westergaard 作品分析

映画、ミュージカル、音楽、自分が好きなものを分析して語ります。

Frozen2 アナ雪2:結局エルサは誰に呼ばれてた?「Into the Unknown」と「Show Yourself」をプリンセス研究の視点で徹底分析

はじめに

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今作は、プロモーションのために、「Into the 安納」じゃなくて「Into the Unknown」がものすごく大々的に宣伝されてきました。

 

※コチラは忘れもしない公式の初ツイート「イントゥ・ザ・アンノウン」笑
まぁちゃんと直ってよかった。

  


Idina Menzel, AURORA - Into the Unknown (From "Frozen 2"/Lyric Video)

ikyosuke.hatenablog.com

 

この「Into the Unknown」はいわゆる「エンドソング」が用意され、今作の最大のメインソングかのように扱われていましたが、蓋を開けたら前作とは打って変わって、後半部分に素晴らしいミュージカルナンバーがたくさんあるではないですか!

 

www.youtube.com

ikyosuke.hatenablog.com

 

「醤油はセルフ」・・・あ、じゃなくて「Show Yourself」こそが、一番の見せ場になっていたことは、映像を見た人からすれば一目瞭然でしょう。(一番かどうかはみなさんの感覚によるでしょうが、少なくとも見せ場にしたかったであろうことはご共感いただけるかと。)

 

で・す・が、このShow Yourself、解釈が難しいと一部で話題担っていたのを見かけました。

何が難しいかというと、エルサはこの一曲の間に、ノックから降りてアートハランに踏み入れ、そしてエルサがずっと疑問だったことをたった4分20秒程度のうちの解決してしまうのです。セリフなし、歌詞だけでは、私たちはついていけません笑。何せエルサは、基本4音の歌声を聞いただけで、それが自分を呼んでいて、それが「いい人だ」ということを判断できちゃうという、私たちにはない感覚を持っているわけですしね。

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なので大前提としてあの映画はエルサが感覚でわかることというのを全て説明しようとはサラサラ思っていないと、いうのが私なりの解釈です。あくまで、オーディエンスの解釈に任せつつ進める神話であり、全てを説明する気はないということなのでしょう。

 

で、解釈をするにあたって、本来であればロペス夫妻が言葉を選んだ歌詞と、ジェニファーリー監督・脚本が選んだ言葉遣いのセリフと映像を追っていけば良いはずなのです。

が、私たちが日本で鑑賞する、「日本語吹替版」や、「日本語字幕版」を理解するためには、その間で翻訳をした「翻訳者」の「解釈」とそれにGOサインを出した「ウォルトディズニージャパン(WDJ)」の担当者の「意図・判断」が挟まっているので、解釈がより一層ややこしくなるわけです笑。

 

「I AM FOUND」は「見つけた」ではないだろ!問題

ここからが本題、この曲のうち「苦渋の決断か?」「誤訳ではないか?」と話題になったこの部分。

fusetter.com

はい、みなさんが話題にしている通り当然ことは直訳ではなく、本来は「見つけられた」ないし「見つけてもらえた」など受動態にしないとおかしいわけです。

しかしご存知の通り、翻訳の際には、字幕であれば字数制限、吹き替えであれば音節数制限がありますから、そのまま訳せないことは仕方ありません。

とはいえ、字幕の松浦美奈さんにしても、吹き替えのいずみつかささん、訳詞の高橋知伽江さんにしても相手はプロですから「意味を取り違える」ということはあり得ません。彼女たちも十分「見つけられた・見つけてもらえた」と訳すべきとこであることは承知しているはずです。でもその上で、「見つけた」という吹き替え、字幕で世に送り出しているということです。

これはつまり、彼女たちの納得だけでなく、WDJの字幕吹き替え監修担当も演出者もOKしているということですから、これで意図がある程度通っているはずなのです。

 

この記事では、なぜWDJの判断として「見つけた」でOKになったのかを解き明かしていきます。

 

