westergaard 作品分析

映画、ミュージカル、音楽、自分が好きなものを分析して語ります。

*Frozen Broadway* 03. Do You Want to Build a Snowman? 歌詞

位置付け (03. Do You Want to Build a Snowman? に至るまでの補足)

Do You Want to Build a Snowmanはリプライズ

おなじみの Do you wanna build a snowman?ですが、ブローズンの場合、このメロディはここが初出ではありません。01. Vuelie / Let the Sun Shine On のVuelie 部分終了後に、昼間から「雪だるま作りたい?」とアナが歌い始め、二人で夜更かしして雪だるまを作る約束をする際に、すでに二人によって歌われています。(二人が対面した状態で Do you wanna build a snowman? と歌っているだけでも胸アツ…という方も一定数いるとおもいますが…)

つまり Do You Want to Build a Snowman? は、二人にとってはリプライズなんですよ!決して離れ離れになってから歌い始めた歌ではなく、もともと二人で歌っていたんです。

 

"Fear will be your enemy, the death its consequence" (恐れが敵となり、死をもたらす)

そしてその夜、二人でオラフを作り、アナがエルサの魔法を褒めて気分が良くなった二人が魔法全開で遊んでいたところ、誤ってアナの頭に直撃させてしまいます。(02. A Little Bit of You

その後、サントラ音源にはなりませんでしたが、氷のように冷たくなるアナを助けるべく、 イデュナ女王が Hidden Folks(映画版でいうトロールたち)を呼ぶための呪文のような歌を歌います。 族長のパビーそしてブルダが姉妹の部屋にどこからともなく入ってきて、パビーがアナから魔法と魔法に関する記憶を消し去ります。

そしてパビーはエルサに告げます。

"Fear will be your enemy, the death its consequence." 

(恐れが敵にとなり、死をもたらす)

後半部分が付け加えられ、かなり深刻なセリフになってます。そしてこれがアグナル国王、イデュナ女王、エルサの中に重く残り続けます。18. Monster にこのセリフがそっくり歌詞となって出てきます。

 

エルサの愛 "It's best for her, is best for me" (アナにとって最善ならそれは私にとっても最善の選択)

それを聞いたアグナル国王は、イデュナ女王のつけていた手袋をエルサに渡し"Keep it inside"と命じ、エルサ隔離を決定。

イデュナ女王は、「姉妹を離れ離れにするのはあまりにも酷い」と拒みます。

しかしエルサは歌います

 

[Elsa]

Mother,  it probably has to be

お母様、多分こうしなきゃいけないのよ

What's best for her is best for me

アナにとって最善の選択なら、それは私にとっても最善な選択

Father, I'll do as you say

お父様、言われた通りにします

 

[King Agnarr]

We'll help you to control it, I know we'll find a way

魔法をコントロールできるようになるため助けるから。方法は見つけられるはず

 

 [Anna]

<意識を取り戻したアナが起き上がる>

"Mommy?"

ママ?

 

[Queen Iduna]

Only until we gain more answers in hand 

We'll find a way back

(こうして離れ離れになるのも)他の答えが見つかるまでのこと

なんとかして方法を探さなきゃ

 

[King Agnarr & Queen Iduna]

to be a family again

私たちが再び「家族」になれるように

そしてこの後実際にリストラされた召使いたちが城を去る様子も再現されます。

 

なかなかDo You Want to Build a Snowman? に入らなくて怒られそうですが、これはスキップするわけにいきません。

 

エルサのアナに対する愛がひとことにぎゅっと詰まっています。

"What's best for her is best for me" 

(アナにとって最善の選択なら、それは私にとっても最善な選択) 

エルサは、全てにおいて、一貫してこのロジックで行動してきたんですね。

ちなみにここでエルサが両親に語りかけるメロディは、後に18. Monster で Father... / Mother... と呼びかけるところのメロディと同じです。

 

アグナル国王とイデュナ女王のスタンスの違いも興味深いです。

アグナル国王はとにかくエルサの力を隠して、隔離しなきゃしか考えてない一方で、イデュナ女王は「姉妹を離れ離れにするのはあんまりだ」と言ったり、隔離が決まっても、隔離はより良い方法が見つかるまでのとりあえずの手段だ、という旨のことを言ったり。

そして何が悲しいって、

We'll find a way back to be a family again

(私たちが再び「家族」になれるように)

 ってことは、今こうやって離れ離れになっている状態は「家族」じゃない、っていう認識なんですね。

(リメンバーミー(COCO)のミゲルのおばあちゃんエレナの言っていたセリフのよう。「一緒にいるのが家族」。裏を返せば、"いま" 一緒にいるアナ、エルサ、オラフ、クリストフ、スヴェンも「家族」ってことですよね。)

 

とにかくこのようなことがあってからの Do You Want to Build a Snowman? なんです!

