありました。戴冠式エルサのあの衣装、ブローズンではアナの口によってはっきりイデュナが着ていたドレスだったことが明かされます。それに気づいた時の私のツイートがこちら。

「Let It Go」の終盤で、エルサが変身した時もともときていた戴冠式ドレスが消える件については、最近シュガラオでプリンセスに助けられたラルフがドレスを着た時、中の服が消えることとも関連して再び話題になりましたが。

ブローズンでは「Let It Go」の演出も異なる部分が多くあります。

まず、F1では最初のサビに入る直前の「Well now they know」で父アグナルからもらった手袋を飛ばし、最初の「Let it go」で有名なあの魔法を出しますが、ブローズン「Let It Go」ではサビの最初の「Let it go」でアグナルがつけさせた母イデュナの手袋を飛ばします。魔法はまだ使いません。

またF1では魔法を使い始めてすぐ「Can't hold it back anymore」でオラフwithoutニンジンを作りますが、ブローズンではその演出もありません。そして後ほど、オラフはニンジンまでついた状態でアナたちの元に現れます。これは「Let It Go」がF1の時系列と異なり、第一部の最後に移動されたことで、それよりも先にオラフが登場しなくてはならないことが関係していると思われます。

ただ、アレンデールの紋章の入った重たい長いマントをCold Never Botherd Me Anywayとともに吹き飛ばすところはF1もブローズンも同じです。

また、最後に変身するタイミングも「And I'm rise like a break of dawn」ではなくその手前の「Past is in the past」のあと最後のサビの「Let it go」の前の裏拍になっています。これは音楽的な盛り上がりと変身のタイミングを合わせることが関係しています。ここではほぼ必ず拍手が起こり「フォー」と歓声とともに会場全体が沸きます 笑。(Well, you know, this is broadway.)

さらに映画と異なるのはF1では「Past is in the past」で投げるティアラを投げません。これはブロードウェイショーの多くはマイクがウィッグについていることが関係していると思います。ただ髪の毛は一本三つ編みに手で直します。

つまりLet It Goが母イデュナから授かった「手袋」「ドレス」からの解放のように描かれている、ということが示されます。映画では父親に教わったマントラ「Conceal, Don't feel」からの解放が強調されますが、ブローズンでは衣装を通して母イデュナからの解放も描かれるのです。

つづいて、両親について言及があるのは、アイスパレスに訪ねてきたアナの心臓に魔法を直撃させてしまって混乱する中、ハンスたちが攻めてきてそれに応戦するシーンで歌われる「Monster」の最中。

 

ikyosuke.hatenablog.com

 

こちらがその一節。

 

[エルサ]
Was I a monster from the start?
私は生まれつきモンスターだったの?
How did I end up with this frozen heart?
どうしてこの凍りついた心になってしまったの?
Bringing destruction to the stage
世界に破壊をもたらし
Caught in a war that I never meant to wage
関与する予定のなかった争いに巻き込まれて
Do I kill a monster?
モンスターは私自身で殺すしかないの?

Father
お父様
You know what's best for me
私にとっての最善を知ってるはずよね
If I die, will they be free?
私が死ねば、みんなは自由になるの?

Mother
お母様
What if after I'm gone
もしも私が逝った後
The cold gets colder and storm rages on?
寒さはさらに増して、嵐が強くなってしまったら?

ここでまた上を向いて両親に語りかけます。この時エルサは地面に跪いて、両手を合わせてすがるように上(おそらく両親のいる「Heaven」)を見ます。

もちろん二人は亡くなっていて、答えてはくれません。エルサは自分で答えを出します。

No, I have to stay alive to fix what I've done

ダメよ、私は生き続けて 自分のしでかしたことを解決しなきゃ

Save the world from myself

私自身から世界を救うの

And bring back the sun

そして太陽を取り戻すの

これが彼女の出した答えで、実際にこれを成し遂げます。そう、アナと一緒に。「together that's the key」という「A Little Bit of You」で歌われた言葉が全てのアンサーだったのです。 

寄り道しすぎましたが、@moonboat_sr さんのおっしゃるエルサが両親に求める二つの「アンサー」に戻ります。

  • 何故こうなったのか(出生や魔力、両親の死の真実)
  • 娘として「私たちが選んだこの道でいいのよね?パパとママは喜んでくれてる?」

 

