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トイストーリー4:「3のエンディングが素晴らしいことはわかってるけど…」監督&プロデューサーインタビューの書き起こしと和訳

トイストーリー4の製作についての監督とプロデューサーへのインタビュー動画

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現在ディズニーデラックスで視聴できるスペシャルコンテンツにあるトイストーリー4の製作に関するインタビュー動画のなかから一部分だけ私が抜粋して原文を書き起こし、独自に和訳しました。

というのは、ディズニーデラックスの方で視聴できる動画にはすでに和訳された字幕だけがついているのですが、字幕という媒体の限界によって少しはしょられている部分もあるので、一度本人たちの喋っている英語の原文を書き起こした上で字数にとらわれずしっかり理解したいと思い、和訳してみました。

 

インタビューの書き起こしと和訳(抜粋) (フル版はディズニー・デラックスで!)

監督:ジョシュ・クーリー(JC)
プロデューサー:マーク・ニールセン(MN)、ジョナス・リヴェラ(JR)

 

1)4作目製作のプレッシャーについて

JC
We love Toy Story 3, and I love Toy Story 3, its ending is amazing, and there was a lot of pressure coming into do the fourth one, right off the gate.
僕らはトイストーリー3が好きだし、僕も個人的に好きだし、あのエンディングは素晴らしいよ。だから4つ目のをやることになったとき、最初からすごいプレッシャーはあったんだ。
Like, how do you go from there?
いったいあそこからどこへもってくんだ?ってね。

And so that was a question, but we had an idea with Woody that can make a story go even further.
そう、だからそれはすごい問題だったんだ。けど僕らにはアイデアがあったんだ。ウッディについてならこの物語をもっと先へ持っていけるだろうって。

The end of Toy Story 3 is the end of Woody’s time with Andy.
3作目の終わりは、ウッディにとってアンディとの時間の終わりだ。

Now he’s with the new child Bonnie, and it’s beginning of the something new.
今や彼は新しい子どもボニーといる。それこそ新しいことの始まりなんだ。

 

 

2)4作目製作で気をつけたことについて

JR

We want Toy Story 4 to feel brand-new, like it’s something you’ve never seen before, and yet that is familiar enough that it feels like an organic continuation of the first three.
僕らは、トイストーリー4をまったく新しいものに感じて欲しかったんだ。今まで見たこともないっていうか。でも同時に親しみやすくしたかった。前3作からの自然なつながりの延長に感じられるくらい十分にはね。

And I think that the biggest challenge was the balancing.
だから僕が思うに、最大の挑戦はそのバランスを保つことだったんだ。

We know the audience got a feeling that 3rd film had such a beautiful ending.
僕らもわかってるさ、3作目が美しいエンディングだとオーディエンスが思っていることは。

So we tried to engineer it forward, that was a misdirection for us set up a new beginning.
だから僕らはなんとかして前に進めようとしたんだ。あれはある種のミスリーディングで、実は新しい始まりのための準備だったんだ、って。

 

MN

There’s also a lot of love for these characters, Buzz and Woody, within the crew within the studio, we care about these characters as much as anybody.
もちろん僕らクルーやスタジオの中には、バズやウッディへのあふれんばかりの愛情もあるよ。僕らは他の誰にも負けないくらいこのキャラクターたちのことを気にかけているからね。

The crew really rolling around the story to do everything they could to make it the best thing as possibly be.
うちのクルーたちはほんとうに頭を悩ませて思考を巡らせてこの物語を可能な限り最高のものにするためにできることはなんでもしたさ。

 

 

3)作品のメッセージについて

JC

The story is about transition.
今作は「トランジション:変化」についての物語なんだ。

Woody go from Andy’s room to Bonnie’s.
ウッディはアンディの部屋からボニーの部屋へ行く。

It’s a whole new situation for him.
彼にとってまったく新しい状況だよ。

Bo Peep has gone through a transition.
ボーピープは変化を経てきた。

Forky, trash becoming a most important toy.
フォーキーはゴミから最も大事なおもちゃになった。

Everybody go through things differently but we all kind of experiencing the same thing as a whole.
それぞれが違う形でこの変化を経験するわけだけど、僕らはみんななんらかのかたちで似たようなことを全体としては体験するんだ。