そもそもエルサは何に見つけられたの?の仮説

では、吹き替え字幕はほっておいて原詞だけを考えるにしても、「I AM FOUND」ってエルサは何に見つけられたの?っていうのが疑問になるわけです。

簡単に考えつく仮説は二つかなと。

 

仮説1:母イドゥナさんに見つけてもらえた

映像的にはこのシーンはまさに、姉妹の母イドゥナさんの特大映像が、アートハランの内装の氷の壁の中に映し出されているわけですから、ぱっと見イドゥナさんに見つけてもらえた、と捉えやすいです。

仮説2:声の主(イドゥナさんとは別)に見つけてもらえた

これは「エルサを呼ぶ声」が例えばアートハラン自体の声だったとすると考えやすいです。そうすると見えない何かに呼ばれていて、その声の主は見えなかったということになってしまいます。

 

ではここからしっかり仮説を検討していきます。

 

そもそもこの声は誰のだった?

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この物語の冒頭から「声の主を探せ」とパビーに言われて旅が始まっているわけですし、Into the Unknownの歌詞の時点で、

Are you someone out there who’s a little bit like me?
それともどこかにいる、ちょっとばかり私みたいな誰かで

Who knows deep down I’m not where I’m meant to be?
実はいるべき場所に 私が今いないことを知ってるの?

などと「you」と声の主について言っていることから、「Show Yourself(みせて、あなたを)」のタイトルにも入っていて、歌詞の中でも繰り返される「You:あなた」は、ずっと探していた「声の主」のことのはずです。

エルサが、ハニーマレンに教えられた通りに、4エレメントの中央に立った時、エルサの周りを無数の光の線が通り抜けて上に上がり、そこから水が記憶していた「過去の記録」の映像のドームが出来上がります。

その瞬間に流れ出すのは、母イドゥナが幼少期に姉妹に歌った「All Is Found(魔法の川の子守唄)」の一節です。(赤字は吹替歌詞)

 

[Chorus]
Where the north wind meets the sea 
北の風が海に出会うところ
北風が 海に
 

[The Voice] 
Ah ah ah ah 
 

[Chorus]
There's a river 
川がある
巡り会う
 

[The Voice] 
Ah ah ah ah 
 

[Chorus]
Full of memory (memory, memory)
記憶に満たされた
その川に(川に、川に)
 

 

 

ここで、サントラの歌詞カードでは「The Voice」となっていた箇所ですが、映像ではイドゥナさんが気を失ったアグナルを抱き抱えながら、空を見上げて「ああーああー」と歌っているのが確認できます。

このことから、エルサの心に響いていたのは「アグナルを助けたイドゥナさんの声だった」と結論づけることができます。

冒頭にアグナルが自分で語る回想シーンでも、アグナルが頭を打った後、画面がホワイトアウトしてから、同じ声がします。アグナルがあの日聞いた声は、少なくとも「イドゥナさんの声」だったわけです。

で、このイドゥナさんがなんでこんな声を上げていたかは、実は映画ではわかりづらいのですが、ノベライズには、アートハランの場面において、次のような記述があります。

The Wind Spirit had lifted them out of the Enchanted Forest while others were locked in.
It was Gele. Gale had always been there to protect Elsa's family, even before she was born.
風邪の精霊が二人(イドゥナとアグナル)を運び上げ、みんなが閉じ込められている中、魔法の森の外へ出してあげました。ゲイルだったのです。ゲイルはエルサの家族をずっと守ってきたのです、彼女が生まれる前からも。

 

要するに、自然の精霊と親しく交流していたノーサルドラのイドゥナさんが気を失ったアグナルを目にしたときに、とっさの判断でゲイルを呼ぶためにこの「声」を歌ったのでしょう。

こうして霧の外へ運び出された二人は、映画のアートハランのシーンでもはっきりと描写のあった、アレンデール兵の車に運び入れられ、そのままアレンデールへと帰っていったのでしょう。映画で見えた場面でもゲイルがイドゥナを隠すように毛布をかけてあげている様子があったことから、命を救ったのもゲイルだというのを察しろということでしょうか。まあ確かにアグナルの回想シーンでもアグナルが宙に浮いたような描写もありましたし、そんなに不可能な想像要求でもないかもしれません。

(ノベライズは私はUS Amazonで購入しましたが、日本でも12月10日に発売。)

Frozen 2: The Deluxe Junior Novelization (Disney Frozen 2)

Frozen 2: The Deluxe Junior Novelization (Disney Frozen 2)

 

 

でもハニーマレンは「第五の精霊が、事件の日に声を上げたのを聞いた人がいる」って言ってたよね?

