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トイストーリー4 新曲 歌詞和・吹替 比較『君のため:I Can't Let You Throw Yourself Away』_

はじめに

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トイストーリー4向けにシリーズ一作目からおなじみの Randy Newman が作詞作曲し自ら歌う I Can't Let You Throw Yourself Away という新曲が作られました。日本語吹き替え版では、こちらも一昨目からおなじみのダイヤモンド✡ユカイさんが吹き替え歌詞(訳詞:中川五郎)を歌っています。

 

この曲はどうやら、自分のことをおもちゃではなくゴミであり、ゴミ箱に行くべきだと考えているフォーキーが、目を離した隙にすぐゴミ箱に入ってしまうのを、ウッディが何度も何度も止めようとするモンタージュシーンのバックグラウンドで流れるようです。(人づてに聞いた情報であり、私自身はまだ映画を確認できていません。<7/11現在>)

 

www.youtube.com

 

Let It Goなどもそうですが、英語では音節数の短いフレーズをなん度も繰り返すため、日本語に吹き替えた時にだいぶニュアンスが変わっているんじゃないかと日本語版が出る前から一人でかってにやきもきしていましたが、タイトルも思ってもみないようなタイトルでびっくりしました。

細かい感想は歌詞の後で述べますので、まずは原詞と私がつけたその和訳、そして日本語吹き替え歌詞を比較するために3つ並べてみます。

 

『I Can't Let You Throw Yourself Away:君のため』原詞・和訳(ブログ筆者による)・日本語吹替え歌詞(赤字)

 

I can't let you
そうはさせない
君のため

I can't let you
そうはさせない
君のため

I can't let you throw yourself away
君が自分からゴミになろうったって そうはさせない
全部 そうさ君のためさ

 

I can't let you
そうはさせない
どこだって

I can't let you
そうはさせない
いつだって

I can't let you throw yourself away
君が自分からゴミになろうったって そうはさせない
君のこと ほっとけないのさ

 

Don't you want to see the sun come up each morning?
毎朝日が昇るのを見たくないのかい?
顔あげて見てごらんよ

Don't you want to see the sun go down each day?
毎日日が沈むのを見たくないのかい?
この世界の美しさ

Don't you wanna see that little girl who loves you so?
君をとっても愛する女の子の顔を見たくないのかい?
よろこび かなしみも分けあえる

Her heart would break if you should go
もし君がいなくなろうものならあの子は悲しみにくれるよ
人がいる / わかるだろう?

 

I can't let you
そうはさせない
君のため

I can't let you
そうはさせない
君のため

I can't let you throw yourself away
君が自分からゴミになろうったって そうはさせない
全部 そうさ君のためさ

 

I can't let you
そうはさせない
君のため

I can't let you
そうはさせない
君のため

I can't let you throw yourself away
君が自分からゴミになろうったって そうはさせない
全部 そうさ君のためさ

 

Son, it seems to me like you're never gonna behave yourself
坊や、君はいつまでたってもおとなしくならなそうだな
いいかい? 君はごみ屑なんかじゃない

And since I'm not gonna do this every day
それに俺も毎日こうやっていられるわけじゃないから
話せばわかるはずだ

Come tomorrow you're gonna have to save yourself
明日になったら君は自分でやっていけるようになるしかないん
このままじゃ 俺だってもう 

Got nothing more to say, you're not listening anyway
もうこれ以上言葉もないし、どうせ聞いていないようだけど
お手上げなのさ / それでも今は

 

I can't let you
そうはさせない
これだけは

I can't let you
そうはさせない
これだけは 

I can't let you throw yourself away
君が自分からゴミになろうったって そうはさせない
これだけは ゆずれないのさ

 

I can't let you
そうはさせない
君のため

I can't let you
そうはさせない
君のため

I can't let you throw yourself away
君が自分からゴミになろうったって そうはさせない
全部 そうさ君のためさ

 

I can't let you
そうはさせない
君のため

I can't let you
そうはさせない
君のため

I can't let you throw yourself away
君が自分からゴミになろうったって そうはさせない
全部 そうさ君のためさ

 

I can't let you
そうはさせない
君のため

I can't let you
そうはさせない
君のため

I can't let you throw yourself away
君が自分からゴミになろうったって そうはさせない
全部 そうさ君のためさ

 

 

 

雑感

ボニーが自分で工作としてつくったフォーキーをお気に入りのおもちゃとしているのに、ゴミ箱に入ってしまう「困ったおもちゃ」であるという認識がウッディの中にあり、ウッディはフォーキーも「おもちゃらしく」「behave yourself:行儀良く:おとなしく」すべきだと考えていることがよくわかる歌詞です。

落ち着きのない子どもをなんども椅子に座らせる親の姿のよう。。。(果たしてそのように強制するのが「良い」のかどうかはおいておいても)

「君のため」が繰り返されるのでだいぶ原詞とは印象が変わっていますが、ウッディがウッディの価値観に基づいて、フォーキーに強制しようとしているという構図であることには間違い無いので、ウッディの押し付けがましさが強調されるという点で流石プロの訳詞だなと感じます。

 

ただ一方で、

Don't you wanna see that little girl who loves you so?
君をとっても愛する女の子の顔を見たくないのかい?
よろこび かなしみも分けあえる

Her heart would break if you should go
もし君がいなくなろうものならあの子は悲しみにくれるよ
人がいる / わかるだろう?

の部分など、ウッディがボニーのためにやっているのだ、という点はあまり吹き替え歌詞では強調されていないように思えて、わかりきったことではあるのですが、ウッディの自己満感が高まってしまっているように思えます。

この辺り実際映画で通して見た時にどう見えるのか、公開初日に字幕吹き替え両方見終わったら更新しようと思います。

 

 

 

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実写アラジン「Speechless 心の声」考察:「ギリシア神話 イカロス」と「女性の商品化」の観点から

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はじめに

日本公開から約一ヶ月が立つ実写版アラジン。アニメーションから30年近くたってのアップデートということで社会状況がかなり変化していることを踏まえて様々な面での更新が図られていることは一般に述べられている通りです。

その一つとして、このブログでは、「Arabia:アラビア」をオリエンタリズムの文脈で他者化し続けてきたことについて、いかにディズニーが少しずつ反省し、その表現を改善してきたかを、アニメオリジナル1992年版、批判を受けて改訂した1993年版、2014年のブロードウェイ版、2019年の実写版の4つを変遷追いながらまとめた記事を書きました。 

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今回は Speechless の歌詞とそれに対応する映画の他の部分のセリフや歌詞などを対応させながら、ノベライズ版や公式が出しているミュージックビデオなども参考にしつつ、Speechlessを通してジャスミンが言いたかったこと、つまりはDisneyがジャスミンに言わせたかった、ジャスミンの口を通してオーディエンス(私たち)に伝えたかったことを

1)ギリシア神話イカロスの翼』の引用

2)「Better Seen and Not Heaerd」というジャファーのセリフの引用

という、2つの観点から探っていこうと思います。

 

 

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前提1:なぜ今Speechlessだったのか

ジャスミンディズニープリンセスの第二波のアリエル、ベルに続く80年代フェミニズムの文脈に乗っかったエンパワメントプリンセスの3人目として1992年に登場し、「I'm not a prize to be won(私はゲームの賞品なんかじゃないの)」というセリフとともに記憶されている3人の中では最も過激な発言をしたプリンセスとして認識しています。

