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劇団四季版『アナと雪の女王』が「アルティメット版」であるワケ(前編) 〜Broadway版に22回通ったヲタが語るその魅力〜

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追記(2021/10/25)
劇団四季アナと雪の女王について書いた記事のメニューをここに記載しておきます。

「太陽よ輝いて」(オープニングナンバー)
「生まれて初めて」
「危険な夢」(戴冠式中のエルサのソロナンバー)
「扉あけて」
「ありのままで/レット・イット・ゴー」
「モンスター」(二幕のエルサのソロナンバー)
「フィナーレ」(フィナーレ版ポジティヴレリゴー)

はじめに:劇団四季版『アナと雪の女王』鑑賞してきました。

当ブログはそもそもブロードウェイ版FROZEN初年度にレポや、歌詞の和訳を書くために始めたものでした。そんなブロードウェイ版に22回通い、各ナンバーにそれぞれ独自の訳詞までつけたりしていた究極のFROZENこじらせヲタクな私が、ついに劇団四季版を鑑賞し、結果としては大絶賛したというのが概要です笑

 

実は鑑賞したその日の夜にTwitterのスペースで1時間半ほど語らせていただいたのですが、その時は当日の興奮も覚めておらずうまく整理できなかったので、
この記事では、なぜブロードウェイ版至上主義だった私がこの劇団四季版を「アルティメット版Frozen」だ!と大絶賛するに至ったのかの理由を説明します。

すでにブロードウェイ版、北米ツアー版、オーストラリア版、劇団四季版をご鑑賞済みの方もそうでない方もわかるように書きますので、お付き合いください。

 

最初に結論:劇団四季版が「アルティメット版」である3つのワケ 

❶  日本に来たのは「幻のバージョン」:舞台版FROZENのバージョン整理

❷ 【ブローズン2.0】は 短編・続編要素の(ほぼ)全部盛りの「最新解釈版」

❸ 子ども、ライト層、こじらせヲタまで全方位対応型の「アップデート日本語歌詞」

 

一言で申し上げますと、

劇団四季版として日本に来たのは、コロナの影響で1ヶ月未満で終わってしまった「幻の」アップデートされたバージョンであり、それは続編Frozen2などの制作を終えた制作チームが、アニメーション版Frozen(2013)の後に追加された短編や続編から必要な要素をほぼ全部載せにし、「最新の解釈」を反映させたものである。

そしてその「最新解釈版」を、訳すときにアニメーション版の翻訳のような独自解釈をするというより、できるだけ原詞に忠実に訳しつつ、それでも重要なキーワードをそのままにすることで、子どもからライト層、そして原詞原理主義のこじらせたヲタクまでを対象に全方位型でアップデートさせた日本語歌詞で届けているから。

というのが「アルティメット版」であると考えている理由です。

 

今回の前編では、以上3つのテーマのうち❶と❷を詳しく語ります。
❸は後編で、実際に私が幕間や鑑賞直後に必死に記憶を頼りにメモってほぼ?再現した劇団四季版「レリゴー」の歌詞を掲載しながら、どのくらい変更されていてどのくらいそのままなのか?について検証します。

 

ikyosuke.hatenablog.com

 

 

❶ 日本に来たのは「幻のバージョン」:舞台版FROZENのバージョン整理

当ブログでは、ブロードウェイ版FROZNEを「ブローズン」と呼んでますが、厳密には舞台版には複数のバージョンがあります。
ここでは、DCAのパーク内で行われていたハイペリオンシアターバージョンや、クルーズ船のバージョンなどのDisneyParks系列のものは除き、全て Disney Theatrical Productions下で制作されたものを対象にします。

 

(1)【トライアウト】2017年8月ー10月
    米国、デンヴァーでのトライアウト公演版。
    この段階ではパビーが語り主で物語が始まるほか、
    サントラ収録のOuttake曲、”When Everything Falls Apart”が入っていた。
    ここから大幅変更された上で、2018年にブロードウェイで幕を開けた。

 

(2)【ブローズン1.0】2018年2月22日-2020年2月16日
    ブロードウェイのオリジナル版。これが私が22回通ったバージョン。
    現在日本でも販売されているサントラはこのバージョンの収録。

 

(3)【ツアーズン】2019年11月10日-
    北米ツアー版。コロナにより中断しているが、2021年9月に再開する予定。
    曲の削除、追加やセリフ、一部編曲の変更など初めての大掛かりなアップデート。
    ただし「ツアー」のため舞台装置と演出の「柔軟な対応(簡素化)」も特徴。