エルサが、第五の精霊のことを知らされたのは、ノーサルドラのキャンプでハニーマレンと話をしていたときでした。ハニーマレンは、エルサが持っていたイドゥナのスカーフを手にとり、その模様を指差して説明しました。

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ハニーマレンのセリフは次の通りでした。(和訳は吹き替えセリフを暗記してないので、私なりの訳)

There's a fifth spirit. Said to be a bridge between us and the magic of nature.
第五の精霊がいるの。私たちと自然の魔法をつなぐ架け橋だって言われてる。

Some say they heard it call out the day the forest fell.
森が閉じ込められた日にその声を聞いたっていう人もいるわ。

 

この台詞が真実なら、イドゥナさんが第五の精霊ということになってしまいますが、イドゥナさんには魔法の力はありませんでした。エルサこそが第五の精霊だったということは、Show Yourselfの中盤4エレメントの中央にエルサがいわゆる「足ドン」したときに全ての記憶が再生され始めることから明らかです。

つまり、ハニーマレンの供述が間違っているということになります。
まあ結局、森であの日何が起こったかをわかっている人はいないようですし、そもそもハニーマレンは年齢的にも34年前にそこにいませんから人づての話なわけで、正確とは限りません。

なのでその時聞こえた「声」は、アグナルが聞いた声と同じで、イドゥナさんがゲイルを呼ぶための「声」だったということで良さそうです。

 

 

ではやはりエルサは「声の主:イドゥナ」に「みつけられた」のか?=「♪みつけた〜」は誤訳か?

ここで再び先ほどの歌詞に戻ります。

アグナルが聞いた謎の声、そして他のノーサルドラが耳にして「第五の精霊の声」と勘違いしていた声は「イドゥナさん がゲイルを呼ぶ声」でした。

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そのメモリーが再生された後、大人になってエルサを寝かしつけてるシーンであろうイドゥナさんのメモリーが大画面に映し出され、エルサに向かって歌います。

 

[IDUNA] 
Come, my darling, homeward bound 
おいで愛しい子、帰り道へ
おいで 良い子よ
 

[ELSA] 
I am found
みつけてもらえた
みつけた

 

これを見てエルサがいうのがこの台詞。「I am found」です。

直接的には、やは6年前船旅に出て以来会うことができなくなっていた母イドゥナさんにみつけてもらえた、というのがしっくりくるかもしれません。

しかしこのイドゥナさんは、まるで『リメンバー・ミー』のように骸骨となってそこに存在しているのではなく、あくまで水が記憶している「過去の記録」です。

私は「(イドゥナさんに)みつけてもらた」という方こそ意味が通りにくいのではないかと考えます。

 

では、エルサは「誰」にみつけられたのか?

私はエルサが、エルサ自身によって、「みつけられた」のではないかと考えます。

つまりこれまでエルサがInto the Unknown以来ずっと「you」と呼んできたのはエルサ自身のことだったのではないか、と。

そしてエルサを呼んだいたのも、イドゥナさんの声を通した自分が呼んでたのではないか、と。

なんじゃそりゃ、と思われるかもしれませんが、これにはいろいろな根拠があります。

 

根拠1) イドゥナ「♪You are the one you've been waited for all of your life」

まずShow Yourselfの続きの歌詞を見ると、こういう一節があります。

 

[ELSA & IDUNA] 
Show yourself  /   Step into the power
みせてよあなたを /  パワーの世界へ踏み込み
大きな  /  力 受け入れ

Throw yourself  /  Into something new
身を投じて  /  あたらしい何かへ
新しい  /  
自分になる 

[IDUNA & Chorus]
You are the one you’ve been waiting for
あなたこそあなたが待っていたもの
待ってたのはあなた

