12. Hans of the Southern Isles (Reprise)
位置付け
第一幕の最終ナンバー、Let It
オラフと出会い、アナら一行がエルサの氷の城へ向かい始めた時、アナは凍りついたアレンデールを目にする。アナがアレンデールを心配するセリフを言うと、舞台は場面転換しアレンデールの町へ。
ハンスが映画と同じように、数人のアレンデールの衛兵と共にブランケットを配って歩いている。城門は開放され、ホットグロッグも用意されているとアナウンスするのも映画と同じ。
アレンデールの国民は映画よりもパニックになっており、「王女と女王はまだ戻らないのか?」、「女王は私たちを苦しめようとしているのか?」などハンスへ問います。
そんな中、ウェーゼルトン公爵はヒステリーを起こします。
公爵:「10年間も閉ざされた城の中で生活してきた姉妹が
何をしでかすかわからない。それに姉は魔法が使えるんだぞ?」
ハンス:「こんなやつの言うことは聞くな!」
ウェーゼルトン:「自分は公爵だ!」
ハンス:「僕は王子だ、しかもアレンデールを任されている。
お前を反逆罪で捉えることもできるんだぞ!」
そこへ、ノースマウンテンの麓で見つけたと言ってアナの戴冠式用ドレスを拾ってきた男性が現れる。
これは、アナがクリストフの持っていた予備の登山服に着替えた際に、アナから一時的に預かっていたクリストフが山へ投げ捨てたドレスなわけだが、そんな事情を知らないハンスはアナに何かあったと察し、探しに行くための義勇兵を募る。
しかし、ウェーゼルトン公爵はこれはモンスターの女王と、共に悪巧みをしている王女による罠だと言い出す。
こうしてハンスの歌のリプライズが始まります。
歌詞と対訳
[Duke of Wessleton]
"It's a trap!"
「これは罠だ!」
[Hans]
"Enough, please"
「もうたくさんだ、やめてくれ
"What the Queen's motivations are, I cannot say"
たしかに女王の動機は僕にもわからない
"But I assure you, Anna is pure and noble"
でもこれだけは保証する、アナが純粋で高潔だということは」
[Duke of Wessleton]
"Why should we listen to you?"
「どうしてお前の指示に従わなきゃいけないんだ?」
[Hans]
I'm only the thirteenth son of a king
僕はただの13番目の王子です
Nor am I your leader, only her fiancé
指導者ではありません、ただ彼女の婚約者なだけ
But my love for her has made something clear
でも彼女へ愛を抱いたことでハッキリわかった
We can't give
僕らは、恐怖に負けてはいけない!
Not here, not today
今日、ここで終わるわけにはいかない!
We can't know how threatening
The road ahead will be
向かう先がどれほど危険かわからない
But put your faith in Anna
The way that Anna put her faith in me
それでもアナが僕に信頼をおいたように
君たちもアナを信じてみるんだ
I can't tell you what the princess sees in me
アナ王女が僕になにを見出したのかはわからない
But let me tell you what an honor it would be
でも一つだけ言わせてくれ
どれほど光栄なことか
If you could let me lead you through this time of trials
この苦難が終わるまで
皆さんが僕に指揮を取らせてくださるならば
You ask for a leader, a servant responds
リーダーが必要なら
この一人の奉公人が応えます
Trust Hans of the Southern Isles
サザンアイルズのハンスを信用してください
[Female]
"But what of the cold?"
「でもこの寒さは?」
[Male]
"What of the Queen?"
「女王は?」
[Female]
"What if she really is a monster?"
「もし本当にモンスターだったら?」
[Hans]
"Then she will be dealt with"
"And Anna and I will lead you back to Summer"
「もしそうなら彼女のことは適切に対処せねば
アナと僕は、君たちのもとへ夏を取り戻します」
[Duke of Wessleton]
"Go along with it!"
「協力してやれ!」
[Duke s Man]
He's more than the thirteenth son of a king
彼は13番目の王子にはとどまらない存在だ
[Female]
We're lucky he came along at our time of need
彼が今この場にいてくれて幸運だ!
