ikyosuke 作品分析

映画、ミュージカル、音楽、自分が好きなものを分析して語ります。

ブロードウェイ・ミュージカル「キング・コング」レポート

これまでこのブログでは「Frozen the Broadway Musical」のみの分析記事を書いて来ましたが、今回はブロードウェイの最新作「King Kong」をレポートしたいと思います。


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第一幕

時は、1930年代、戦間期大恐慌時代のニューヨーク。
建設中の高層ビルがそびえ立つ空から、ビルの間を降りていきます。労働者たちがクレーンに捕まり降りてくる。
ステージは半円で、背景が全面LEDスクリーン。オープニングアクトから映像がすごい。もはや映画のようなカメラワークの背景にシンクロするように舞台上のアクターやプロップスが動いていく。

 

Queen of New York、すなわちブロードウェイのスターになることを夢見て出てきたアフリカンアメリカンの女性アンは、オーディションに落ちまくりストリートの生活。(それをブロードウェイのスターが演じてると言うのも笑える)
行き場もなく長居していたレストランで店員にひどい対応をされているところを助けてくれた売れない映画監督カールのオファーに応じて船に乗り込む。

 

船の舞台装置がまたすごい。ステージの一部が傾いて船になる。この動きと背景の海の映像が合わさって本当に航海しているかのよう。
なかなか島につかないことに苛立つ船長は、こんなの詐欺だと言って船員たちとともにカールを殺そうとするも、アンがそれを拒み偽物の爆弾をプロップスにして迫真の演技で船長らを脅し、カールの命と撮影プロジェクトを救う。もちろん彼女自身のデビューという目的達成のためではあるが。

 

ようやく島に着いて登場するリアルサイズのキングコング。舞台上のパペットなのに映画ばりのスリル感。
アンがキングコングに捕まったにもかかわらずカメラを回し続けるカール。しかし結局カメラは破壊されフィルムは失われる。そんな中、キングコングはアンを連れて走り去る。光の網で表現されるジャングルの中を駆け巡るスローモーション風の演出は舞台ならでは。

 

アンはキングコングの寝ぐらまで連れて行かれるも、怯えて何もできなくなるどころか、彼とコミュニケーションをとり、理解しようとし始める。襲ってきた大蛇から彼女をかばって戦ってくれて、怪我したキングコングをアンが治癒する姿は、美女と野獣で狼から助けてくれたビーストを介抱するベルの姿そのもの。キングコングは島の海岸で月を眺めながら、アンの歌を聴きながら眠りにつきます。
アンがベルと異なるのは、彼女は人間がここの島にいるべきではないと悟って、逃げ出す点。

 

一方フィルムを失ったカールはこのままでは島まで航海して来た分の投資をペイできないということで、キングコングを見世物として連れて帰ることを決意し、戻る。

 

カールらと遭遇したアンは、アンを助けるよりもカメラを優先したことを咎めた上で、キングコングが自分を追ってくる可能性があるから早く島を去ったほうがいいと提案するも、カールはキングコングは映画より舞台向きだ、と言う。(このあたりもメタ的な発言と捉えると結構挑発的で笑える)

 

アンが叫べばキングコングを誘き寄せられると考えたカールはアンを、これまで彼女の才能を見出さなかった世間への怒りを込めて叫べと促し、アンは叫ぶ、というか吠える(笑)カールの算段通りキングコングはやってきてガスによって睡らせられ捕まる。
何をしてしまったの?と問うアンに対し、カールは「我々はたった今世界を変えた」と答え、1幕終了。


 

第二幕

キングコングを連れてニューヨークに戻ったところからスタート。

カールは「これ以上に最高な『Beauty and the Beast』のストーリーはない」と大興奮。ここまでのパロディが意図的であったことがセリフによって明かされます。

一方アンはキングコングに間違ったことをしてしまったと謝ります。それでも「自分はずっとスターになりたかった。あなたもスターになるのよ。」と彼女はまだ夢を諦めていません。

 

続いてキングコングを見つけたストーリーを伝える劇中劇のリハーサルが行われます。
劇中劇に登場する監督役(その名も「Fake Carl」(笑)本当にこれでクレジットされてるから笑ってしまう)は、本物よりもmasculineなマッチョな男性が演じていて彼のheroicさが強調されています。対照的にアンは本人役で演じさせられていて、本物の監督は、アンはただ叫べばいいと指示します。よりheroicに描かれる監督役に対するfemininityの強調はコメディタッチで描かれるだけに非常に皮肉な演出。カールの構想では、アンが叫ぶとホンモノのキングコングを舞台に登場させて観客を驚かすという演出なのです。

 

アンは、キングコングのことを想うと、こんなことはできないと言って劇場を飛び出します。「代わりの女優はいくらでもいる。成功するためには今叫ぶしかないんだ」と無理無理カールに諭されて楽屋に戻り、舞台に向けた準備をしていると、船で声をかけてきてくれた監督の助手であるランピーがやってきて、再びアンに声をかけます。彼は、アンの中に感染症で亡くなった自分の娘と似たものを感じると言い、特にこの恐慌の時代人は成功することに取り憑かれて善を見失う、と語りかけます。

 

そんな中いよいよキングコングのお披露目の舞台が始まり、キングコング登場の合図であるアンの叫びのキューを監督が出します。
しかし彼女は、もうお金のために叫ぶことはできない、と言って舞台に手錠をかけて連れてこられたキングコングに対し、今こそ反撃すべきだと言います。
反抗した彼女をスタッフが連行すると、キングコングは彼女を助け出そうと手錠を破壊してアンを連れて劇場の外へ。
ニューヨークの街の中を駆け巡りエンパイアステートビルに登り始めます。
縦縞のスクリーンが降りてきてそこへ投射される窓の光がどんどん下へ降りていくことで、キングコングが登っていく様子が再現されます。

 

アンのせいでキングコングは逃げてしまい、劇場も破壊されたと落ち込むカールの元へ助手のランピーが現れ、もうこんな仕事は続けられないと告げる。カールはお前は頼る人がいなくなるだろうと言うと、「ひとりになるのはあなただ」と監督に告げて立ち去る。カールはこれ以降登場しない。

 

エンパイアステートの頂上(当時世界最高なのでようするに「Top of the World」)で2人は追いかけてくる警察や消防を見下しながら、アンは言います。
「みて、みんなが私たちに注目している。私はこうして注目されることを目指してきた。でもどれだけ名前を知られても顔を知られても、あなたが何者であるかは誰もわかってくれない。」
そして島での時と同じように月を眺めながら、アンは再びキングコングに歌いかけます。

 

すると当時の最新兵器である複葉機が近づいてきて、キングコングを周りから襲撃。ビルから落下。

エンパイアステートの頂上に残されたアンは、誰もあなたのことを忘れないだろうと歌います。



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まだサウンドトラックがでていないのと、歌詞が公表されていないのでこれ以上詳しい分析は現時点ではできませんが、ざっくりと覚えている範囲でのレポートでした。