しかし彼女はプリンセスとして登場しながら、主役ではなくあくまで主役はアラジンであり、アラジンの恋愛対象として描かれていたこともあってか、他のプリンセスのように前半に登場して自分の夢について歌う「I Wish Song」は作ってもらえず、言わずと知れた A Whole New World でアラジンに対して合いの手を入れるくらいしかさせてもらえていませんでした。このことについては、こちらの記事で These Palace Walls の歌詞の和訳とともに紹介しましたので、興味のある方は是非ご一読ください。

 

ikyosuke.hatenablog.com

そういういみでようやく「自分らしい」自分の歌を程入れることのできたジャスミンは「Speechless」をもってはじめて Speechless(主張なし)ではなくなったということが言えるかもしれません。なにせ、自分らしい I Wish Song を持つことは、「プリンセスであるならば当然」であることが、ヴァネロペとOhMyDisneyのプリンセスたちとの会話を通して公式で認められているわけなのですから。

 

【プリンセスであるための必要条件】:一般的に人々から「大きくて強い男性」から助けてもらったことで全ての悩みが解決したと思われている、と感じていること
【プリンセスならば持っている特徴(十分条件)】:自分が本当に心から望んでいることについて歌を歌うと、スポットライトが当たったり背景に音楽が流れてきてミュージカル的になる

詳しくはこの年末に書いたこの記事にまとめてあります。

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前提2:そもそも Speech と Voice ってどう違うの?

ロングマン英英辞典から、それぞれのワードで今回の文脈で当てはまるだろう意味の説明を取り出すと以下のようになります。

Speech:a talk, especially a formal one about a particular subject, given to a group of people (語り、特に何らかの特定の主題についてのフォーマルなもので、なんらかの人々の集団に向けてなされるもの)

Voice: the right or ability to express an opinion, to vote, or to influence decisions(意見を表明する、あるいは投票する、または結果に影響を及ぼすための権利あるいは能力)

「心の声」という吹替のタイトルは、心の中には「声」があるけどそれを表に出せない、口にできないという意味合いで歌われています。

この声は「Voice」のことです。実際この映画においてもジャスミンは日頃から、父国王やジャファーに対して意見はしています。

しかし、Speechというのは聞いてくれる相手がいる前提となっているため、Voiceをいくら発しても相手にしてもらえなければ「無力な声」になってしまいます。その「(聞き入れてもらえる)声なき状態」を「Speechless」と表していると言えましょう。

もう少しフォーマルに言えば「政治的発言権」はあっても「その声に力が(十分に)ない」状態と言えるでしょう。

「いやジャスミンアニメの頃から言いたいこと言ってるやん、どこがスピーチレスねん」って思っていた方も、SpeechとVoiceのニュアンスの違いを何と無く掴んでいいただけるのではないかと思います。

 

1)Speechless におけるギリシア神話イカロスの翼」の引用

① ChirO_oy5656 さんのツイート

Speechlessについてのツイートを色々と検索かけながら見ていたところ、 @ChirO_oy5656 さんのこのようなつぶやきを発見しました。

このアカウントの一連のツイートを参照しながら、引用されていた「イカロスの翼」神話と照らし合わせると確かにこの歌詞で使われている比喩が、イカロスを意識していることがだいぶはっきりとしてきました。

 

イカロスの翼という神話の必要箇所を簡単にまとめます。

ダイダロスと息子のイカロスが閉じ込められたときに、ダイダロスが小さい鳥の羽を蝋で固めて大きな翼を作り、息子イカロスにも翼をつけさせて飛び方を教え、脱出しようとします。

その際、ダイダロスイカロスに「必ず中空を飛ぶ」ように指示します。「低すぎると海の水しぶきで羽が重くなる。高く飛ぶと、太陽の熱で蝋が溶けてしまう。まぁ、私についてくれば安心だ」というそうです。

その後実際に飛び始めると、最初こそついていくのが精一杯だったイカロスも、次第に飛んでいることが楽しくなり、いつの間にか父を見失って空高く飛んでしまい、結果蝋が溶けて羽がバラバラになり、海に真っ逆さまに落ちてしまったということ。

 

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イカロスの墜落 シャガール

 

② 歌詞の中の神話引用の該当箇所

この神話を引用しているであろう、歌詞の中の該当箇所を並べます。

Part 1

Here comes a wave
Meant to wash me away
ほら 私を洗い流そうとする波がやってきた
A tide that is taking me under
私を引きずり降ろそうとする大波が

これが、低すぎるとかかってしまい翼が重たくなってしまう、波しぶきのメタファーと重なります。

Part 2

Try to lock me in this cage
この牢屋に閉じ込めてみなさい
I won't just lay me down and die
横になって死んでいったりしないから
I will take these broken wings
この壊れた翼を持ち出して
And watch me burn across the sky
空を駆け抜け燃える私をみなさい

 

パート2においても、Lock me in this cage というのは完全に捕らえられたイカロスとダイダロスを想起させる言い方です。
また、イカロスの引用ということを念頭において歌詞を読んでいくと、「空を駆け抜け燃える私をみなさい」というのは、空高く飛ぶことで蝋が溶けて燃え出すことを想定した上で、それをわかっていても高く飛んでやるというジャスミンの強い意志が感じられる歌詞として認識できます。

 

③ 翼=教育、牢=古い価値観、脱出は親子で

@ChirO_oy5656 さんは、翼と牢獄の比喩を、翼はジャスミンの受けてきた教育、牢を「受け継がれた古い価値観」と捉えておられます。

翼を蝋でくっつけるという行為をジャスミンがしてきた学びとそれを授けてきた父王の地道な努力として暗喩することは確かにこの文脈に非常に即していると私も考えます。

なぜなら、この実写版アラジンは密かに教育についても言及しているからです。

 

アニメ版では「One Jump Ahead: ひと足お先に」の序盤でアラジンが迷い込むのはハーレムで、そこにいる女の子たちが歌うシーンがありましたが、実写版ではそこは黒板に向かって本を開いて勉強している少女たちに差し替えられています。その子たちを指導しているのは女性教師です。

これは明らかに「女子教育の必要性」を世界に訴えたマララさんの影響があると見てよいでしょう。

実写版美女と野獣でもエマワトソン演じるベルが、自らの発明で洗濯を自動化(馬力の利用だったが)することによってあいた時間で街の少女に文字を教えるシーンが加えられていましたが、あの世界(フランス)では学校に行く子どもたちは全員男の子で、校長先生はおじさん、そのおじさんが少女への教育を勝手に行おうとするベルに嫌がらせをする演出になっていました。

それに対して今回は「想像されたアラビア」の世界観で、全く逆のもとから女子教育が普通になされている様子というのを描くというのは非常に意図的であると捉えられるわけです。

 

2)Speechless における「女性の商品化:"Better Seen Not Heard"」に対するアンチテーゼ

① ChirO_oy5656 さんのツイート:「低すぎず高すぎず」

もうひとつ @ChirO_oy5656 さんが指摘していたポイントは、ダイダロスイカロスに教えた「高すぎず、低すぎず、中空を飛べ。私についてこい」という指示の解釈について。

@ChirO_oy5656 さんは、「Stay in your place, Better seen and not heard」を「見目麗しく愛想よく(=低すぎず)、但し高飛車な意見は言うなというジャスミンが受ける抑圧」として解釈されていました。

 

ジャスミンの心にエコーする父王とジャファーの「声」

ここがジャスミンの受けてきた抑圧であることは公式が出している歌詞付きのミュージックビデオにおいてもこの部分の映像が、「アンダース王子との謁見シーン」「宮殿」「国王」となっていることからも明らかです。