 

 

4)ウッディとフォーキーの関係について

MN

It’s not easy but Woody’s job is kind of make sure that Forky be there for Bonnie the way that he wishes he could be.
簡単なことではないが、ウッディの仕事はフォーキーが確実にボニーのそばにいてあげるようにすることなんだ。彼がそうできたらいいと思っているようにね。

 

 

5)ボーピープ関係について 最近のプリンセスの傾向を意識したのか? 

JC

We went back and look at Toy Story 1 and 2, to see how Bo acted in the original films.
僕らは、ボーが元の映画でどういう風に振舞っていたかを確認するために、1作目と2作目を見返したよ。

And she was always a really strong character, she wasn’t in the foreground but she was always off to the side and whenever Woody had a problem, he would approach her and kind of confess his feelings about what’s happening with Andy or the room and she would give him advice that actually would help.
彼女はいつも本当に強いキャラクターだった。彼女は前には出てこないんだけど、常に横にいて、ウッディがなにか問題を抱えた時には、彼からアプローチしていって彼の思いを打ち明けて、それがアンディのことであっても部屋のことであっても、それで彼女は彼に役に立つアドバイスをしていたんだ。

And it was interesting to see that, and we realized that all we need is kind of bring her to the surface.
とっても興味深かったし、私たちが必要なのはただ彼女を表面へ持ってきて見せればいいだけなんだって気づいたね。

And so, she is the same character but she’s been through a lot more a life than Woody has ever been through.
だから、彼女はおんなじキャラクターだ。だけど彼女はウッディが経験してきたよりももっと多くのことを経験してきているんだ。

She’s made of porcelain but she’s not afraid to break.
彼女は陶器製だけど壊れることを恐れていない。

And she’s more independent and strong, but she’s the same character.
それに彼女はより自立していて強いけれど、それでもおんなじキャラクターだ。

So we looked at how characters can be independent but also we didn’t want to make a completely new, different character, different Bo, so she’s still same Bo.
だから僕らはたしかにキャラクターをより自立させるにはどうしたらいいか考えたけど、完全に新しい、違うボーを描こうとは思わなかった。ボーはこれまでと同じだよ。

Just a little bit more present.
ただちょっとより存在感が増してるんだ。

 

 

6)4作目を作ろうと考えた最大の理由

JC

Bo Peep.
ボーピープが最大の理由だったね。

At the very beginning of this project, the code name for us internally was “Peep.”
このプロジェクトの発足当初、内部でのコードネームは「ピープ」だったんだ。

That was kind of a seed.
それが「種」だったね。

Where was she? Where she had been? What she’s been doing?
ボーはどこにいたのか?どこへいってたのか?何をしてたのか?

And that was kind of the beginning of the story and it can develop from there.
それこそが物語のはじまりだったし、そこから生まれてきたんだ。

So I say it was kind of a . . .
だからいわば、それが。。。

 

JR

She was the driver.
彼女こそが「ドライバー:原動力」だった

 

JC

The driver for the whole thing.
そう、すべての「ドライバー:原動力」。

 

JR

Toy Story at Pixar is the legacy of the studio.
ピクサーにおいてトイストーリーはスタジオのレガシーだ。

There was a bit of a challenge to this one.
だから今作にはちょっとチャレンジングな部分もあった。

Because, 3 was so good and so beloved.
なにせ、3作目はとっても素晴らしくて、愛されている。

It started to feel like, we love challenges, we love risks.
だからこう思うようになったんだ。僕らは挑戦が好きだし、リスクが大好きだって。