とりあえず言いたいことは、なぜこんな大事な曲をサントラに入れない!!!!! ということ。

 

それでは  Do You Want to Build a Snowman? の歌詞へ!

 

 

03. Do You Want to Build a Snowman? 歌詞

歌詞と対訳

お待たせしました。ようやくDo You Want to Build a Snowman?です。

映画版からある曲なので、変更・追加された部分がわかるように赤字にしました。

 

※1.歌詞は、私が聴き取ったものになるので正確かどうかの保証はありません。また対訳もざっくりとつけていますのでご指摘やご意見ありましたらコメントしてください。

※2.歌詞だけが見たい場合はこのままみてください。後半では解釈や解説を挟みながら、改めて歌詞を見ていきます。

 

[Anna]

"It's snowing! Elsa?"
 「
雪が降ってる!エルサ?」

Do you want to build a snowman?

雪だるま作りたい?

C'mon let's go and play

ねぇ遊びに行こうよ

I never see you anymore

もうずっと会ってないよ

Come out the door

扉の外に出てきてよ

It's like you've gone away

まるでいなくなっちゃったみたい

 

We used to be best buddies

前は一番の仲良しだったのに

And now we're not

今はそうじゃない

I wish you would tell me why

どうしてなのか教えてくれたらな

Do you want to build a snowman?

雪だるま作りたい?

It doesn't have to be a snowman

他のものでもいいよ

 

[Elsa]

"Go away Anna"

あっち行って、アナ

 

[Anna]

Okay, bye…

わかった じゃあね…

 

[Elsa]

"I'm doing everything you said, Papa. The gloves are helping!"

言われたことは全部やってるの、お父さん、あと手袋、結構使える!

 

[King Agnarr]

"Good. But there will come a day when you have to stand before your people without them. You must be prepared for everything, Elsa. Now again."

良かった。でもいずれ、手袋を外して人前に立たなければならない日が来る。

エルサ、どんなことにも対応できるように備えないといけない。

じゃあ、もう一度。

 

[Elsa]

"Conceal it, don't feel it"

隠して、感じないように

 

[Both]

"Don't let it show"

見せないように

 

[Anna]

Do you want to build a snowman?

雪だるま作りたい?

Or ride our bikes around the halls?

それか広間で自転車に乗る?

I think some company is overdue

なんだか一緒にいるはずの人が遅刻してるみたい

I've started talking to the picture on the walls

壁の絵に話しかけ始めちゃったよ

Hang in there, Joan

がんばって、ジャンヌ

It gets a little lonely

ちょっぴり寂しいな

All these empty rooms

どの部屋にも人はいないし

Just watching the hours tick by

時間がカチカチ過ぎるのをただ眺めてるだけ

 

[Elsa]

"It's getting stronger! I can't laugh, I can't cry, I can't dream, I can't live without it bursting out!"

どんどん強くなってる!笑えないし、泣けないし、夢も見れない!

感情を表に出さないでは生きてけないわ!

 

[King Agnarr]

"Breathe, just breathe"

落ち着いて、深呼吸するんだ

 

[Elsa]

"I can't breath! I can't do anything!"

それもできないわ!何にもできないの!

 

[Queen Iduna]

"This is too much for her, we shouldn't go

Come here, my poor child"

あなた、これはあんまりよ。私たちも出掛けるべきじゃないわ。

ほらおいで、かわいそうに。

 

[Elsa]

"No, don't touch me!

I don't want to hurt you

ダメよ、触らないで!ゲガさせたくない

 

[Queen Iduna]

"Anna! It's time"

アナ!そろそろ時間だわ

 

[Anna]

"I'm going to miss you"

出かけてる間、会えないのが寂しいよ

 

[Queen Iduna]

"We'll only be gone a couple of weeks, my sunshine"

たった二、三週間いないだけよ

 

*(サントラ音源では抜かれているが、舞台ではあった台詞)*

[Elsa]

"Please, do you have to go?"

お願い、どうしても行くの?