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スクリーンショット Speechless Oficial Lyric Video

Stay in your placeというのは、王妃が殺されてから自分の娘まで危険にあうことを恐れて部屋から出るな、宮殿から出るなという父王の「声」のエコーであることは間違いないと思いますが、「Better seen and not heard」というのは劇中のセリフだけを頼りにするのであれば、あきらかにジャファーの「声」のエコーです。

これは、ジャスミンが兵士たちに連行されながらPart 2を歌い始める直前に彼女の脳裏をよぎる言葉としてエコーをかけられた状態のジャファーのセリフが繰り返されることからも明らかです。

そのジャファーのセリフとは Part 1 が歌われ始める直前のこれのことです。

「人生ラクになりますよプリンセス。伝統を受け入れれば。あなたは見てもらっていればいいのです、聞いてもらえなくても。」

"All you have to do is to be SEEN not HEARED"

というものです。(まだ手元に円盤や台本はないので一言一句正確である保証はありません)

ここは、字幕版だとだいぶ意訳されてしまっています。

字幕担当の翻訳家:中沢志乃さんの訳「女性に必要なのは美しさ、意見は不要。」

 

これをうけての歌詞の部分がこちら。(和訳は私による独自のもの)

Stay in your place
Better seen and not heard
宮殿にとどまり
容姿は見られるようにして 意見は言わないようにしていた方がいいとされてきた

But now that story is ending
でもそんなお話はお終い

この部分の中沢さんによる字幕翻訳は、現在日本の公式アカウントがYouTubeにアップしている動画で確認できますが、このようになっています。

「女の意見は不要 そんな時代も終わる」

 

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スクリーンショット ディズニー・スタジオ公式アカウントの「スピーチレス〜心の声」(字幕)

もちろん字幕で表示できる文字数には限界があるため全ての要素を反映することはできませんが、Better seen and not heared というワードは原語の台本だともう少し繊細に扱われています。

 

③ プリンス・アンダースとはなんだったのか

ジャスミンに謁見しにくるプリンスアンダースはバックグラウンドこそ丁寧に描かれないものの、ほぼ唯一の「White」の名前とセリフのあるキャラクターです。 

実はこのプリンスアンダース、キャストが発表された2年前から話題になっていました。なぜ、この世界観と流れで「White」のプリンスが出てくるんだ?と。

www.hollywoodreporter.com

 

で、結果はみなさん映画を見ての通りです。

唯一の「White」の訳者によって演じられたプリンスアンダースは、ジャスミンを「まなざす対象」とし、「見ることで楽しむ」、まさに「女性を商品化する男性」の代表として描かれました。

アニメ版でこそジャスミンを色目で見て、赤ジャスミンなるものを魔法で作り出し求婚を迫るなど、この上なくジャスミンを性的対象化するジャファーですが、今回の実写版においては、ジャファー本人が女性を商品化することはありませんでした。

またプリンスアンダースは、ノベライズ版を読む限りでは最終的な映画になって行くにあたってだいぶ登場シーンや、そのキャラクターとしての役割、要素が削られたであろうことが読み取れます。

ラジャーに噛まれた後、プリンスアンダースは自国からの献上品として「大砲」を披露し、実際に港に浮かべてある船を撃ってみせるというデモンストレーションまでする予定だったようです(ノベライズ参照)。これはつまり、ジャファーが映画で説明する軍事同盟を結びにきたという意味合いを強めるためのシーンであり、またジャスミンが国民の安全を考えて戦争推進政策を進めようとするジャファーに対する反抗をよりはっきりと描こうとするために必要と考えられていたシーンだったのでしょう。

しかしこのシーンが、時間の都合などがあった可能性もあるとはいえ、最終的に全く登場しなかったということが何を意味するか。それは、プリンスアンダースについて「軍事同盟を結びにきた人」というより「ジャスミンを商品化する人」という要素を強調すためではないかと考えられるわけです。

しかもそれを唯一の「White」の役者が演じるキャラクターに「押し付け」る。

アラビアンナイト の歌詞変遷の文脈でも書きましたが、「non-White」の「エキゾチック」な女性を「White」の男性が性的にまなざすという側面における「オリエンタリズム」について、ディズニーが自覚的になっていることの表れであるとも言えます。

 

ジャファーは本人こそ女性の商品化を直接する描写はありませんが、ジャスミンが商品的価値が高いことを政治利用しようとしていることは間違いありません。それこそが、「Better Seen not Heared」という言葉でしょう。
しかしそこにジャスミン(女性)の「発言力」はありません(Speechless 状態)。

 

④ ダイヤの原石は「女性を商品化する気配」を感じさせてはいけないのが2019年:アラジンの描かれ方のアップデート

実はジャスミンの心の中でこだまするジャファーの声「Better Seen and Not Heared」は、非常に重要なワードとして扱われていることは、他のミュージカルナンバーの歌詞の変更にも影響していることからも伺えます。 

 

まず、アリ王子の凱旋パレード「Prince Ali」。

[1992]

Heard your princess was a sight lovely to see
伺ってきました おたくの姫君は見応えのある美しいご光景だと

 

[2019]

Heard your princess was hot! Where is she?
伺ってきました おたくの姫君はセクシーだと!どちらにいらっしゃるかな?

 

まあこれについてもいろいろ議論はあると思いますが、92年の時には、ジャスミンのことを「a sight lopvely to see」と、「光景」=「まなざす対象」と捉えていることが明らかな歌詞になっていました。

Hot(セクシー)というワードチョイスをどう捉えるかは、微妙なところですが、あまり意味が変わらなかったとするなら、わざわざ変えなくても良かったわけです。

でもそれをわざわざseeに近い音としてsheを持ってこれるような歌詞変更をしたということは、それだけこのタイミングで「see」を使いたくなかったということの表れと言えます。つまりアラジンが、ジャスミンを「see」 する対象 としている他の王子(プリンスアンダースのような)とは違うんだということを強調するために必要だった改変と考えて良さそうです。

 

もう一つ、アラジンが女性を商品化しなくなったことを表すために変更のあった曲はジーニーといえばの「Friend Like Me」。

これは歌詞変更ではありますが、歌詞だけを見てもあまり伝わりませんので、画像で。
92年のアニメーション版では、ジーニーが自分の魔法でこんなこともあんなこともできるというデモンストレーションをする過程で、セクシーな女の子たち(ヴァーチャル)を作り出して、アラジンに見せてあげるシーンがあります。

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[1992]

Can your friends go poof?
Hey, look here
君の友達はこれできる?ハッ!
ほれ、見てごらん?
Can your friends go "Abracadabra," let'er rip
And then make the sucker disappear!
君の友達はアブラカダブラ唱えて おもいっきりやっちゃえ
それからそいつら消すことも!

 

[2019]

Can your friends go- (start voice percassion)
君の友達はこれできる?(ボイパ)
(rapping) I'm the genie of the lamp
I can sing, rap, dance, if you give me a chance, oh!
(ラップしながら)俺はランプの魔人
歌えて、ラップも
できて、踊れちゃう、チャンスさえくれれば、そう!