結局どちらもブローズンでは得ることはできていませんが、エルサとアナがそれぞれ自分が納得するかたちで見つけてそれに従い二人が手と手を取り合う(文字通り)ことで、凍りついた世界(と多分二人の関係性、と多分王家と国民の関係性)を解いていることがF1よりもわかりやすく描写されていることは確かであり、これらを加味すると、

こちらのツイートで@1cVam さんのおっしゃるような意味での両親との関係性についてはF2で改めては言及されないパターンも多いにあるのではないかと個人的には考えています。

*記事を書き終わった後の追記*

記事公開前に@moonboat_srさんご本人に確認させていただいたところ、2つ目のアンサーについては次のように説明されていました。「」内はご本人のお言葉です。

「エルサの『呪縛』」=「パパママとのわだかまり」が「まだ解けていないと言う意味」ではなく「フローズンフィーバー(エルサプ)で姉妹が離れていた13年間を埋めようとしていたり家族の思い出(オラアド)で両親亡き後姉妹で新しい『アレンデール』『家族』『伝統』をつくっていくということについて、娘として、国を担う者として両親がどう思っているか」のアンサーのことを指しておられたそうです。

さてF2ではどのように両親との関係性が描かれるのか。
楽しみですね。 

<オーロラ> と <「The Sky is Awake(お空が起きてる)」> 

@moonboat_sr さんの「希望」(3つ目) 

最後は「予想というよりは希望」とおっしゃっていたお話。「オーロラ」について。

私は北欧とオーロラの言い伝えについての知識は全くありませんので、F1とブローズンの作品におけるオーロラの役割を分析することで考えてみましょう。

F1とブローズンで共通・相違するオーロラ要素について

まずF1で初めてオーロラが映るのは、オープニングナンバー「Frozen Heart」の曲の最後です。

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ここからチルトダウン(カメラを垂直方向に下に振るカメラワークのこと)してアレンデール城が映され、そこから姉妹の寝室のショットへトランジションします。

オーロラを見上げる直前に Ice Harvester たちの歌う最後の歌詞が、吹き替えではひろわれていませんが、「Beware the Frozen Heart(氷の心に気をつけろ)」ですので、オーロラが不吉なことを予言しているという可能性は高いです。

ちなみにFrozen Heartは、「Cold」「Winrter」「Icy Force」「Frozen Heart」「Love」「Fear」「Beauty」「Let It Go」「Dangerous」「Magic」といった映画で重要になるキーワードがほぼすべて盛り込まれている恐ろしく良くできた歌詞になっています。残念ながら吹き替えばんだとその重要性が伝わらない訳詞になってしまっていて「あの歌だけ浮いてる」などという評価がされてしまっているのが残念なところです。
「Frozen Heart」の曲については、また改めて近々まとめようと思います。

 

一方ブローズンでは、唯一「Frozen Heart」だけがカットされています。(しかしFrozen Heartのメロディは、事故の時、アイスパレスで再び魔法を直撃させてしまう時、クライマックスシーンの「Colder By the Minute」で使われます。)

 

しかし「Frozen Heart」がカットされているからと行ってオーロラが出てこないわけではありません。

こちらが開演前の舞台の様子です。幕に緑と青を主としたオーロラが投影されていて、キラキラとオーロラがたなびくのに合わせて音が鳴り響きます。
(ブロードウェイの舞台では基本的に開演前、幕間、カーテンコール開始後のみ撮影が可能です。)

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F1で Ice Harvester たちが「Beware the Frozen Heart」と歌いながら見上げるオーロラと形も色も似ていることがよくわかります。

またブローズンもF1同様、Let the Sun Shine Onが終わってベッドに入った後、召使いや両親が部屋をさると、アナがエルサを起こしに行って「Sky is awake, and I'm awake, so we have to play.(お空も起きてるし、わたしもおきてる、遊ばなきゃ)」という台詞を言います。 

次にF1でオーロラが登場するのは事故の後、アグナル王が姉妹を連れてトロールの住むリビングロックの谷を訪れた時です。これも緑色を基調としています。

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オーロラが画面に初めて映るのはこのショット。続くワイドショットでははっきりとオーロラが背景にあるのが確認できます。

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心に魔法が直撃した後クリストフに連れられてリビングロックの谷を訪れる時にも同じようにオーロラが出ていることからトロールとオーロラになんらかの関係があることは確かそうです。