 

[King Agnarr]

"There are answers out there, Elsa, to help you, to help all of us"

行けば答え見つかるんだ、エルサ。

お前を助けるためでもあるし、私たち皆のためだ。

*************

 

[Elsa]

"I can't do this here on my own"

一人ではできないわ。

 

[King Agnarr]

"You can, and you must. I'm proud of you"

お前ならできる。いや、やらなきゃいけないんだ。誇りに思うよ。

 

[Elsa]

"I'll try not to let you down, Father"

がっかりさせないように頑張ります、お父様。

 

[Bishop]

"In the name of our King and Queen lost at sea,

航海中に亡くなった我が国王と王女の名において

Arendelle shall honor their ways until our young Queen comes of age

若きエルサ王女が成人するまで、

アレンデールは亡き国王・王女の統治を遵守します。

May they rest in peace"

二人が安らかに眠らんことを。

 

[Anna]

Elsa?

エルサ?

 

[Anna (grown up)]

Elsa?

エルサ?

Please, I know you're in there

ねえお願い、そこにいるんでしょ

I'm just wondering how you've been

あなたが元気にしてるか、ずっと気になってるの

Do you maybe want to take a walk

もしかして散歩がしたいのかな?

Or sit and talk

それか座っておしゃべり?

Or let me in?

あるいは私を中に入れてくれる?

Are you ready for tomorrow?

明日の準備は大丈夫?

It's your big day, is there anything I can do?

あなたにとっては大舞台よね なにか私にできることあるかな?

 

[Elsa]

Do you want to build a snowman?

雪だるま作りたい? 

 

 

 

 

解釈と解説

一番の部分は変更が全くないので、スキップします。

まず一回目のエルサとアグナル王の会話です。

 

 

[Elsa]

"I'm doing everything you said, Papa. The gloves are helping!"

言われたことは全部やってるの、お父さん、あと手袋、結構使える!

 

[King Agnarr]

"Good. But there will come a day when you have to stand before your people without them. You must be prepared for everything, Elsa. Now again."

良かった。でもいずれ、手袋を外して人前に立たなければならない日が来る。

エルサ、どんなことにも対応できるように備えないといけない。

じゃあ、もう一度。

 

アグナル国王は、この頃から手袋を外して人前に立たなければならない日」つまり戴冠式のことを心配していたようです。

 

[Elsa]

"Conceal it, don't feel it"

隠して、感じないように

 

[Both]

"Don't let it show"

見せないように

 

 

続いて、2番も変更がないのでスキップし、次の会話部分へ。

 

[Elsa]

"It's getting stronger! I can't laugh, I can't cry, I can't dream, I can't live without it bursting out!"

どんどん強くなってる!笑えないし、泣けないし、夢も見れない!

感情を表に出さないでは生きてけないわ! 

きました "burst out"。

02. A Little Bit of You で少しだけ触れましたが、この "burst out" もブローズンのキーワードの一つと思われます。

感情の表出=魔法の表出 という演出は映画版ですでになされていましたが、"burst out" という言葉で表現されているのが興味深いです。

映画版では、アナの頭に魔法を直撃させてしまった後に部屋中が凍っていく演出や、戴冠式王笏と宝珠が徐々に凍っていく様子などで表現されますが、映像ではないため舞台ではそれらの細かい演出が難しいことも関係しているのでしょう。

 

[King Agnarr]

"Breathe, just breathe"

落ち着いて、深呼吸するんだ

 

[Elsa]

"I can't breath! I can't do anything!"

それもできないわ!何にもできないの!

 

[Queen Iduna]

"This is too much for her, we shouldn't go

Come here, my poor child"

あなた、これはあんまりよ。私たちも出掛けるべきじゃないわ。

ほらおいで、かわいそうに。

 

イデュナ女王、やっぱり姉妹のこと一番に考えてくれてる…

 

[Elsa]

"No, don't touch me!

I don't want to hurt you

ダメよ、触らないで!ゲガさせたくない

 

[Queen Iduna]

"Anna! It's time"

アナ!そろそろ時間だわ

 

[Anna]

"I'm going to miss you"

出かけてる間、会えないのが寂しいよ

 

[Queen Iduna]

"We'll only be gone a couple of weeks, my sunshine"

たった二、三週間いないだけよ

 

*(サントラ音源では抜かれているが、舞台ではあった台詞)*

[Elsa]

"Please, do you have to go?"

お願い、どうしても行くの?