 

しかしそこは実写版においてはウィル・スミスが得意なボイパとラップを披露するシーンに完全に差し替えられていました。あれだけアニメーションに忠実に実写化しているシーンなわけでこの改変は明らかにアラジンが、そのような女性の商品化では喜ばないことを示すためであると捉えられるでしょう。

 

このように「Better Seen and Not Heard」こそがジャスミンを抑圧してきた価値観(直接的にはジャスミンの心の中でこだまする「ジャファーの声」)として強調されるような作りになっているわけです。

 

次の記事では、これを踏まえて実写版アラジンがどのようにプリンセス(理想的な女性像)とプリンス(男性像)をアップデートしようと試みたのかについてまとめたいと思います。

 

 

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***

 

 

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Broadway Aladdin 「These Palace Walls」歌詞和訳 から 実写アラジン「Speechless」の意義が見えてくる

はじめに

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アラジンは1992年にアニメーション映画として公開された後、20年近くの時を経て、2011年ごろからMusicalとしてのプロダクションが開始し、結果として2014年にブロードウェイのニューアムステルダムシアターで上演が始まり、大ヒット。現在も同じ劇場でロングラン公演しています。

日本はブロードウェイ公演開始の翌年に世界初英語以外の言語での上演を、美女と野獣以来ディズニーミュージカルをほぼ一手に引き受ける劇団四季が上演開始し、現在もチケットがなかなか手に入らないという大人気のロングランを続けています。

美女と野獣もそうでしたが、アニメーション、ミュージカルを経て実写映画化される流れがこのアラジンにも適応され、2019年にガイ・リッチー監督作品として公開されています。

美女と野獣では、91年アニメーション版の公開時にカットされていたナンバー "Human Again" はブロードウェイ版で追加され、その後アニメ版が改めてディスクリリースされる際に再度追加されたり、"Home"(四季名:「我が家」)は、2017年の実写版でルミエールがベルを部屋に案内するシーンの背景に流れるインストルメンタルとして密かに採用されていました。

このように別の媒体で作品化するときに、元々あったが使っていなかったアイデアを使ったり、一度使ったアイデアを別の形で再度使ったりすることは頻繁に行われており、これはディズニーの制作チームでアラン・メンケンのような作曲家やティム・ライスのような作詞家が、形の違う媒体でのリリースでも共通して関わっていることが関係していると思われます。

 

もともと自分の I Wish Song がなかったジャスミン

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ディズニープリンセスには基本的に、自分の夢を歌う「I Wish Song」というものが用意されています。例えば、アリエルなら「Part of Your World」、ベルなら「Belle (Reprise)」、ティアナなら「Almost There」、ラプンルェルなら「When Will My Life Begin」など。

ジャスミンはタイトルロールがアラジンであり、あくまでジャスミンはストーリー上アラジンの恋愛対象として出てくるキャラクターであることも関係しているのか、「A Whole New World」の合いの手しか入れさせてもらっていませんでした。もちろんこの楽曲はディズニーソングを代表するような有名曲であり、ジャスミンの歌といえばこれではあったのですが、これはあくまでアラジンが主体となって歌っています。しかもアラジンがジャスミンを騙しながら。

そこで2011年から製作の始まったミュージカルではジャスミンに歌が与えられそれが今回の記事で取り扱う「These Palace Walls」でした。

 

こちらの動画は、ブロードウェイで長期間ジャスミンを演じたアリエル・ジェイコブスさんが「ブロードウェイ・プリンセス・パーティ」で披露したパフォーマンスの映像です。

ジェイコブスさんは2024年3月20日の日本来日公演の「ディズニー・プリンセス・ザ・コンサート」でもこの曲を披露します。(追記2024年2月27日)


www.youtube.com

These Palace Walls 歌詞と対訳、劇団四季歌詞

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歌詞はミュージカル版から作詞に参加したChad Beguelinが新しく書きました。

私がつけた対訳は黒字で、劇団四季用に「ありのままで」で有名な高橋知伽江さんがつけた訳詞を <青字> で表記します。

私がつける対訳は、歌えるように音節数を揃えるのではなく、できるだけ英語のニュアンスを反映していこうと思います。

 

[JASMINE:ジャスミン]

“A princess must say this”
「プリンセスたるものこれを言わねばならない」
<王女たるものこう言う話し方をすべきだ>
<こういう格好をすべきだ そして>

"A princess must marry a total stranger", it's absurd!
「プリンセスは全く知らない人に結婚せねばならない」そんなのばかげてる!
<会ったこともないどこかの王子と結婚すべきだって そんなのおかしいわ>

 

Suitors talk of love but it's an act
Merely meant to throw me
求婚者は愛してるって言うけど、そんなの所詮演技
ただ私をその気にさせようとしてるだけ
(throw me off で「気を散らさせる」)
<あの人達のプロポーズ どうせ嘘よ>

 

How could someone love me when in fact
They don't know me
どうしたって私を愛してくれる訳ないじゃない
私のことなんてわかってもないのに
<私のこと何も 知らずに>

 

They want my royal treasure
When all is said and done
欲しがっているのは私の王室の宝
結局のところは
<狙いは財産 私じゃない>

 

It's time for a desperate measure
もう一か八かの策をとる時ね
<全ては計算>

So I wonder
だから私知りたいの
<愛じゃない>

 

Why shouldn't I fly so far from here?
どうして私はここから遠くへ飛び出しちゃいけないの?
<ここを飛び出したい>

I know the girl I might become here
ここにいてなるべき女の子の姿っていうのはわかるもの
<自由になりたいのに>

Sad and confined and always locked behind these palace walls
悲しみ封じ込められいつもこの王宮の壁に閉じ込められてるそんな姿
<閉じ込められてる 壁の中に>

 

[ATTENDANT #1:侍女1] (speaking):

I don't know princess, for someone like you
the outside world might be kind of overwhelming
プリンセス、私にはわからないけど、貴方のような方にとっては
外の世界は少し強烈すぎるかもしれません
<でも王女様には外の世界は少し刺激が強すぎやしないかと>

 

[JASMINE:ジャスミン] (speaking):

Is that a promise?
本当にそうなの?
<本当?>

 

[ATTENDANT #2:侍女2] (spoken):

I think it would do her some good
私は、彼女のためになると思います
<私はいいことだと思いますけど。>

 

[JASMINE:ジャスミン] (spoken):

You do?
そう思う?
<でしょ?>

 

[ATTENDANT #2:侍女2] (spoken):

Honey I've never seen someone who needed to get out more
愛しい姫様、もっと外へ出る必要のあるお方は
貴方の他に見たことがありませんもの。
<ええ。外の世界をご覧になるべきです。>

 

[ATTENDANTS:侍女たち]

Told to show devotion everyday
毎日忠誠心見せろと言われ
<しきたりに縛られ>

And not second guess it
後からとやかく言うなと言われ
<閉じ込められ>

 

[JASMINE:ジャスミン]

If a new emotion comes my way
新たな情動が湧いて着ても
<心の声さえも>
(2019年実写版新曲Speechlessの日本語タイトルここにありましたね笑)

[ATTENDANTS:侍女たち]

You suppress it
押し殺してる
<抑えてる>

 

[JASMINE:ジャスミン]

What would be your suggestion?
どうしたらいいと思う?
<どうすべきかしら?>

 

[ATTENDANTS:侍女たち]

Stand on your own two feet
その両足でしっかり立って
<胸に手を当て>

And ask why a certain question keeps repeating
問うべき「どうして?」を繰り返し続けるの
<何が望みかを 問いかけて>

 

[JASMINE:ジャスミン]

Why shouldn't I fly so far from here?
どうして私はここから遠くへ飛び出しちゃいけないの?
<ここを飛び出したい>

 

I know the girl I might become here
ここにいてなるべき女の子の姿っていうのはわかるもの
<本当の自分らしく>

 

