はじめに
2020年5月14日木曜日、TBSラジオ アフター6ジャンクションの午後8時からの枠で、音楽ライターの小室敬幸さんによるアナと雪の女王の音楽分析が放送され、話題を呼びました。
小室さん自身は過去にもFrozen、アナと雪の女王シリーズの音楽分析を兼ねてからされており、私が見つけた限りではすでに2本ほど挙げられています。
今回の放送では、以下の2本の記事の内容についても触れながら、さらに包括的に1作目と2作目で共通して使われるメロディやライトモティーフについて言及されました。
この記事執筆時点では、まだその放送がradikoで聴くことができますが、いずれ聴くことができなくなってしまうため、またエリア外の人が聴くことができないという声があったため、今回小室さんの分析を私なりに整理することにしました。
途中途中に私が追記や補足をしている部分もあります。
ちなみに記事の最後には、確認問題がありますので、しっかり最後まで読みながら手元で動画とサントラを再生しつつ、理解できたかを確認してくださいね!(笑)
小室さんが解説したメロディとライトモティーフの一覧
◉前提◉ スコアの「ライトモティーフ」とは?
・一度使われたメロディを、繰り返したり、変奏することで、音楽を使って過去の出来事を連想させる」のが目的。
・音楽学者イエーンの言葉
・ドイツ語のライトは英語でリード:導く
・1879年にはワーグナー自身も使った
アナと雪の女王ではこの「ライトモティーフ」がかなり複雑に組み込まれているが、それがストーリーテリングを音楽の側面から助けている。
この記事では、小室さんが解説した順番に追いながら、映像が公式からYouTubeに上がっていない場合は、そのメロディが流れているシーンのスクリーンショットを掲載したので、自分で手元の映画で確かめてみてくださいね!!
1)<Frozen Heart のメロディ>
・「Frozen Heart(氷の心)」
・「Coronation Day(戴冠式の日)」
・(これは小室さんは言及しなかったが)「For the First Time In Forever (Reprise)(生まれてはじめて(リプライズ))」の終盤のファゴット
2)Let It Go のイントロ=<両親(特に父親)のメロディA>
初めて登場するのは、両親が死ぬシーン。
・「Do You Want to Build a Snowman? 雪だるまつくろう」の間奏
・「Let It Go(レット・イット・ゴー ありのままで)」のイントロピアノ
・(これは小室さんは言及していませんでしたが)アナを再び傷つけてしまったエルサが、動揺しながら真っ赤に染まるアイスパレスの中で歩き回るシーン「Conceal, Don't Feel(落ち着くのよ)」:ここでも両親のことを思い浮かべていることがうかがえる。
3)Let It Go のBメロ=<両親(特に父親)のメロディB>
初めて流れるのは、父アグナルがエルサに手袋を与えて、魔法を隠すように言うシーン。
・「Do You Want to Build a Snowman? 雪だるまつくろう」の間奏
・「For the First Time in Forever 生まれてはじめて」のエルサパート
・「Let It Go(レット・イット・ゴー ありのままで)」のBメロ
4)<「Elsa and Anna(エルサとアナ)」のメロディ>
ここから<エルサのライトモティーフ>と<姉妹の思いやりのライトモティーフ>が派生する。
5)<エルサのライトモティーフ>(4からの派生)
♫シソファミレミ ラード ラード
エルサに関するあらゆるところで使われる。元のメロディ自体も魔法の怪しい感じを反映している。
繰り返されるシーンの例:
「エルサのライトモティーフ」の追い込まれた版は、同じ「Elsa and Anna(エルサとアナ)」の後半の事故直後や「Sorcery(秘められた力)」などに登場。
これらと同じ「エルサのライトモティーフ」は、Frozen2にもたくさん登場する。
6)<姉妹の思いやりのモティーフ>(4からの派生)
♫レードミシー
(小室さんは言及しなかったが、このメロディを背景にしながら初めてオラフが作られる)
繰り返されるシーンの例:
アナが身を挺してエルサを守るシーン ♫ミーレソドーシファラー
7)<Do You Want to Build a Snowman? のメロディ>
<姉妹の思いやりのモティーフ>
♫レードミシー
▶︎長調にして:ファーミラレー
▶︎音の動きを前半後半に分ける ファミ/ラレ
▶︎繰り返しを増やす ファミファ レラレ
▶︎並べ替えると レラレファミファ
=<Do You Want to Build a Snowman? のメロディ>