[Male]
We'll never give in to fear and treason
我々は恐怖や裏切りには負けない
[Female]
Let's listen to reason
理由を聞き入れて
[All]
And follow his lead
彼の先導に続こう
[Hans]
Who will come with me?
僕とともに来る者は?
[Duke of Wessleton]
My men and I, my lord
私の部下と私が行こう
Yes Wessleton arises and offers up the power of his sword
ウェーゼルトンが立ち上がり、この武力で協力しよう
[Hans]
I call to your kingdom
アレンデール王国へ呼びかける
[All]
Our kingdom responds to Hans of the
我が王国は応えよう
Prince Hans of the Southern Isles
サザンアイルズのハンス王子の申し出に
解釈と解説
[Duke of Wessleton]
"It's a trap!"
「これは罠だ!」
[Hans]
"Enough, please"
「もうたくさんだ、やめてくれ
"What the Queen's motivations are, I cannot say"
たしかに女王の動機は僕にもわからない
"But I assure you, Anna is pure and noble"
でもこれだけは保証する、アナが純粋で高潔だということは」
アナが「純粋」で「高潔」なことを保証するってハンスが言うんですね。
ハンスはアナの純粋さをしっかり見抜いていて、それを国民に告げる。
ここではその「純粋さ」がすごくポジティブに捉えられていますが、ハンスの中では、その「純粋さ」を利用しようという展開になっていくわけです。
[Duke of Wessleton]
"Why should we listen to you?"
「どうしてお前の指示に従わなきゃいけないんだ?」
ここから歌になります。
[Hans]
I'm only the thirteenth son of a king
僕はただの13番目の王子です
Nor am I your leader, only her fiancé
指導者ではありません、ただ彼女の婚約者なだけ
「僕はリーダーじゃない。王女のフィアンセなだけだ。」ってハンスがしっとり歌うんですよね笑
「あ、そうだったわ、この人一応、王子だったわ」ってなりました。
(自分の中のイメージでは舞浜のフロファンのパレード最後尾で繋がれて、衛兵に怒られてるイメージの方が強いので 笑)
But my love for her has made something clear
でも彼女へ愛を抱いたことでハッキリわかった
We can't give
僕らは、恐怖に負けてはいけない!
Not here, not today
今日、ここで終わるわけにはいかない!
出ましたキーワード "fear"。やはり敵は「恐怖」なんです。
"Frozen" は "Fear" で凍りついた世界を "Love" で溶かす話なので、やっぱり超重要です。
このキーワード一番最後のフィナーレの Let It Go リプライズのところで総括されるので、その時にまとめて語りますね。
ちなみに、もう一つ注目すべきは、少なくともハンスは(本心はともかくとして)アナに対して「愛を抱いた」と、アレンデールの人々に対し明言してます。(これも戦略の一部なのか??)
We can't know how threatening
The road ahead will be
向かう先がどれほど危険かわからない
But put your faith in Anna
The way that Anna put her faith in me
それでもアナが僕に信頼をおいたように
君たちもアナを信じてみるんだ
アナが僕を信頼したみたいに、みんなで彼女を信じてみよう!って呼びかけて支持を得るハンス。どこまでも他人を利用するのが上手いこの王子。
I can't tell you what the princess sees in me
アナ王女が僕になにを見出したのかはわからない
But let me tell you what an honor it would be
でも一つだけ言わせてくれ
どれほど光栄なことか
If you could let me lead you through this time of trials
この苦難が終わるまで
皆さんが僕に指揮を取らせてくださるならば
You ask for a leader, a servant responds
リーダーが必要なら
この一人の奉公人が応えます
Trust Hans of the Southern Isles
サザンアイルズのハンスを信用してください
これ、要するにハンスの「立候補演説の歌」なんです。
アレンデールの国民や、戴冠式に来てた来賓たちに信用してもらい、ついて来てもらうための、演説なんです。
"a servant responds" はイメージとしては、どこかの政治家が「一兵卒ですが」って言ったみたいに謙遜してるってことでいいと思います。
そしてリプライズで注目すべきは、何が「言い換え」られているか。
アナと出会った時に歌われたのは、
"Just Hans of the Southern Isles"
(王子かどうかと言う肩書きはどうでもよく、一人の人間としての)
サザンアイルズのハンスです。
という、謙遜でしかも自信なさげな感じを前面に押し出す歌詞だったわけですが、
ウェーゼルトンに対抗して、僕は王子だ!と名乗った流れで始まるこの歌では、
"Trust Hans of the Southern Isles"
サザンアイルズのハンスを信用してくれ
と、高らかに歌います。
[Female]
"But what of the cold?"