 

[King Agnarr]

"There are answers out there, Elsa, to help you, to help all of us"

行けば答え見つかるんだ、エルサ。

お前を助けるためでもあるし、私たち皆のためだ。

*************

ここの部分、サントラ音源だとは言っていないんですよね。なぜか。

ここでわかるように、アグナル国王がイデュナ女王を押し切ってまで出かけようとするのは、エルサの魔法をなんとかしようと、その答えを探しにいくために船でどこかへ向かおうとしていたからなんです。

どこへ向かったのかは明かされませんが…

 

[Elsa]

"I can't do this here on my own"

一人ではできないわ。

 

[King Agnarr]

"You can, and you must. I'm proud of you"

お前ならできる。いや、やらなきゃいけないんだ。誇りに思うよ。

 

これ辛いですね…

アグナル国王はポジティブに "I'm proud of you" と言っているんでしょうが、その手前の "You can,  and you must" が今のエルサにとっては重すぎます。

いろんな構造の中でこういう会話やこういうプレッシャーのかけ方、なされてるよなって感じたりしますが、それに対するエルサの返答も切ない。

[Elsa]

"I'll try not to let you down, Father"

がっかりさせないように頑張ります、お父様。

 

このあと、航海中に二人は亡くなりますから、もしこれがエルサとアグナル国王の最後の会話だったと思うと…

"You can, and you must. I'm proud of you"

お前ならできる。いや、やらなきゃいけないんだ。誇りに思うよ。

これがどれだけエルサに重くのしかかり続けたかは計り知れません。

 

そして葬儀です。映画では葬儀にはアナしか出席していませんでしたが、エルサも喪服で登場します。国民を前に主教が語ります。

 

[Bishop]

"In the name of our King and Queen lost at sea,

航海中に亡くなった我が国王と王女の名において

Arendelle shall honor their ways until our young Queen comes of age

若きエルサ王女が成人するまで、

アレンデールは亡き国王・王女の統治を遵守します。

May they rest in peace"

二人が安らかに眠らんことを。

 

アナは話しかけようとしますが、葬儀が終わると早々に、話しかける間も無く去ってしまうエルサ。

 

[Anna]

Elsa?

エルサ?

 

子役のアナはここまでです。そして大人になったアナが舞台に登場。

時間設定は戴冠式の前日。

 

[Anna (grown up)]

Elsa?

エルサ?

Please, I know you're in there

ねえお願い、そこにいるんでしょ

I'm just wondering how you've been

あなたが元気にしてるか、ずっと気になってるの

Do you maybe want to take a walk

もしかして散歩がしたいのかな?

Or sit and talk

それか座っておしゃべり?

Or let me in?

あるいは私を中に入れてくれる?

 

比較対象として映画版を以下に記してみました。括弧書きは吹き替え歌詞。

Please, I know you're in there

ねえお願い、そこにいるんでしょ(ねぇ、ドアを開けて)

People are asking where you've been

みんながあなたがどこにいるのか尋ねてくるの(心配してるの)

They say have courage and I'm trying to

みんなは私を励ましてくれる  だから頑張ってるの(会いたいわ、そばにいれば)

I'm right out here for you

あなたのために 部屋を出たすぐのところにいるわ(支え合える)

Just let me in

私を中に入れてよ(二人で)

 

映画版って結構アナが自己中なんですよね…  もちろん吹き替えで見ると People の要素が消されてるので、あんま気にならないのですが、実は原詞だと「アナとエルサ以外の人たちの存在」が、かなり強調されてるんですよ。(この辺りが「アナ雪」と「Frozen」の違い。)

 

なのでブローズンでの進歩はまず、「アナとエルサ以外の人たちの存在」が削除されたこと。やっぱりここで着目されるべきはアナとエルサの関係であると私は思ってます。

そしてブローズン版のアナはとにかくエルサに対して思いやりを持って接しているのが言葉の一つ一つで伝わってきます。でもやっぱり中に入れてもらいたいんです。そこは映画版とも共通しています。

 

Are you ready for tomorrow?

明日の準備は大丈夫?

It's your big day, is there anything I can do?

あなたにとっては大舞台よね なにか私にできることあるかな?

 

ここで、時間設定がようやく明かされます。エルサにとっての big day つまり戴冠式の前日なんです。そしてアナは、部屋の中にすらいれてくれない姉に対して、「なにか私にできることはある?」って聞きます。

そして大人になったアナは "Do you want to build a snowman?" とは言いません。

 

[Elsa]

Do you want to build a snowman?

雪だるま作りたい? 

 

そう言うのは、扉の向こうで座り込んでいるエルサでした。 

エルサの方こそアナと雪だるまが作りたかったんだろうことが、この一言で伝わってくるようです。

 

 

 

 他のナンバーの記事も更新中。ブローズ関連記事一覧はコチラ↓↓↓

ikyosuke.hatenablog.com