    削除:[For the First Time In Forever (reprise)], [True Love](アナのソロ曲)
    追加:[I Can't Lose You](アナとエルサのデュエット)

 

 

(4)【ブローズン2.0】2020年2月18日-2020年3月11日
   ブロードウェイのアップデート版。
   オリジナルキャスト姉妹の2人が降板するキャスト変更のタイミングでの更新。
   ここでツアーズンの曲やセリフに関するアップデートを採用した模様。
   ただし舞台装置の簡素化はされなかった
   コロナにより3月11日をもって休止期間に入り、そのまま完全閉幕した。
   1ヶ月以下しか行われていない世界で一番貴重なバージョン

 

(5)【シドニーズン】2020年12月1日-2021年3月23日(途中コロナで休止もあった)
    オーストラリア版のプロダクション。
    常設用ではないためセット面含めて、ベースはツアーズン

 

(6)【四季ーズン】2021年6月24日- ロングラン予定
    日本の劇団四季版プロダクション。

このほか、英国ロンドンのウェストエンド版が2021年8月、ドイツでは2021年9月にそれぞれ開幕を控えています。


ちなみに以下の写真は、【ブローズン】と【シドニーズン】の同じシーンの装置を比較した画像です。

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つまり整理すると

  • ブロードウェイでの【ブローズン1.0】から【ブローズン2.0】へのアップデートが、一番全部盛りの最強版だった。
  • しかし、【ブローズン2.0】はコロナによりわずか1ヶ月未満で終了し完全に閉幕した幻のバージョン。
  • 生き残った【ツアーズン】とコロナ禍で始まった【シドニーズン】は、曲の編成などはアップデートされた版だが、舞台装置等は簡素なバージョン。

ということである。

で、日本に何がきたのかというと、現時点で最強版かつ、すでに地球上から消えた幻の【ブローズン2.0】が来たのです。
やはりディズニーとの連携を25年以上やっており、複数演目でロングランの実績もあることから、ほぼ常設に近いものを導入しても大丈夫と考え、【ツアーズン】や【シドニーズン】の簡素化とは異なる、ブロードウェイ版とほぼ同じ舞台装置を導入してもらえたということなのかなと推察されます。

私自身、実はこの【ブローズン2.0】を自分で体験するべく、2020年の3月にフライトもホテルも超良席のチケット5枚もとってルンルンだったのですが、ご存知の通り渡航が禁止になり、そのまま終焉したということで、このバージョンが見られなかったという "呪い" にかかっておりました笑

ということで私が「アルティメット版」であると思う一つ目の理由は、世界で最も貴重で幻になったバージョンを、日本でなら見られるということ!これは非常に心強い!!
一方で、キャッツのような専用劇場と謳っているわけではないので、チケットが売れるかどうかがロングランの期間に影響してくると言えます。

 

❷【ブローズン2.0】は 短編・続編要素の(ほぼ)全部盛りの「最新解釈版」

ではこのバージョンのどこがアツいのか?紹介します。

上で書いた通り、幻の【ブローズン2.0】は、【ツアーズン】での舞台装置の簡略化以外の部分を反映する形で行われました。

この変更がなぜ行われたのかといえば、【ツアーズン】の開始時期は、2019年11月10日、つまりFrozen2公開の直前。すでにあの続編が完成している時期です。

ブローズンの最大の売りは、そもそもアニメーション版の脚本のジェニファー・リーさん&作曲のロペス夫妻の3人がそのままのチームで脚本と作曲をしている点にあると思ってます。

 

そもそも【ブローズン1.0】自体が、Frozen2との同時並行で製作が進行していたので、元からある程度Frozen2に入ることになる要素が仄めかされていました。詳しくはFrozen2公開前の私の記事を参照のこと。

ikyosuke.hatenablog.com

 
で、そのチームがFrozen2(つまり現状の最新のFrozenコンテンツ)まで作り上げた段階で、舞台版を最新にアップデートさせたバージョンが【ツアーズン】であり、その完全体が【ブローズン2.0】だったわけです。

全てを作り終えて、Frozen2で何が起きるかも全て決まり、製作者側も1作目のストーリーについて再解釈した最新の「Frozen認識」が反映された「最新解釈版」と言えます。

これができるのはやはり、一度開幕した後もアップデートが可能である舞台ならではの良さだと思います。映画は一度公開したらどれほど直したくても基本的には変えられないわけですから(スターウォーズ界隈の方は目を瞑っててください笑)。

 