[ELSA] 
All of my life
私の人生ずっと
今日まで

[Chorus]
All of your life
あなたの人生ずっと
今日まで

[ELSA] 
Oh, show yourself
あぁみせてよあなたを
さあ 見せて

 

You are the one you’ve been waiting for / All of your life
あなたこそあなたが待っていたもの  / あなたの人生ずっと

この一節は、曲前半にエルサがソロで歌う、

Are you the one I’ve been looking for /  All of my life? 
あなたこそ私がずっと探していたものなの  /  私の人生ずっと?
会えるときを 夢に  /  
見てたわ

や、

You are the answer I’ve waited for /  All of my life? 
あなたこそ私が待ち続けた答えなの /  私の人生ずっと?
不思議なこの力  /  なぜなの

と同じメロディであり、これに対する直接的なアンサーなわけです。(なお、赤字を見てわかるように、吹き替えだと全然対応していないので、繋がりがわからなくなってしまっています。)

 

つまり、エルサが人生ずっと探していたもの、人生ずっと待っていた答えは、自分自身だったというのです。

まだ納得できないというかたもいるかもしれません。次の根拠にいきます。

 

根拠2)アナのセリフ「When are you going to see yourself the way I see you?」

冒頭、ジェスチャーゲームをしているときに「声」が聞こえてきたエルサは、部屋へ一人戻ります。そこへ現れたアナに、声が聞こえることを告白しようと思いつつもやめてしまうエルサ。代わりに彼女の口から出た言葉は、「I just don't wanna mess things up.(台無しにしたくないの)」。それに対するアナのセリフが次の通りでした

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What things? You're doing great.
台無しにするって、何を? エルサはよくやってるじゃない。
Oh, Elsa, when are you going to see yourself the way I see you?
あぁ、エルサったら、いつになったらエルサは、私がエルサを見るような見方で、自分のことを見られるようになるわけ?

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この直後、エルサはアナによって歌われる「All Is Found(魔法の川の子守唄)」によって眠りにつき、そして再び「声」によって起こされて歌い始めるのが「Into the Unknown」な訳です。

アナがエルサに言っているセリフは非常に重要だと考えられます。
つまりこれは、「エルサが自分自身に対する見方が変わったとき、その答えが全て見つかるだろう(All will be found)」というわけです。アナちゃんは無意識のうちにこういうヒントを出していたのではないか、と。

つまりエルサはここから、「未知の旅」という名の「自分再発見の旅」に出ると解釈できます。

 

根拠3)「鏡」に映るのはエルサだけ

そうして始まる Into the Unknown。扉を開いて廊下に出たエルサは歌い始め、その後すぐに廊下にある鏡のところへ歩み寄ります。
エルサは鏡に映る自分を見て、歌います。

There’s a thousand reasons I should go about my day
私が日常を送るべき理由は千とある
どこかで呼ぶ 謎めいた声

And ignore your whispers which I wish would go away
だからあなたのささやきを無視するの
どこかへ消え去って欲しいの、切実に
無視をすれば 消えてゆくのか

「You」といいながら、すでに鏡に映る自分自身を見つめて歌っているわけですが、なぜこのシーンが重要かといえば、「鏡」が出てくるのはこの映画で2箇所だけだからです。ここと、もう1箇所は両親の乗っていた船の中にある「割れた鏡」です。
船のシーンではアナとエルサとオラフがそこにいますが、その割れた鏡に映るのも、エルサだけです。

そして私が鏡に注目するのは、何よりこのFrozenシリーズで、鏡は非常に重要な意味を持つからです。

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一作目では「鏡」は登場しませんでした。なぜなら、原作雪の女王の鏡のメタファーを「ハンス王子」という形で使っていたからです。このことは2014年時点でのジェニファーリー監督へのインタビューで本人の口から明らかになっています。日本語解説記事はコチラに詳しいです。5年前の記事で懐かしいという人も多いのでは?笑

そのため、2作目の冒頭のしかもものすごく宣伝で推されているInto the Unkownというビッグナンバーでデカデカと鏡が登場するということは、意味を持っているというふうに解釈して良いと考えられるわけです。

johnaugust.com

rednotebook.blog.shinobi.jp

 

根拠4)「水面」はプリンセスの証拠!プリンセスのトレンドは「心の声」!