アトロクで解説したライトモティーフの関係性を楽譜にしてみました!【その1】 #utamaru pic.twitter.com/iyMqb0cO1S
— 小室 敬幸[音楽ライター/ラジオDJ/映画音楽評論家←🆕] (@TakayukiKomuro) 2020年5月14日
8)<4精霊のライトモティーフ>
8−1)アースジャイアントのモティーフ(曲:The Mist, Earth Giants)楽器はGemshorn Flute
8−2)ゲイルのモティーフ(曲:Exodus, Wind, The Ship, Epilogue)
8−3)ブルーニのモティーフ(曲:The Mist, Fire and Ice)
▶︎隣り合った音から離れた音へ:不穏な感じを表現
(小室さんは言及しなかったが、ブルーニやゲイルは、本人たちが登場していなくても、森にエルサらが入った直後、ブルーニの目線やゲイルの目線のカメラで映像が映されるシーンでも演奏されており、見えなくても彼ら?がそこにいることが伝わる演出になっている。)
8−4)ノックのモティーフ(曲:The Ship, Dark Sea)
▶︎水の記憶のライトモティーフでもあり、アートハランのモティーフなので特に重要
エルサが、船で記憶を蘇らせるシーンでも流れる。
9)<The Voice のメロディ>
9−1)歌唱法:キュールニング
The Voice のベースは、キュールニング(これはロペス夫妻が次の動画で公認済み)
1作目に登場したキュールニング
・「Elsa and Anna(エルサとアナ)」:パパママ助けて!
・「Sorcery(秘められた力)」:アナや国民らから逃走、国が凍りつく時
・「Whiteout(氷原)」:ハンスから逃走中
▶︎エルサの「心の叫び」
9−2)ライトモティーフとしての The Voice
・「All Is Found(魔法の川の子守唄)」:後半のサビの背景で奏でられる弦楽器(1:32〜)
・「Into the Unknown(心のままに)」:声そのものだが誰か別の人の声として現れる
・「Show Yourself(みせて、あなたを)」:エルサ自身が一人で歌う=自分の声だと気づく
▶︎エルサを読んでいた「The Voice」は、エルサの「心の声」であることが再確認される
この内容はまさに私が別のヒントを中心に考察したこちらの記事の結論と同じになります。
10)<The Next Right Thing のメロディ>
繰り返される ”The Next Right Thing”
・(1)パビーの台詞
・(2)マティアスの台詞:背景にはメロディの予告がある「Iduna’s Scarf(イドゥナのスカーフ)」
・(3)アナ自身のソロナンバー ”The Next Right Thing”
▶︎Do You Want to Build a Snowmanのメロディの変奏であるThe Next Right Thing
ミシシ ソファ The Next Right Thing
ミシ ミソファソ Do You Want to Build a Snowman
アトロクで解説したライトモティーフの関係性を楽譜にしてみました!【その2】 #utamaru pic.twitter.com/lFzwQQ1TIp
— 小室 敬幸[音楽ライター/ラジオDJ/映画音楽評論家←🆕] (@TakayukiKomuro) 2020年5月14日
小室さんによる作品全体のメッセージの解釈
心の声とは、日常生活で感じる違和感であり、それを無視するのではなくThe Next Right Thing:次にできることをしようということこそがメッセージではないか。
映画全体のメッセージが「The Next Right Thing」であることを別の側面から確認している私の議論はこちらにまとめてあります。
では、最後に確認問題です!!!
この Iduna's Scardf という、アレンデリアンとノーサルドラが再び手を取り合うことになったこのシーンの1曲の中に、これまで紹介したあらゆるメロディやライトモティーフが使われています。皆さんはいくつ見つけられるでしょうか? 再生しながら探してみてください。
私が公開前からサントラのこの曲が素晴らしい、とTwitter で言いまくっていた理由がお分かりいただけるのではないでしょうか?
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ちなみに、お手元のブルーレイにも、「Scoring a Sequel:楽器が奏でる音楽」というタイトルの特典映像に、4精霊のモティーフについてや、モティーフをロペス夫妻のメロディから持ってきていることなどは、スコアを担当しているクリストフ・ベックが語っている様子が収録されているので確認してみてください。