で、どんな要素が盛り込まれたかと言えば、大きく3つ。

  1. 完全新曲 [I Can't Lose You] の追加([For the First Time In Forever(reprise)]と交換)
  2. イドゥーナ妃とノーサルドラに関する情報の追加
  3. その他細かな演出変更

1.完全新曲 [I Can't Lose You]の追加

youtu.be

この曲は、「生まれて初めて(リプライズ)」の代わりに入る曲ですが厳密には全然変わりではありません。「生まれて初めて(リプライズ)」よりも対話になっており、一曲の中で傷つけるところまで急展開するようなことはない丁寧な心情描写になってます。英語の原詞について詳しくはこちらを。 

ikyosuke.hatenablog.com

またこの曲が歌詞だけではわからなかった重要な点については、すでにゆうきさん(@yunkyand)が書かれているのでこちらを。

アナがためらいもなくエルサをギュッて抱き締めることができました。たった一瞬ですけど。エルサはこのとき、驚いて魔法を発動することもなければアナを凍らせることもなかった…。新演出版では、エルサが魔法を克服するヒントがここに実は隠されているんだなぁ…って思いました。 

yunky373.com

 

なぜこれが2を反映しているのかと言えば、この曲は本来Frozen2に入る可能性があった曲だからです。作曲のロペス夫妻が以下のインタビューで以下のようなことを語っています。

youtu.be

  • 本当はFrozen2の中で、アナとエルサのデュエット曲を死ぬほど書きたかった。
  • でも、リー監督がもっと良いシーン(おそらくアナを川流しするシーン)の脚本を書いたのと、同時期に火消しが必要な箇所があった(おそらくShow Yourselfの製作が紛糾していた時期:『メイキング:イントゥ・ジ・アンノウン』を参照のこと)ので、曲は作らないことになった。
  • Frozen2の作曲作業が終わった後、ツアー向けに新曲を作らないかと提案を受け、速攻でYES!と言って作ったのが I Can't Lose Youだった。

これは納得である。そもそも "I can't lose you, Elsa" "I can't lose you either, Anna" という会話がFrozen2の川流しの直前に入っていますから、このセリフからインスパイアされて作った曲だということは明かです。

となると、おそらくこんなような曲を(その時醤油の炎上の火消しで完成させなかったとは言え!)構想していたのだろうと予測は尽きます。

そしてこれがぴったりハマるということからも、FrozenとFrozen2がある意味、アナとエルサの関係性でいえば、事情は違うとはいえほとんど同じ構造を描いていることも見えてきます。もちろん、導き出す最終的な結論が違うということを除けばの話ですが。

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"I can't lose you, Elsa" "I can't lose you either, Anna" - Frozen2

2.イドゥーナ妃とノーサルドラに関する情報の追加

これはすでに【ブローズン1.0】 の段階で仄めかされていたのでこんな記事をFrozen2公開前に書いて予想していました。

 

ikyosuke.hatenablog.com

 

【ブローズン1.0】では、「北方遊牧民の子孫である」と発言していたのですが、【ブローズン2.0】を翻訳した【四季ーズン】では「ノーサルドラの子どもである」と言っていたので、明らかに「ノーサルドラ」という固有名詞を出して、Frozen2のネタバレをサラッとするという脚本になっていました笑

実際のところ私は【ツアーズン】も【ブローズン2.0】も直接は観られていないのでどこで変わったかは不明ですが、映画公開前の2019/11/10の【ツアーズン】初日からネタバレをするとは思えないので、【ツアーズン】の11/22以降の公演で変わったか、【ブローズン2.0】開始のタイミングかと考えています。あるいは【四季ーズン】からかもしれません。

 

またノーサルドラ関連で言えば、【四季ーズン】ではFroen2のキーアイテム「ノーサルドラのスカーフ」をイドゥーナ妃が肩にかけて登場し、凍えるアナにもかけてあげるという演出が加わっていました。【ブローズン1.0】にはなかったのは確実ですが、これもどのタイミングで加わったか厳密には私にはわかりませんが。

 

また、アグナル王とイドゥーナ妃がなくなるシーンでも、はっきりとFrozen2での雪の像が伝えたのと同じようなお互いを抱き抱えた状態で亡くなっていく様子が舞台上で再現されており、この点も【ブローズン1.0】にはなかったものでした。

 

こういったようにイドゥーナ妃とノーサルドラに関する、Frozen2の重大なネタバレが含まれているというのがこのバージョンが「最新解釈版」であることに直結しています。

 