パビーがエルサに未来を見せるときもオーロラではありませんが似たような光を操っているように見えます。

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続いて「Let It Go」の夜にオーロラが出ていたかどうかについて。

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結論から言うとF1では「見えて」ませんが、ブローズンでは「見えて」います。出ていてもエルサの起こした雪雲のせいで隠れていて見えていないだけという可能性が否めないからです。

また、ブローズンの「Let It Go」は、先程のクリップでは微かにしか見えませんが、青白いオーロラが背景に映像として写っていることが確認できると思います。

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続いて、F1で最後に登場するオーロラはトロールのいるリビングロックの谷へ向かうシーン。

ここでオーロラは、冒頭のFrozen Heart以来にはっきり全面画面に映し出されます。
このシーンの直前は再びアナを傷つけてしまったエルサが取り乱しているシーンで、そこからクロスディゾルブ(前の映像を残しながら次の映像へ徐々に変わっていくトランジションのこと)で転換します。クロスディゾルブは前の映像と後の映像の関連性を印象付けるために使われるトランジションでストレートカット(パッと次の画面に切り替わる)が多いF1では珍しいです。(本編全体での回数は数えていない。数えたら追記する。)

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このオーロラのショットからチルトダウン(またですよ!また!)してオラフがスヴェンに話しかけます。それが「Look, Sven. The sky is awake.」。

ブローズンではF1と異なり、この2回目の「sky is awake」は登場しません。 つまりブローズンでは「the sky is awake」は繰り返されず、アナが事故の夜に、エルサを遊びに誘うときに言う一回のみです。

ここから「Fixer Upper」 のシーンまで。こちらは映画では基本的にずっと青緑色のオーロラが背景に登場していて、「Fixer Upper」の途中でピンクが登場します。

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ピンクのオーロラ初めて映されるのは「His isolation is confirmation of his desperation for human hugs」(彼が独りでいるのは人間のハグを諦めていることの証拠)と言う歌詞にアナが反応するリバースショットから。

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ここからピンクのオーロラはしばらく出ていて、ブルダがアナに語りかけるシーンでもピンクと青緑のものが確認できます。

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歌の終盤は再び緑だけに戻りますが、歌が終わってアナが倒れた途端にオーロラがすべて消えます。

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このことからF1においては、

  1. 緑と青のオーロラはエルサの魔法・不吉な予兆を表している可
  2. ピンクのオーロラは愛あるいはアナの象徴である可能性

が指摘できます。一方で、曲が終わった瞬間にオーロラが消えることから、メタファーとしての要素だけでなく、ビジュアル的な演出の一部としての要素である可能性も否定しきれません。不吉なことの予兆であれば、もっとオーロラが光っても良いと思われます。

この点ブローズンが大きく違うのは、F1よりも多くの場面でオーロラが登場し、さらに場面によってオーロラの色が変わっていくことが挙げられます。

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基本的にブローズンの写真はないので私の記憶でしか語れませんが、Fixer Upperのシーンでは、緑と青を基調としたオーロラから始まり、ブルダがアナに語りかけるシーンの「Thraw a little love their way」のあたりで黄色いオーロラが現れ始めます。そこからしばらくは青・緑に黄色が加わっています。

さらに歌の途中で(ブローズン版にしかない)ダンスパートに入ると赤と青のオーロラも光り始めます。これらの色のオーロラは他に登場しないので、映画のそれと同じように、メタファーとしての意味はあまりないビジュアル的な演出の一環と私は解釈してます。上の写真はダンスパートですが、青と赤の光が見えにくくなっています。

この後パビーが心の魔法は取り除くのが難しいと語るシーンでF1とは異なるセリフが言われます。

「The heart is not easiy let go of its pain」(心から痛みを解き放たせるのは難しい)
ここで「Let go」が出てくるんですね。ここで映画とは異なりクリストフがとりあえずやってみてくれと頼み、パビーが魔法を取り除こうとしている間にクリストフが自分の心の中にアナのことを想う気持ちがあることに気づいた心境を吐露するナンバーが挟まれます(「Kristoff Lullaby」)。その最中も背景には緑・青・黄のオーロラが映されています。

しかしやはりパビーの力では魔法は取り除けず、「Only an act of true love will thaw a frozen heart」という下りになり、ハンスのいると思われるアレンデール城へ一行は向かいます。

