はじめに
アナと雪の女王2公開からだいぶ経ちましたが、マティアスが歌う予定だった曲がいまだにフルで公開されていません。
Disney+で配信されている、メイキングドキュメンタリー「Into the Unknown」においては、その曲がカットされることになった試写とストーリートラスト会議の様子が紹介され、一部分のみ音源のついたストーリーボードが紹介されました。また一部分のみ歌詞の書かれたスクリプトが画面に映ったことから、その歌詞を書き出したものが現在 Disney Wiki の中に掲載されています。今回はせっかくなので、ここに掲載されている歌詞を和訳したいと思います。
See the Sky とは?
See the Skyというのは、もともとエルサ一行が魔法の森に入っていき、マティアスら閉じ込められたアレンデール兵の集団と、イエレナが長をつとめるノーサルドラの人々に会った後、両者が口論をはじめそれに伴って過去のことやエルサへの期待が語られる歌だったようです。
メイキングドキュメンタリーを観る限りでは、試写とその直後のストーリートラスト会議では全体としてあまり評判が良くなく、すぐにカットが決まったような印象でした。実際はどうだかわかりませんが、Tangled:塔の上のラプンツェル、やZootopia:ズートピアのバイロン・ハワードは「あの曲を入れる理由は?」と問うていたり、次回作 Raya and the Last Dragon(邦題未定)の共同監督ポール・ブリッグスは曲があることで混乱し、話が追えな区なるなどとコメントしていました。
そもそもマティアスには何らかの歌が用意される前提でキャスティングが進められていたようで、声を担当したスターリング・K・ブラウン自身もオーディションで歌も歌ったのに、という発言をこのメイキングだけでなく他の取材においても解答していたことはあちこちで語られています。
作詞家のクリステン・アンダーソン=ロペスは、この歌について、閉じ込められたアレンデール兵と、ノーサルドラの2つの集団から、エルサにプレッシャーをかけ、エルサが自分自身を彼らのために犠牲にしようと思わせるためにある曲だと説明していました。
エルサ の自発性を大切にするのだとしたら、このプレッシャーは非常に押し付けがましいものになってしまうので、カットされたのもわからなくはないですが。ここまで作ったということは何かしらもっと大きな意図があったようにも思えますが、あまりうまく読み取れるほどの情報がありません。
それでは、歌詞を掲載し、対訳をつけていきます。
歌詞・対訳
[Mattias]
Please understand the hope you bring
わかってください、あなたが希望をもたらしたこと
Your highness, we've tried everything
殿下、我々はあらゆることを試しました
We even once tried getting along
我々は手を取り合ったことさえあったのです
[Mattias, Yelana]
It didn't stick.
うまくいかなかったけど
[Yelana]
Nature wields an iron fist
自然は無慈悲な拳をふるってくる
[Mattias]
You twisted it and caused this mist
おまえたちが自然をこじらせてこの霧を起こしたんだろ
[Mattias, Yelana]
And everything you stand for is wrong!
おまえたちの支持する考え方はどれも間違ってる!
[Anna]
Tension.
落ち着いて。
[Ryder]
But that's behind us
でもそれももう、過ぎたこと
[Ryder, Honeymaren, Soldier]
Our words and weapons do no good
言葉も武器も何も役に立たない
[Yelana, Mattias]
You're the answer...
あなたこそが答え
[Yelana, Mattias, Honeymaren, Ryder, Soldiers]
...to a riddle
この謎を解くための
[All]
We never understood
我々にはずっとわからなかった
[Anna]
She's just one person!
でもエルサはただのヒトよ!
[All]
Yes
そう
You
あなたが
The gift nature gave us!
自然が我々にもたらした恵み
You
あなたが
Are here to save us!
我々を救いにここへ
Use your power, hear our cry!
力を使ってくれ、我々の嘆きを聞いてくれ
You're our only hope
あなたが唯一の希望なんだ
To ever see the sky
あの空をまた見るために
You
あなたが
Our only salvation
我々の唯一の救世主
[Elsa]
I want to give this to you!
あなたたちのためにしてあげたい!
****
[All (cont.)]
You
あなたが
Could be the solution
解決をもたらすのかも
[Elsa]
I want to give this to you!
あなたたちのためにしてあげたい!
[All]
You
あなたが
Are our resolution
我々にとっての解決策
[Elsa]
I'll do all I can do!
私にできることは全てする!
[All]
Sky or die!
空か死か!
It's do or die!
やるか死ぬか!
Do or die!
やるか死ぬか!
Do or die!
やるか死ぬか!
[Anna]
Can we NOT use that word?!
あの〜 その言葉使わないでもらえる?
[All]
This is the day
今日こそ
To see the sky
空を見られるか
You are the way
あなたが導き
We're gonna see the sky!
我々は空を見られる!
Set us all free
我らに自由を
To see the sky
空を見られるように
You are the key
あなたがカギだ
We're gonna see the sky!
我々が空を見るための!
****
おわりに
メロディのついた状況でないとなんとも言えないというのと、歌詞もこれで全てなのか、もっと前後に何かがあるのか、あらゆることが謎ですが、それを踏まえたとしてもちょっと微妙感が漂っていますね。
一曲の中で心情の変化や物語を展開していくのが売りのロペスソングにしては、内容がないような気がします。
これがあった方が最後の青空のシーンが引き立つのでしょうし、またイエレナとマティアスという全世代の代表者たちと、ライダー、ハニーマレンらの次世代とで考え方が少し違うことなどは表現されているように思いますが。
それにしても sky or die, do or dieを繰り返すところは、ダークユーモアにしても程があるだろ、と歌詞だけ見ていても思ってしまいました。アナが露骨にdieという言葉に対して難色を示すのがリアルで面白いですけども。
これよりは最終版で入った、Vuelieのリプライズの方がよっぽど自然でしたし、カットは良い判断だったのではないかと考えます。
マティアスには何か別の短編で歌ってもらいましょう。あるかどうか知りませんが。笑
ただ、先日発表になったオラフの短編「Once Upon a Snowman」のような形式で、本編の時系列の中で描かれなかった視点が描き足されるというパターンで、34年間の森の中で何があったのかなどを説明する短編が出てもおかしくないかもしれませんし、イエレナとマティアスについてはもっと知りたいと思っています。
イエレナについては、11月に発売になるアナとエルサの両親イドゥナとアグナルの秘密について語るスピンオフ小説「Dangerous Secrets」においてイドゥナの回想で語られるようですから、楽しみです。
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