Follow your heart or you might end up cold and callous
心に従うか、そうでなきゃ冷たく無感覚になって終わるだけ
<心のままに生きてみたい>

 

[ALL:一同]

Love comes to those who go and find it
愛は見つけにいく人のところへ訪れるもの
<愛は見つけにいくもの>

If you've a dream then stand behind it
もし夢があるなら応援しましょう
<夢は追いかけるもの>

 

[JASMINE:ジャスミン]

Maybe there's more beyond these palace walls
きっともっとたくさんのことがこの宮殿の壁の向こうにあるはず
<行きたい 壁を超えて>

What if I dared
もし思い切ってやって見たらどうなるかな
<私に>

What if I tried
もしチャレンジして見たらどうなるかな
<できるの?>

Am I prepared for what's outside
外にでる準備できているかな
<覚悟は いいのね?>

 

Why shouldn't I fly so far from here?
どうして私はここから遠くへ飛び出しちゃいけないの?
<ここを飛び出したい>

 

Something awaits beyond these palace walls
何かがこの宮殿の壁の向こうに待ち受けている
<自由に壁の向こうへ>

 

[ALL:一同]

Something waits beyond these palace walls
何かがこの宮殿の壁の向こうに待っている
<何かが待っているわ>

 

 

なぜ「These Palace Walls」がミュージカルで追加されたか?:プリンセス史的に捉える追加の意義

2019年時点ではもはや「新しく」なくなった「外の世界へ憧れる」価値観(=「These Palace Walls」)ですが、裏返せば2011〜2014年のミュージカル版製作中の時点ではわざわざこの曲をジャスミンのI Wish Songとして入れることが「新しい」「センセーショナル」だと判断されていたことが明らかになるわけです。 

2011年ということは、2009年のティアナの「Princess and the Frog」、2010年にラプンツェルの「Tangled」が公開された後であり、自分から外へ出て夢を見つけにいくプリンセス像がほぼ完成し、それをさらにロマンス不要路線へ転換させるゲームチェンジャー・メリダの「Brave」(2012)がピクサーからリリースされる前年に当たります。

 

(プリンセス史や「ゲームチェンジャー・メリダ」については以下の記事参照のこと)

ikyosuke.hatenablog.com

 

この時期であるので当然与えられる曲は「外の世界への憧れ」を歌う曲になっているわけです。

 

なぜ「These Palace Walls」は2019年実写版で採用されなかったのか?

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この疑問に端的に答えるならば、映画を見た人であれば自明だと思いますが、そもそも映画の冒頭シーンからすでに「Palace Walls」の外に出ているから、です。

最初から出ているということは、その前にすでにジャスミンはThese Palace Wallsのようなやり取りを侍女のダリアさんとしていたかもしれません。でもそれは映画としては入れない判断をリッチー監督がしたから私たちが見ることはありませんでした。

ではなぜ最初から外に出ているか?

3つ理由が考えられます。


1つ目

外に出ることを望み、外に出るかどうか葛藤し決断する姿というのは2019年においてはもうもはや「新しくない」「センセーショナルでない」からでしょう。1989年に「陸の世界」に憧れる人魚があの曲を歌ってから、もう今年で30年になるわけで、いまさらやっても仕方ないと判断したのだと思われます。

逆にいえば、外に出た上で何をするのか、何のために外に出るのか、そこが重要なわけです。

2つ目

ブコメ的な展開を限られた時間でよりスピーディに進めるためにアラジンとの出会いを早くする必要があったから。
これは十分にありえるでしょう。

3つ目

外せないアラジンの自己紹介ソング「One Jump Ahead」の逃走シーンで一緒にアクションをやらせたかったから。
これはプリンセスにアクションシーンをやらせるというエンパワメント的な意味合いもあれば、アラジンとジャスミンの間の信頼関係の構築を描くためのシーンにするためという意味合いもあると思われます。
ちょうど、Frozenでアナとクリストフがオオカミから逃げるシーンと同じように。

 

 

これらのような実務的な理由やイデオロギー的な複数の理由からガイ・リッチー監督は最初からジャスミンが外に出ている設定にするという判断をしたのではないかと推察できます。

 

裏返しに問う「Speechless」の意義

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さて、ミュージカル版で追加された曲はもはや「センセーショナル」でなくなってしまったわけですが、2019年のガイ・リッチーの描く実写ジャスミンにはまた新しい「I Wish Song」が与えられました。それが「Speechless」でした。

 

ikyosuke.hatenablog.com

 

Speechlessについてはディズニーのレジェンド作曲家のAlan Menkenへのインタビューで彼が次のように語っています。

今回の僕の主な命題はジャスミンのための新たな曲を作ることでした。

「もうスピーチレスではない。口はつぐまない」という彼女の声が、現代的な意味を持って観客に届くようにしなければなりませんでしたが、想像以上にいいものができたと思い、今はホッとしています。

(中略)

この曲は女性のためのエンパワーメント(力、元気、励まし)を象徴する曲にしたいと初めから思っていました。もちろん曲作りはいろいろなことを考えながらしますが、映画の中の曲は、ストーリーにはまらなければならないし、物語をサポートするようなものでなくてはなりません。「スピーチレス」は、まず一つの楽曲として書き下ろしました。
初めは映画の最後で使うつもりでしたが、それでは遅すぎる。また冒頭で使うのも早すぎいると思いました。なので、劇中では前半と後半で半分に分けて使っています。そうすると映画のスコア(総譜)全体を支えてくれることに気づきました。

 

(取材・文・写真/田中雄二

引用元:「ウレぴあ総研:エンタメOVO」ー【インタビュー】『アラジン』作曲アラン・メンケン「今回の僕のベイビーは『スピーチレス』です」(2019.5.30.10:00配信)

ure.pia.co.jp

 

メンケン氏の「映画の冒頭で使うには早すぎる」と言う言及からも、映画前半にジャスミンの心の内を歌うための、いわゆる「I Wish Song」を用意することを模索していたことが読み取れます。

また、「エンパワーメントを象徴する曲にしたい」という思いありきで作曲しているということがはっきり言及されたのがこのインタビュー記事のすごく重要なところであると思います。

ブロードウェイ版では結局ジャスミンは「These Palace Walls」で決心して外に出て、街でストリートパフォーマンスをしているアラジンとその仲間たちに出会い、そこでアラジンに一目惚れされ、そのあと「A Million Miles Away」という囚われの身から自由になった姿を妄想しながら歌う曲で意気投合します。

しかし結局政治的にも物語の進行的にもジャスミンにはあまり決定権はなく、最後の場面においても父である王がジャスミンが望むアラジンとの結婚をできるように法律を変えることで、ジャスミンの夢のひとつを叶えてくれている。

2019年実写版では、ジャスミンはアグラバーの民の幸せのために自分こそが王になるべきだと考えていて、そのため民のことを知りもしないよその王子に政治を任せられるはずないという考えから王子との結婚に後ろ向きな態度をとっている。
しかし、王である父親は彼女自身が王位継承者となって政権を握ることについて、「千年の歴史の中で女性が王になったことはないから」という理由で諦めさせようとしてくる。最終的には王が、ジャスミンの演説や勇敢な行動をみて彼女の王としての未来の姿を垣間見た結果、彼女を次なる王にする。そして王となったジャスミンが、門の外にいるアラジンを迎えに行くかたちで結婚に至る。自らの行動で夢のひとつを叶えるのである。