3.その他細かな演出変更

  • アナがノースマウンテンを目指す過程で、髪型がFrozenの時の三つ編みではなく、Frozen2のハーフアップになった点は彼女の精神的な成長を髪型で表現しています。またこれは【ブローズン1.0】からですが、エルサのMonster以降のパンツスタイルもFrozen2の衣装とシンクロしているわけで、ずっとドレスから脱したFrozen2的な色が結果として反映されています。
  • 【ブローズン1.0】ではほぼ完全に削除されていたアニメーション版のオープニング曲 Frozen Heart(氷の心)が「Be ware the Frozen heart(四季の歌詞:心凍らせるな)」という1フレーズだけ、冒頭のVuelieとLet the Sun Shine Onの間に挿入されました。これも、抜け落ちていた1の要素をやはり入れ直しているという点で、アルティメット間を増させています。
  • 【ブローズン1.0】ではアナをハンスの元に送り届けたクリストフは、スヴェンと少し会話をして立ち去りその背景に、What Do You Know About Loveのインストゥルメンタルが流れるといった演出でしたが、そこにクリストフの歌が短いフレーズですが加わっていました。そのことにより、クリストフ側がその後アナの元に戻るという決心をする前に、一度自分の今の判断でいいのか?と自問していることが言葉として伝わるようになっていました。これもアニメーションで説明していたけど舞台で省いたものを、もう一度やはり入れ直すという試みと読み取れます。
  • クリストフが最後にキスするシーンは【ブローズン1.0】では映画と同様に一方的にクリストフから「May I kiss you?(キスしていい?)」と問うていましたが、昨今の情勢を踏まえてか、アナとクリストフが同時に「May I kiss you?」といってキスする流れになっていました。細かいですが両者が望んだキスであったことを強調していると同時に、ハンスとアナのシンクロのようなことがクリストフとアナの間にも起きていることを示す描写なのかなと解釈してます。

 

また、これらは【ブローズン1.0】から入っていた要素ですが、オーケンがファミリーの愛や関係をアンサーとして示すというのが Hyggeナンバーの肝であり、それはオラアドこと Olaf's Frozen Adventure 家族の思い出 におけるオーケンの役割ともシンクロしていますし、
オラフこそがアナとエルサの一部ずつ出てきているのだというオラアドのメインテーマも Little Bit Of Youという曲に反映されています。
そうなると唯一全く触れられていないのは、エルサプことFrozen Fever のみとも見えるわけです。

どうでしょう、この全部載せ感??

私の雑感としては、 I Can't Lose You が入ったことによって、ブローズンは完全に完成したなと思っています。

そしてこの曲がすんなりここにフィットするのは、アニメーション版Frozenが持っていた最大の欠点を、【ブローズン1.0】が既に克服していたからです。

最大の欠点とは、(1)アナとエルサどちらもそれぞれの考えがあまりはっきり示されないまま、レリゴーに突入し、一気にエルサに観客が共感してしまうために、アナがきたときにエルサの邪魔をしているように見えてしまうこと、(2)そしてその割にエルサの描写時間も短く、結局エルサが何を考えているかいまいちわからないまま物語がクライマックスに突入することのダブルパンチです。

ブローズンでは、冒頭の Let the Sun Shine Onであるべき関係を描き、1幕の最後でエルサが Let the Storm Rage On (レリゴー)し、2幕の最後でアナがエルサに全ての過去をLet It Goさせ、一緒にLet the Sun Shine On するという綺麗なシンメトリーになっています。

そしてそれを可能にするために、エルサ側はアナへの想いをDangerous To Dreamで語り、レリゴー後のもう一段階上の判断をMonsterで描きます。
そしてアナ側は、感情ではなくロジックで動く真逆のクリストフとの掛け合いを通して自分が正しいと思ってたことを疑い始めるナンバー、What Do You Know About Loveで成長を描いているわけです。

だからこそ、2人がクロスする2幕序盤は、単なるすれ違いで終わるFor the First Time In Forever (reprise)ではなく、むしろある程度お互いの理解が深まる I Can't Lose You になる必要があったし、それによってブローズンで深められた両者の心情描写が生きてくるのだ、と私は考えています。

この「最新解釈版」で描かれたような成長をした姉妹であれば、Frozen2で改めて描かれたような冒険を経なくても十分やっていけるのではないか?とすら思えるくらいに、安心させられる終わり方をフィナーレレリゴーがしてくれます。

 

じゃあ、Frozen2 の一番のポイントは何だったのか?