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さてまだInto the Unknown の続きを検討します。この後エルサは、もう一つ扉をあけて、エルサがかつて戴冠式の日にフィヨルドを凍らせてしまったあたりの岸辺に出てきます。そこで歌い始めると、エルサはいつの間にか水面に映る自分を見つめています。

カメラは、エルサからチルトダウンし、水面に映るエルサを捉えます。

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はい水面が映ったということは、そういうことですね!

ikyosuke.hatenablog.com

シュガー・ラッシュ:オンラインことRalph Breaks the Internet を観た人はわかるようにプリンセスたち自身が認める「水面」を見つめると歌い出せるのが自分の心から望む本当の「夢」「のぞみ」であることを。

ムーラン:But sometimes, your song can't start untill you go someplace to reflect.
でもね、場合によっては、どこか自分が反射する場所へ行かないと歌が始まらないの。

ポカホンタス:What works for some of us is finding a form of water and staring at it.
私たちの中にはこうやるとうまく行く人もいるの。水面を見つけてじっと見つめると。

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はい、まさにこの水面を見たシーンから、一度はテンポも落ちてゆっくりになっていたエルサの歌は、だんだんテンポを上げていって一気に好奇心に満ちた、前向きな歌へと変わっていきます。

ある意味で、 Into the Unknown はエルサが水面を見つけた後半からがいわゆるプリンセスが夢を歌う「I Wish Song」といえるわけです。

 

で、なぜこれが重要かといえば、プリンセスの文脈で考えよ、というヒントだと捉えられるからです。Frozen2をやる前の最新のディズニーのプリンセスは、モアナでした。

(もちろんヴァネロペも「She IS a Princess(ホンモノのプリンセスね)」と認められてはいますが、正式なプリンセスではありませんので割愛します。)

 

プリンセス分析についてはこちらをご参照ください。

ikyosuke.hatenablog.com

 

モアナが特に重要なのは(何度か私がここのブログでも引用させていただいているdpostさんの記事に詳しく書かれているように)始まりは「呼ばれるから呼ばれる場所へ向かう(the sea calls me)」という受動的なものでも、「I AM MOANA」と自己定義することによってゴールにたどり着ける。
たとえ向かう先が同じであっても「自分自身の意思で、自分自身の決定にしたがって進む」のが重要であるのだということを、メインテーマでありI Wish Songである「How Far I'll Go」のメロディに5音節「I AM MOANA」というフレーズを加えることで再現したという素晴らしいリン=マニュエル・ミランダの音楽マジックで強調しているわけです。(詳しくは読んでください。)

dpost.jp

 

で、まさに今回のエルサは、モアナの後初めて公開されるウォルトディズニーアニメーションスタジオによるミュージカルアニメーション映画です。

もちろん、多くの人がご存知のようにFROZENはDisney Princessのフランチャイズとは別で、アナもエルサも正式な「Disney Princess」ではありません!

それでも、やはりこのプリンセスの文脈抜きで考えることはできないでしょう。特に、水面に映る自分を見つめるシーンがわざわざ入れられていますから。

ということはどいうことかというと、モアナまでアップデートされてきたプリンセス像というのを前提にして、今作も作っていますよ!というメッセージと捉えられます。

ですので、エルサが受動的に「母イドゥナ」あるいは「アートハラン(仮に自我があるなら)」あるいは「別の神的な何か」に『呼ばれて(受動的に)』行ったということではなさそうだ、と考えられるわけです。

ディズニープリンセスの文脈を踏み、モアナよりも新しいプリンセスであることを考えれば、そしてまたこの映画が非常にメタ的な表現を連発していることを考えれば(シュガーラッシュオンラインのプリンセスシーンも前提にしているわけですから) 、「(結果として)自分を呼んでいたのは自分だった」というのが一番しっくりくる描き方なのではないでしょうか?