そこから今度はアナを探しにエルサの城へ向かうハンス一行のシーンへ。

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F1で最後にオーロラが出てくるのはFixer Upperのシーンですが、ブローズンではその後のシーンにもオーロラが確認できます。最後にオーロラが出ているのは、ハンスたちがアイスパレスに向かうシーンの背景。こちらが公式の画像。ハンスの後ろにいる赤い服がウェーゼルトン公爵とその部下たち。そして後ろにアレンデールの国民の男性たちも続きます。後ろに出ているオーロラはまた青白く、Let It Goの背景で出ていたのと近いものに見えます。

このあとエルサが襲われることを考えれば、不吉なことが起こる予兆としてのオーロラという解釈は十分に当てはまりそうです。

ちなみに映画では明け方の黄色い空になっていました。 

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ブローズンのオーロラの色 と F1の氷の色

ここにきてブローズンにおけるオーロラが、F1におけるエルサの作り出す氷の色と似たような意味合いを持っている可能性が指摘できます。

F1では多くの人がすでに指摘しているようにエルサの出す魔法の氷の色がエルサの心境を反映しています。

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Let It Goで青々としていた氷は、アナを再び傷つけしまったところで少し水色に近くなり、赤みを帯びている部分も出てきます。その後取り乱すエルサの周りはどんどん赤くなり、トゲも生えてきます。公爵の部下たちが攻めてくると黄色になります。
黄色については、オラフが初登場シーンで色について言及していて「How about yellow? No, not yellow. Snow and yellow? No go.」と。黄色がよくない色であることがはっきり示されます。

この氷の色の変化はブローズンではほぼ再現されません。ほぼというのは、「For the First Time in Forever Reprise」でだんだんパニックになっていくエルサの周りだけ赤い照明で照らされるという演出が取られているからです。しかしその後城全体が赤くなったりはしませんし、ハンスらが攻めてくる「Monster」の時にも黄色くはなりません。

むしろ色に変化があるのはオーロラです。

開演前[青・緑]
=>「Sky is awake」[青・緑]
=>「Let It Go」[水色]
=>「Fixer Upper(序盤)」[青・緑]
=>「Throw a little love their way」[青・緑・黄]
=>「Fixer Upper(ダンスパート)」[青・緑・黄・赤]
=>「Fixer Upper(終盤)」[青・緑]
=>「Kristoff Lullaby」[青・緑・黄]
=>「Monster」[水色]

トロールが出ているときは基本的に青・緑のオーロラが。Love が言及されるときは黄色のオーロラが。エルサが出ているときは水色に近いオーロラがでているように整理できそうです。

ちなみにブローズンでは先ほどのオラフによる色に関するセリフがないので黄色がよくない色という設定はないと考えましょう。

むしろ「Finale  Let It Go」の際の背景は、朝焼けで波形の空全体が黄色とオレンジに染まりますので、ブローズンにおける黄色とオレンジは愛の象徴と解釈できそうです。

 

 

 

ところで、Frozenでオーロラといえばこんな小説が出ていたのを思い出しました。

「Disney's Frozen Northern Lights: Journey to the Lights」という公式の番外編小説。

これ、まだ私も読んでいないことに気づいたのですが、(多分購入して日本の実家のどこかに置いてある)もしこれを読まれた方で何かヒントになりそうなことが書いてあったという心当たりのある方はぜひコメント欄かTwitter(@westergaard2319)でお待ちしております。

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おわりに

ということで大変長くなりましたが、今回の記事では Frozen II のティザートレイラーをきっかけに、@moonboat_sr さんがツイートされた、3つの予想と希望について紹介しながら、それを切り口に、

  1. <エルサの魔法>と<オラフ>
  2. <イデュナ女王>と<トロール
  3. <アナ>と<魔法>
  4. <エルサ>と<両親>
  5. <オーロラ>と<“The Sky Is Awake”(お空が起きてる)>

 の5つの観点から、F1とブローズンを横断的に分析しながら、考察してまいりました。この記事が、F2についていろんな想像や妄想を巡らせる姉妹ファンにとって少しでもヒントになればと願っています。 

最後まで読んでいただいた方、本当に、本当に、ありがとうございました。
Frozen II 公開まで9ヶ月以上ありますが、公開までの間の謎解きは今しか楽しめませんので、公開されているヒントを集めながら考察して楽しんでいきましょう。笑