And it almost seemed like a bigger story challenge to prove that.
そしてこれこそ(僕らがリスクや挑戦が好きであることを)証明するのに適した、より大きな物語の挑戦だろうって感じたんだ。

I don’t know but we just get inspired by, that felt worthy.
わからないけど、僕らはそれに刺激されて、そこに価値があると感じたんだ。

Because we love these characters so much, and we wanted to show what would happen after Andy.
だって僕らはこのキャラクターたちがとっても好きで、だから僕らはアンディを離れた後どうなったのかを見せたかったんだ。

What would their world be like?
彼らにとっての世界はどうなるのか?

What would Woody’s purpose turn into?
ウッディの目的はどう変わっていくのか?

What would change it, who would change it? 
何が変えるのか?誰が変えるのか?

Where was Bo?
ボーはどこにいたのか?

All of these questions floated around us.
こういうあらゆる疑問が僕らの中に浮かんできた。

And just felt like... It was just more challenge that really motivated us and the crew.
これこそが僕らや他のクルーのモチベーションになるようなチャレンジだったんだ。

 

おわりに

このインタビューを見ると、クーリー監督たちがどれほど3作目までのストーリーを大事にしながら、さらにその先を私たちオーディエンスに見せようとしていたかが伝わってきます。
同時に彼らが、自分たちのストーリーテラーとしてのプライドをかけてチャレンジした成果物として私たちに提示してきていることも伝わってくるようです。

また、ウッディがフォーキーにある種自分の「身代わり」をさせているという構図や、ボーピープがウッディが経験してきたこと(すなわち私たちが3作目まででみたこと)を超えるような経験をしていることがはっきりと言及されているのも貴重な情報です。

さらに、ボーピープはキャラクターが変わったのではなく、あくまで前面に押し出されただけだということもはっきり言及されています。

 

このことについては私も別の記事

彼女自身の変貌は新しく何かを身につけたのではなく、自身が持っていたものへの見方を変えることで構成されている。(中略) スカートの生地を裏返してマントにする、というのは、もともと彼女が自分の内側に持っていた内面的な強さを外に出したということをビジュアル化していると捉えることができる。

と書きましたが、認識の変化でありキャラクターすなわち人としてのあり方自体の変化ではない、ということが巧妙に表現されていると思っています。

 

また作品のテーマが「transition: 変化」であり、ウッディがアンディからボニーへ手渡された変化と同じかそれ以上の変化を、ボーピープの変化とフォーキーの変化と並列に扱っているということもこれではっきりわかりました。

特に、フォーキーがゴミだったのに突然おもちゃになったという変化は見落としがちです。

フォーキーはゴミからおもちゃになった、というのは当然我々も承知していますが、いまのおもちゃとしての人生があるのと同様に、その前にゴミとしての人生があった(?)という想定もしっかりしなくてはいけないなと思いました。

 

ウッディがいかにフォーキーに自分の価値観を押し付け(?)ているかについては劇中で使われるこの曲「I Can't Let You Throw Yourself Away」の歌詞に非常によく現れています。

ikyosuke.hatenablog.com 

とはいえ、この曲がインストルメンタル版になってエンドロールでも使われていることから、このウッディなりのおもちゃとしてのフィロソフィーは否定されることなく、別の形で生き続け、ボーたちとの活動の根底に流れていることも示されていると考えています。

 

 

フォーキーとボーについてはまだまだ語られていないことが多いので、年末から少なくともアメリカではサービスの始まる「Disney +」で配信されることが決定している「Forky Asks a Question」と「Lamp Life」というフォーキーとボーそれぞれの短編シリーズを観られるようになるのが楽しみです。

 

 

ちなみに、私が書いたトイストーリー4の考察においては、これまでウッディがどのような「transition」を経てきたのかを、トイストーリーという作品の中における「3層のストーリー」の構造というのに着目してまとめてみました。

 

ikyosuke.hatenablog.com

 

 

 

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