 

ですので、私は「みつけた」のも「みつけられた」のもエルサである、と考えます。エルサ自身がエルサ自身をみつけられた。アナが暗示したように、エルサの自分に対する見方が変わった、ということではないか、と。

それの手助けとなったのが、イドゥナがアグナルを救うために行った真実の愛の行いの結果である「声」だった、と。

しかしその声は実はエルサの心の中でこだまする「心の声」だったのだ、と。

 

私がたどりついた暫定的な結論

この記事の目的は、なぜ歌詞の「I am Found(みつけられた/みつけてもらえた)」が「見つけた」でWDJ的にOKになっているのかを探すことでした。

高橋さんの方の訳詞が音節数的に「みつけられた/みつけてもらえた」が入らないのは仕方ないです。でも字幕では入るでしょう、という意見もあります。

 はい、私も入ると思います。

それでも字幕・吹き替え共に「みつけた」でGOが出たのは、上に書いてきた通り、「エルサが、自分の心の声に従い、自分によって自分を見つけた」という「心の声」的な解釈をし「自発的な」「自己定義をする」「I AM MOANA的な」プリンセスということで、受動態ではなく能動態の「みつけた」でGOを出した!ということではないでしょうか?

これは翻訳者やWDJ関係者にインタビューすれば一発で答えが出る話ではあるかもしれませんが、私なりにはこれで納得しています。

 

何せ「心の声」は2019年の実写ジャスミンでも曲のタイトルになる程ですし、今作にもアナの歌にも出てきますし、トイストーリー4でも、モアナでもキーワードでしたよね。WDJが大好きな言葉です。

 

わざわざ Into the Unknownの日本語タイトルに「イントゥ・ジ・アンノウン〜心のままに」って付けてきたくらいですから。笑

このなくてもいいサブタイトルについては、子どもにとって覚えやすくするためではないかという憶測も飛んでいましたが。真相はいかに。

 

ikyosuke.hatenablog.com

 

おまけ 絵本にアンサーが書いてある件について。。。

でこれは答え合わせ的になってしまうのですが、絵本LITTLE GOLDEN BOOKシリーズのFROZEN2の絵本にはしっかりこう書いてあります。

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The voice that had called to her now quieted to a whisper, and she realized it had been within her all along.

エルサのことを呼んでいた声は、もう囁き程度に静かになりました。そしてエルサは気づいたのです、その声はずっと彼女自身の中にあったのだということに。

ということで、あっさり答えらしきことを書いている絵本もあったりします。。。

まあほぼこれで検証してきたことがコンファームされたのではないかな?と思います。

Frozen 2 Little Golden Book (Disney Frozen)

Frozen 2 Little Golden Book (Disney Frozen)

 

  

残された問題:エルサ以前に「第五の精霊」はいたのか?

しかし、これだけは私の中でも解決しませんでした。

たとえハニーマレンが言っていた「あの事件の日に第五の聖霊の声を聞いた人もいるとか」が間違いで、それはイドゥナさんの声だったとしても、「第五の精霊がいるらしい」「私たちと自然の魔法の架け橋になるらしい」という話がエルサの登場以前からあったかもしれないという点は説明がつきません。

 

考えられることとしては、例えば

第五の精霊はあの事件以前には必要なかった。なぜなら自然の魔法の恩恵を受ける全ての人(ノーサルドラ)が、自然をリスペクトし、愛していたから。しかし、アレンデールのルナード国王が自然を傷めるるようなダムを作り、そのダムをめぐって殺し合い(というかルナード国王の一方的な虐殺)を始めたことから、自然と人間の間の関係が壊れ、聖霊と人間の間をつなぐ架け橋としての第五の聖霊の役割が必要になった。

そのとき、真実の愛の行いを示したイドゥナさんを見込んだ「なにものか」がイドゥナさんとその救った対象であるアグナルに「何か」を託し、そこから生まれた「エルサ」が第五の精霊となり、「アナ」はそのもう一端を担うことになった。