(まあ仮にアラジンとの結婚がジャスミンにとっての夢のひとつであるならば、の話だが笑 なんなら2019年版は、正直言ってアラジンと結婚しなくてもオッケーな筋書きになっていたと思います。笑)

 

Speechlessを唯一の新曲として、しかもかなり他のナンバーとはテイストの違う曲として作曲し、アレンジしたことで、「声なき状況」を歌詞の中で何度もなんども否定することを強調するというエンパワメントを実現しているのです。

もう「外に出たら何かが待ってる」というのは「新しく」ないどころか、「何かが待っている」わけないんですよね。自分で何かをしなければいけない。自分で声をあげることでしか世界は変えられない。

そう言った方向になって言っていることはディズニー・プリンセス史的に見れば明らかで、Moanaにおけるモアナの「呼ばれるから行く」から「自分が自分のやりたいこととして定義し、自分自身を定義する」という「How Far I'll Go」が「I am Moana」で完成される構造で既に示されているわけです。

 

 

以下に私の書いた記事から引用しておきます。またこの部分はdpost.jp さんの記事からの引用も紹介しているのでそちらの記事も案内しておきます。

③モアナの先をゆく最新のディズニープリンセス:ヴァネロペ・ヴォン・シュウィーツの誕生

『Moana:モアナと伝説の海』では、ありたい姿を決めるのは自分であり、与えられた使命を果たすのではないというメッセージが「海に選ばれた少女」から「自ら向かう少女」への転換という形で描かれましたが、そのアップデート版がヴァネロペを通して描かれます。

「シュガーラッシュを救うハンドルを手に入れる少女」から「自分の新しいホームを見つけに行く少女」への転換として。

 

これ、現時点で最新のプリンセス像であるモアナをさらに書き換えようとしているのです。

モアナが新しかった理由は dpostさんが2016年の記事でも書かれているように、「向かう方向は『呼ばれた場所』と同じであったとしても、自らの内なる言葉で表現できないうちは "足りない”」(dpost, 2016)からこそ「I am Moana」と自らを定義することによって、「与えられるのではなく、自らが望み、自らを定義し、知る」プリンセス像を描いた点にあります。

引用元:「westergaard 作品分析」ー Ralph Breaks the Internet (シュガー・ラッシュ・オンライン)考察 [ネタバレあり]  2018.11.23更新

Ralph Breaks the Internet (シュガー・ラッシュ・オンライン)考察 [ネタバレあり] - westergaard 作品分析 

 

dpost.jp

 

「『与えられるのではなく、自らが望み、自らを定義し、知る』プリンセス像」が最新の像だとする文脈で捉えれば、「Speechless」が2019年的な「<主体的で能動的な> I Wish Song」として加えられたことの意義がより一層はっきりと見えてくるようなのです。

 

「These Palace Walls」が2019年版に採用されなかった理由を考えることで、裏返しに「Speechless」の意義が見えてくる、というお話でした。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

 

 

 

 

 

トイストーリー4 新曲 歌詞和訳「The Ballad of the Lonesome Cowboy:孤独なカウボーイのバラード」

The Ballad of the Lonesome Cowboy

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Written by Randy Newman

Performed by Chris Stapleton

 

youtu.be

どうやら、エンドロールで流れる曲のようです。
ウッディのことを歌っているのは間違いありませんが、果たしてこの歌詞が意味するところは。。。

「君」が指すのはいったい誰? バズ? ボー? フォーキー? それとも?

 

 原詞と和訳(ブログ筆者による)

I was a lonesome cowboy
オレは孤独なカウボーイだった

Lonesome as I could be
この上なく孤独だった

You came along,
君がやってきて

Changed my life
人生を変えた

And fixed what was broken in me
オレの中で壊れてたものを直してくれた

 

  

I was a lonesome cowboy
 オレは孤独なカウボーイだった

I didn't even have a friend
一人の友達もいなかった

Now I got friends
今や友達もできて

Coming’ out of my ears
たくさんいすぎるくらいだ

I’ll never be lonesome again
二度と孤独になることはないだろう

You can’t be happy
幸せにはなれないよ

When you’re all by yourself
たったひとりでいるときは

Go on, tell me I’m wrong
言ってみろよ、オレが間違ってるって

 

(Chorus: You’re wrong!)
(間違ってる!)

 

When someone takes you down
下ろしてもらえるとき

From the shelf
棚の上から

 

And plays with you some
それで少しでも遊んでもらえるとき

It’s wonderful
それは最高なこと

(Chorus: Wonderful)
(最高!)

 

I was a lonesome cowboy
オレは孤独なカウボーイだった

But not any more
でももうそうじゃない

I just found out
ちょうどわかったんだ

What love is about
愛がなにかってのを

I’ve never felt this way before
こんな風に思ったことはなかった

I was a lonesome cowboy
オレは孤独なカウボーイだった

But not any more
でももうそうじゃない

 

 

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実写アラジン新歌詞「Arabian Nights (2019)」和訳 これまでの歌詞変更の流れも紹介

はじめに

f:id:ikyosuke203:20191011020957p:plain



www.youtube.com

アラジンといえば、A Whole New World, Friend Like Me, Prince Aliと名曲揃いですが、やはり外せないのがオープニングのArabian Nights(アラビアンナイト)。

92年のアニメ版こそ非常に短い曲ですが、ブロードウェイやその日本ローカル版の劇団四季の舞台をご覧になった方はその曲がどれほど長いダンスナンバーに昇華されているかご存知かと思いますが、私たちをアグラバーの世界へと引き込むのに重要な役割を担っています。

しかしそのArabian Nightsは、長らく論争の火種になってきて、その結果歌詞の変更がなされ来ました。

歌詞の対訳を紹介する前に少しだけ今回変更された部分についてこれまでの変遷とともに紹介します。

(とりあえず 実写 (2019年) 版 の歌詞の対訳だけ読みたい方は下へスクロールしてください)

「アラビア=野蛮」は差別的! 冒頭部分の変更 1992, 1994, 2019

1992年に全米で公開された直後、問題になったのはArabian Nightsの冒頭の歌詞の「顔を気に入られなかったら耳を切り落とされる」という部分。

反発を受けてディズニーは、劇場公開の翌年ビデオ版をリリースする際に一部歌詞を変更しました。そのことについて報道している1993年7月のLAタイムズの記事がネット上に残っているので紹介しておきます。

www.latimes.com

 

歌詞の変遷を記録しておきます。(変更される部分を太字にしています)

 

【オリジナル版(1992)】

Oh I come from a land, from a faraway place

そう、私は遥か遠い場所からやってきたよ

Where the caravan camels roam

隊商行列のラクダが歩き回るところ

Where they cut off your ear

耳を切り落とされる

If they don’t like your face

顔を気に入られなかったら

It’s barbaric, but hey, it’s home

野蛮だよね、でもほら、そこが故郷

 

【改訂版(1994−)Broadway版(2014-*)】

Oh I come from a land, from a faraway place

そう、私は遥か遠い場所からやってきたよ

Where the caravan camels roam

隊商行列のラクダが歩き回るところ

Where it’s flat and immense

起伏がなくてだだっ広くて

And the heat is intense

強烈に暑いところ

It’s barbaric, but hey, it’s home

野蛮だよね、でもほら、そこが故郷

 

※筆者がBroadway版を2019年1月に鑑賞した際
「barbaric」は「chaotic」に変更済みだったが、
CDや配信のサウンドトラックはそのまま。
変更後の歌詞は公式には発表されていない。

 