「でもこの寒さは?」
[Male]
"What of the Queen?"
「女王は?」
[Female]
"What if she really is a monster?"
「もし本当にモンスターだったら?」
[Hans]
"Then she will be dealt with"
"And Anna and I will lead you back to Summer"
「もしそうなら彼女のことは適切に対処せねば
アナと僕は、君たちのもとへ夏を取り戻します」
"Then she will be dealt with" これもポイントですね。
Then が指す内容は、エルサが本当に「Monster」だったならばってことで、
エルサがMonsterならば、she will be dealt with
この場合の deal with は、対応する、折り合いをつけるあたりでしょうから、「適切に対応」せねばという。
場合によっては拘束したり、殺すこともあり得るっていうことの示唆でしょうか。
[Duke of Wessleton]
"Go along with it!"
「協力してやれ!」
[Duke s Man]
He's more than the thirteenth son of a king
彼は13番目の王子にはとどまらない存在だ
ウェーゼルトン公爵は、アレンデールの国民からある程度信頼され期待されているハンスに刃向かわないほうが吉、と判断したのか、手のひらを返すように部下にハンスに協力するよう言います。
そしてウェーゼルトンが手のひらを返すと同時に、次々にハンスの思惑通り(?)ハンスへ協力を申し出る声や、ハンスを必要だ!とする声が上がっていきます。
[Female]
We're lucky he came along at our time of need
彼が今この場にいてくれて幸運だ!
[Male]
We'll never give in to fear and treason
我々は恐怖や裏切りには負けない
[Female]
Let's listen to reason
理由を聞き入れて
[All]
And follow his lead
彼の先導に続こう
[Hans]
Who will come with me?
僕とともに来る者は?
[Duke of Wessleton]
My men and I, my lord
私の部下と私が行こう
Yes Wessleton arises and offers up the power of his sword
ウェーゼルトンが立ち上がり、この武力で協力しよう
[Hans]
I call to your kingdom
アレンデール王国へ呼びかける
[All]
Our kingdom responds to Hans of the
我が王国は応えよう
Prince Hans of the Southern Isles
サザンアイルズのハンス王子の申し出に
そして、Trust Hans of The Southern Isles といったハンスの申し出に対し、
最後の部分では、一同が Prince Hans of the Southern Isles と答えます。
自分では言わず、みんなに Prince として慕わせる。なんという…
ここまで対訳つけて解釈して来た今、感じることが一つあります。
これ、曲調こそ全然違うけど、美女と野獣の The Mob Song 『夜襲の歌』で、ガストンの扇動に乗らされていく町の人たちを見ているような気分になってしまう…
あれも「恐怖」による支配。
脅威の対象としての「野獣」の存在を誇張することで、町の人たちの「恐怖心」を煽り、一致団結させる。
構造としては、ハンスがやっていることと一致。
しかし「恐怖心を煽る」部分に関しては、ハンス自身ではなく、ウェーゼルトンに担わせて、その上でアナの純粋な思いを利用するというハンスの方がガストンよりは何枚か上手。
一体なんなんだこの王子は…
ということで、この直後、
ウェーゼルトンが、部下に対し、「女王に出くわしたら、冬を力づくで終わらせるぞ」
と伝えるシーンを挟んで
第一幕の最終ナンバー、Let It Go が始まります。
Let It Go は数日前に動画が出ましたね!
Frozen The Broadway Musical's Caissie Levy Performs 'Let It Go'