 という説です。

しかしこれでは事件以前に作られたスカーフに第五の精霊を示す中央の模様が描かれていることが説明つきません。

一方で、私たちとエルサはハニーマレンの語りでしか第五の精霊の話を聞いていないことから、本当に事件以前から中央の模様を「第五の精霊を表すもの」と考えられていたかどうかは確認ができません。

もしかしたら、希望を失ったノーサルドラの人の誰かが、第五の精霊説を勝手に根拠なく唱え始めた可能性はあるかもしれません。 

 

この件について何か考察された方などいらしたら、コメント欄やツイッターアカウント@westergaard2319 へリプライや@ツイートなどで教えていただけると大変嬉しいです。

 

さてFrozen2公開からまだ一週間ですが、いろいろな考察や感想がウェブ上を飛び交っていて、これからもきっといろんな解釈や分析、考察がなされていく1作目と同等に、あるいはそれ以上に愛される作品になるんだろうな、と幸せに浸っています。

まだまだスクリーンに観に行ける幸せをひしひしと感じながら、リアルタイムで生きていてよかったなと思う今日この頃です。

 

 

追記)Twitterで解釈についてのアンケートをとってみました!

12月2日に、Twitterの方でみなさんの解釈のアンケートをとっていました!
結果は、次の様な感じ。

1)アートハランに独立した意思はある(全336票)

ー ある (61%)

ー ない (33%)

ー 上記以外のその他の説 (6%)

 

2)エルサを呼ぶ意志があるのは何?誰?(全277票)

ー エルサ自身 (38%)

ー アートハラン(エルサと別人格) (43%)

ー イドゥナ (19%)

 

3)エルサに聞こえている声が誰の?何の?(全291票)
(呼ぶ意志があるのが誰かはともかくとして)

ー イドゥナがアグナル救助時に出した声 (33%)

ー アートハランが今出している声 (34%)

ー エルサの心の中で響いている声 (33%)

 

 

 

 

追記)お寄せいただいた「第五の精霊」の解釈

すもも(@smmtalk)さんから、「元々はアートハランが第5の精霊だった説」というのをお寄せいただいた。

まず、すももさんの理論では、アートハランには水や氷、雪があることから、エルサの持つ不思議な力と要素が同じととらえている

まず、イドゥナのスカーフに第5の精霊を示す模様があったのは、かつてその存在を知っていた者が描いた。それでも、ノーサルドラの人々にアートハランという第5の精霊が言い伝え程度にしか馴染みがなかったのは、自分の意思で自由に動くことが出来る他の精霊たちと違い、唯一その場に行かなければ存在を知ることが出来ない“土地(島)”だったから

これを前提としたすももさんの説明はこうだ。

1)ノーサルドラとアイルランドが対立したことに怒った4つの精霊は、二度とノーサルドラの人々に危害が及ばないようノーサルドラを霧で包み込むことで人々を守った(4つの精霊の愛) ※エルサたちが霧の中へ入ったとき、精霊たちがエルサたちを大変な目に遭わせたのは、危害を与える可能性のあるアレンデールの人からノーサルドラの人を守るため

2)かつて交流のあったノーサルドラとアレンデリアンを元の関係性に戻すため、他の精霊と違って自ら動くことが出来ない(島だから)アートハランが、アレンデールへ行ったイドゥナに、アートハランが持つ第5の精霊としての不思議な力を与え、それをエルサが受け継いだ。

 

《 精霊のまとめ 》

・第五の精霊アートハランがイドゥナに託したもの = エルサの力

・他4つの精霊

 

その上で、エルサに声が聞こえるようになった理由は次のように説明している。

1)アートハラン:精霊と人々との繋がりを再び取り戻したい

2)イドゥナ/アグナル:アレンデール国王たちの最期と航海の意味を伝えたい

3)エルサ:自分が何者なのか何のために生まれたのか知りた

それぞれの願いがエルサへ謎の声となって突然聞こえるようになり、結果的にエルサをアートハランへ導いた

※声自体はイドゥナの声だが、声の内訳は上記それぞれの意思の合わさったもの

 

 

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