【実写版(2019)】

Oh, imagine a land, it's a faraway place

さぁ、こんな国を想像してごらん

それはそれは遠いところ

Where the caravan camels roam

隊商行列のラクダが歩き回り

Where you wander among every culture and tongue

あらゆる文化や言語の中をさまよえる

It’s chaotic, but hey, it’s home

カオスだよね、でもほら、そこが故郷

 

 

Arabian Nights (2019) の歌詞と対訳

新しい歌詞や変更箇所が多いため、アニメ版にもともとあった部分の歌詞だけ青字にしています。

 

[Genie(ジーニー)]

Oh, imagine a land, it's a faraway place

さぁ、こんな国を想像してごらん

それはそれは遠いところ

Where the caravan camels roam

隊商行列のラクダが歩き回り

Where you wander among every culture and tongue

あらゆる文化や言語の中をさまよえる

It’s chaotic, but hey, it’s home

カオスな場所、でもほら、そこが故郷

 

 

When the wind's from the east

東からの風が吹いて

And the sun's from the west

西日が差して

And the sand in the glass is right

砂時計の示す時が潮時を教えてくれたら

Come on down, stop on by

おいでよ、立ち寄りに

Hop a carpet and fly

カーペットに乗って飛んでおいで

To another Arabian night

もうひとつのアラビアンナイト千夜一夜物語)へ

 

 

As you wind through the streets at the fabled bazaars

架空のバザールの通りを風のように通り抜け

With the cardamom-cluttered stalls

カルダモンが雑然と置かれた露店のあるところ

You can smell every spice

いろんなスパイスの香りがしてくるよ

While you haggle the price

値切り交渉をしているうちに

Of the silks and the satin shawls

絹やサテンのショールのね

 

Oh, the music that plays

演奏される音楽

As you move through a maze

迷路のような場所を通っているとき

In the haze of your pure delight

無垢な喜びのもやの中

You are caught in a dance

ダンスに巻き込まれ

You are lost in the trance

催眠状態にかけられる

Of another Arabian night

このもうひとつのアラビアンナイト千夜一夜物語)のね

 

 

Arabian nights

アラビアンナイト

Like Arabian days

それはアラビアの日常のように

More often than not are hotter than hot

大抵それは暑いを通り越す暑さ

In a lot of good ways

いろんな良い意味でね

Arabian nights

アラビアンナイト

Like Arabian dreams

それはアラビアンドリームのように

This mystical land of magic and sand

この魔法と砂に満ちた神秘的な国

Is more than it seems

それは見かけ以上のもの

 

 

There's a road that may lead you

導いてくれる道がある

To good or to greed through

善へあるいは欲深さへ

The power your wishing commands

願いの命令の力を通じて

Let the darkness unfold of find fortunes untold

闇を広げさせるか あるいは 秘宝を見つけるか

Well, your destiny lies in your hands

そうさ、運命は自分の手の中にある

 

 

[セリフ:Cave of Wonder(魔法の洞窟)]

Only one may enter here

1人の者のみがここへ立ち入ることができる

One whose worth lies far within

はるか内部に眠る価値を持つもの

A diamond in the rough

ダイヤの原石だ

 

 

[Genie(ジーニー)]

Arabian nights

アラビアナイト

Like Arabian days

それはアラビアの日常のように

They seem to excite, take off and take flight

楽しそうで、離陸して飛んで

To shock and amaze

衝撃と驚きが待っている

Arabian nights

アラビアンナイト

'Neath Arabian moons

アラビアの月の下で

A fool off his guard could fall and fall hard

油断する愚か者は失敗し勢いよく落ちていく

Out there on the dunes

砂漠の上へ

 

新しく挿入された部分の歌詞をみると、この曲が、ランプを手にすることになるアラジンとジャファーの対比をしていることがよくわかります。

 

願いの命令によるパワー、すなわち「ジーニー」が、<善や秘宝>へ導いてくれるか、<欲深さや闇の拡張>へ導いてくれるか、運命はあなたの手の中に眠っている。

全てはあなたの選択次第、という。

 

  

あわせて読みたい

他にも新曲「Speechless」の歌詞と対訳を紹介しています!

 

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実写アラジン「Speechless -心の声(劇中歌)」和訳と日本語歌詞(Aladdin 2019)

はじめに

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Naomi Scott as Jasmine (Aladdin 2019)

この曲は劇中で歌われる唯一の新曲であり映画としては初のジャスミンソロ曲です。この『Speechless』はパート1、パート2に分かれており、その二つを繋げたFullバージョンは映画本編では使われずサウンドトラックのみに含まれていますが、歌詞が微妙に異なります。

こちらで紹介してます。

 

ikyosuke.hatenablog.com

 

ちなみに舞台版(ブロードウェイやその日本語版の劇団四季バージョン)ではいわゆる『I WISH ソング』としての「These Palace Walls」がありましたが、それはいわゆるアリエルのいうPart of "that" worldやベルの言う There must be more than this provincial life のようなファジーな、漠然とした「外への憧れ」を歌うような仕上がりでした。

それは舞台版が用意され始めたのが2011年前後であったことを考えればまあ妥当なのですが、2019年に実写化するにあたっては、すこし弱すぎると見られたのか、この、Speechlessはよりメッセージ性の強いものになってます。

なにせ、92年のアニメ版ではジャスミンは A WHOLE NEW WORLD の合いの手しか入れさせてもらえてなかったわけで、まさに「Speechless」、自分の本当の気持ちを歌わせてもらえてなかったということかもしれません。

 

さてさて前置きが長くなるのが私の悪い癖なので、早速歌詞へ。

毎度のことですが、対訳であり直訳ではないので、私の解釈がある程度反映されていることは考慮してください。また本編自体を見たわけではないので、解釈が大きくずれている可能性もあります点、ご了承ください。

 


Speechless (Part1) 歌詞と対訳と日本語歌詞(赤字)

youtu.be

[Verse 1: JASMINE]

Here comes a wave
Meant to wash me away
ほら 私を洗い流そうとする波がやってきた
取り残されそうなの

A tide that is taking me under
私を引きずり降ろそうとする大波が
暗闇にひとりで

Broken again
Left with nothing to say
またこうして壊されて
何も言わせてもらえない
言葉をかき消されて

My voice drowned out in the thunder
私の声は雷の音の中かき消される
心まで折られて

 

[Pre-Chorus: JASMINE]

But I can't cry
でも泣いてはいられない
でも負けない

And I can’t start to crumble
それに崩れ始めるなんてあり得ない
挫けはしない

Whenever they try
To shut me or cut me down
閉じ込められ切り裂かれそうになっても
裏切られ たとえ辛くても

 

[Chorus: JASMINE]

I can't stay silent
沈黙なんてしてられない
私はもう

Though they wanna keep me quiet
黙っていることを求められるけれども
これ以上黙って

And I tremble when they try it
そうされそうな時私は震えてしまう
いられない だから

All I know is I won't go speechless
わかってるのは私は無言でい続けることはないってこと
そうよ 声をあげて

 

Speechless (Part2) 歌詞と対訳と日本語歌詞(赤字)

youtu.be

[Verse: JASMINE]

Written in stone
Every rule, every word
石に刻まれる
あらゆる取り決め、あらゆる言葉
ただ黙っていることが

Centuries old and unbending
何世紀も昔からずっと変わらない
賢い生き方と

Stay in your place
Better seen and not heard
宮殿にとどまり
容姿は見られるようにして 意見は言わないようにしていた方がいいとされてきた
教えられて来たけど