この答えのヒントは、私的には、アナのソロナンバー、True Love が【ツアーズン&ブローズン2.0】になる段階に削除されたことにあるのではないかと思っています。

この曲はアナがハンスに閉じ込められ「全てを失った」という絶望感の中、同じ部屋で何年もエルサのことを待ち続けていたことを回顧しながら、それでも諦めきれない希望を胸に歌うバラードです。曲や原詞についてはこちらを参照してください。

ikyosuke.hatenablog.com

なぜこれが削除されたか。
これははっきり語られていませんが、まず第一に2幕の時間を短くする必要があったということにあると思います。これは現実的な話すぎますが笑
そもそも、アニメーション映画のFrozenでは後半に曲がほとんどないため、舞台版を作る上で新曲を大量投入しています。映画しか知らない場合、特に子どもたちは後半があまりに知らない曲が続いてしまうと飽きてしまう可能性があったということは容易に考えられます。

(時間を短くしようという試みは、この曲の完全削除だけでなく、あらゆる部分で編曲をして短縮しているところが見受けられます。例えば2幕頭のオーケンの歌う「Hygge」のナンバーも【ブローズン1.0】の頃より短くなったことなどがあります。他でもかなり削れる部分を削っています。)

でもう一つの理由が大事です。それっは、おそらく Frozen2の The Next Right Thing の方が似たようなメッセージをよりスマートにまとめられたということもあるのではないかと考えています。

繰り返しですが、FrozenとFrozen2は、アナとエルサの関係性でいえば、結論を除いてほとんど同じ構造を描いています。

True Loveは、先ほども書いたように「『全てを失った』という絶望感の中、それでも諦めきれない希望を胸に歌うバラード」ですから、作品の中で歌われるタイミングとしても、アナの感情の旅路における位置づけも完全に一致します。これはただの推測ですが、True Love が先に完成して、それに近い形で The Next Right Thing を書いて行ったというプロセスがあったのではないかと勝手に思っています。
違うプロジェクトとはいえ、同じあの夫妻が同じ家の中で同じピアノを弾きながら作っているわけですからこういう影響も出てきて当然かなと思います。

この意味で、True Loveの曲の部分はむしろFrozen2の方に任せたと言えるかもしれません。

 

Frozen2という映画自体の1番のメッセージは、「ありのままで」再来=「Show Yourself」ではなく、むしろ「The Next Right Thing」なのだということは公開当時から私は解釈しています。

ikyosuke.hatenablog.com

 

ということで、The Next Rigth Thing的要素は Frozen2に任せ、とにかくアナとエルサをFrozen1作目の物語の中だけで十分に丁寧に成長させることができ、さらに続編で新しく明らかにされた(というか新しく設定された)ノーサルドラ関連の母親の情報も足しつつ、Frozen2での2人の感情の山場となるシーンを I Can't Lose You として再インストールしたというこれらの点において【ブローズン2.0】がほぼ全部載せの「最新解釈版」であると考えています。

 

後編へ続く:

❸  子ども、ライト層、こじらせヲタまで全方位対応型の「アップデート日本語歌詞」

さて、そんな「最新解釈版」の【ブローズン2.0】を日本に持ってきたのが【四季ーズン】なわけですが、持ってくるには当然日本語になります。

私はあくまで原詞原理主義者で、オリジナル以外の翻訳は字幕であれ吹き替えであれ、実写だろうと舞台だろうと全てそれぞれ訳した人の一つの解釈である、という距離をとった立場をとっています。

解釈の一つである以上、訳詞についてはいわゆる「解釈違い」のようなものが生じやすいワケです。
そして、当ブログでも一番アクセス数の多いのはいまだにこのアラジンのA Whole New Worldの各バージョンの日本語訳詞の比較なのですが笑、テレビで放映されるたりすると「歌詞が違うからノれない」なんてことがTwitterでは話題になりますよね。

ikyosuke.hatenablog.com

 

 
これは劇団四季の舞台版の『アラジン』や『リトル・マーメイド』などもこれまで抱えていた問題です。しかし、今回四季が『アナと雪の女王』をやるにあたっては、これまでにない手法をとっているのでそのことについて、実際に私が現地で幕間や終演直後にメモした記憶の断片から劇団四季版レリゴーの歌詞を再現しながら、どんな変化が観られたのか、そしてそれがどのように子どもからライト層、そして私のようなこじらせヲタまでもを唸らせ納得させる全方位対応型の「アルティメット版」たらしめているのか?、について語ります。

 

それでは後編の記事で!!

  

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