But now that story is ending
でもほんなお話はお終い
間違いとわかった

 

[Pre-Chorus: JASMINE]

'Cause I
I cannot start to crumble
だって私
崩れ始められないもの
いま声をあげよう

So come on and try
かかってきなさい
そう誰にも

Try to shut me and cut me down
閉じ込め 切り裂こうとしてみなさい
邪魔はさせないから

 

[Chorus: JASMINE]

I won't be silenced
沈黙させられたりしない
私はもう

You can't keep me quiet
黙り続けさせられたりしないわ
これ以上黙って

Won't tremble when you try it
そうされそうでも震えたりしないわ
いられはしない

All I know is I won't go speechless
はっきりわかるの無言でい続けることはないって
心の声 あげて

Speechless
無言ではね
叫べ

Let the storm in
嵐をよび入れなさい
どんなに

I cannot be broken
壊れたりしないわ
裏切られても

No, I won't live unspoken
そうよ、私は言葉を発せずに生きたりしないわ
そうよ 負けない

'Cause I know that I won't go speechless
だってわかるの絶対無言でいたりしないってこと
声をあげて 叫べ

 

[Bridge: JASMINE]

Try to lock me in this cage
この牢屋に閉じ込めてみなさい
閉じ込められても

I won't just lay me down and die
横になって死んでいったりしないから
決して あきらめない

I will take these broken wings
この壊れた翼を持ち出して
折れた翼 空へ

And watch me burn across the sky
空を駆け抜け燃える私をみなさい
解き放って

And it echoes saying–
ほら響くこの声
こだまする

 

[Chorus: JASMINE]

I won't be silenced
私は沈黙させられないわ
その声 聴いて

No you will not see me tremble when you try it
ええ!そうされても私は怯えて震えたりしないわ
誰にも止められはしない

All I know is I won't go speechless
はっきり言えることは私は絶対無言にはならないってこと
心の声 あげて

Speechless
無言にはね!
叫べ


'Cause I'll breathe
When they try to suffocate me
だって窒息させられそうになった時は呼吸をするもの
今こそ 自由の扉開け

Don't you underestimate me
私のことみくびらないでよね
羽ばたいてみせる

'Cause I know that I won't go speechless
だって私は絶対に無言にはならないんだもの
なにも 誰も 恐れない

All I know is I won't go speechless
はっきり言えることは私は絶対に無言にはならないってこと
心の声あげて

Speechless
無言にはね!
叫べ

 

 

 

 

 

実写アラジン「Speechless (心の声)」和訳と日本語歌詞(Aladdin 2019)

はじめに

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Naomi Scott as Jasmine singing "Speechless", the new song for Live action Aladdin (2019)

この曲はエンドロールで使用されなかった、サウンドトラックや配信限定の曲です。

そもそも劇中で歌われる唯一の新曲であり映画としては初のジャスミンソロ曲である『Speechless』はパート1、パート2に分かれており、このFullバージョンは基本的にはその二つを繋げた曲のようです。ただし歌詞が微妙に異なります。

劇中歌のPart 1, Part 2 についてはこちらの記事をご参照ください。

 

ikyosuke.hatenablog.com

 

ちなみに舞台版(ブロードウェイやその日本語版の劇団四季バージョン)ではいわゆる『I WISH ソング』としての「These Palace Walls」がありましたが、それはいわゆるアリエルのいうPart of "that" worldやベルの言う There must be more than this provincial life のようなファジーな、漠然とした「外への憧れ」を歌うような仕上がりでした。

それは舞台版が用意され始めたのが2011年前後であったことを考えればまあ妥当なのですが、2019年に実写化するにあたっては、すこし弱すぎると見られたのか、この、Speechlessはよりメッセージ性の強いものになってます。

なにせ、92年のアニメ版ではジャスミンは A WHOLE NEW WORLD の合いの手しか入れさせてもらえてなかったわけで、まさに「Speechless」、自分の本当の気持ちを歌わせてもらえてなかったということかもしれません。

 

さてさて前置きが長くなるのが私の悪い癖なので、早速歌詞へ。

毎度のことですが、対訳であり直訳ではないので、私の解釈がある程度反映されていることは考慮してください。また本編自体を見たわけではないので、解釈が大きくずれている可能性もあります点、ご了承ください。

 

youtu.be

 

歌詞と対訳と日本語歌詞(赤字)

[Jasmine(Naomi Scott)]

Here comes a wave meant to wash me away
ほら 私を洗い流そうとする波がやってきた
取り残されそうなの

A tide that is taking me under
私を引きずり降ろそうとする大波が
暗闇にひとりで

Swallowing sand, left with nothing to say
砂を飲み込み、何も言う機会なく取り残される
言葉をかき消されて

My voice drowned out in the thunder
私の声は雷の音にかき消される
心まで折られて

 

But I won't cry
それでも私は泣かない
でも負けない

And I won't start to crumble
崩れ始めたりもしない
挫けはしない

Whenever they try to shut me or cut me down
閉じ込められたり、切り裂かれそうになっても
裏切られ、たとえ辛くても

 

I won't be silenced
決して沈黙はしない
私はもう

You can't keep me quiet
私を静かにさせておくことなんてできないの
これ以上黙って

Won't tremble when you try it
怯えて震えたりしないもの
いられはしない

All I know is I won't go speechless
はっきり言えることは私は絶対無言にはならないってこと
心の声 あげて

 

'Cause I'll breathe when they try to suffocate me
だって窒息させられそうになった時は呼吸をするもの
いまこそ 自由の扉開け

Don't you underestimate me
私のことみくびらないでよね
羽ばたくとき そうよ

'Cause I know that I won't go speechless
だって私は絶対に無言にはならないんだもの
心の声 あげて

 

Written in stone, every rule, every word
石に刻まれる、あらゆる決まり、あらゆる言葉
ただ黙っていることが

Centuries old and unbending
何世紀も昔からずっと変わらないもの
賢い生き方と

Stay in your place, better seen and not heard
宮殿に閉じこもり、容姿は見られるようにして 意見は言わないようにしていた方がいいとされてきた
教えられて来たけど

Well, now that story's ending
もうそんなお話はお終いよ
間違いとわかった

 

'Cause I, I cannot start to crumble
だって私、崩れ始められないもの
いま 声をあげよう

So come on and try
だからさっさとかかってきなさい
そう誰にも

Try to shut me and cut me down
私を閉じ込め、切り裂こうとしてみなさい
邪魔はさせないから

 

I won't be silenced
私は決して沈黙させられないわ
私はもう

You can't keep me quiet
私を黙らせておくことなんてできないの
これ以上黙って

Won't tremble when you try it
やられそうになっても怯えて震えたりしないわ
いられはしない

All I know is I won't go speechless
はっきりわかるの 私は無言にはならないの
心の声 あげて

Speechless!
無言にはね!
叫べ 

Let the storm in
嵐を引き入れなさい
どんなに

I cannot be broken
私は壊れないわ
裏切られても

No, I won't live unspoken
いえ、私は言葉を発せずに生きたりしないわ
そうよ 負けない

'Cause I know that I won't go speechless
だって私は絶対に無言にはならないんだもの
声をあげて 叫べ

 

Try to lock me in this cage
私をこの牢屋に閉じ込めてみなさい
閉じ込められても

I won't just lay me down and die
そのまま横になって死んだりはしないわ
決してあきらめない

I will take these broken wings
この壊れた羽を持ち出して
折れた翼 空へ

And watch me burn across the sky
空を横切りながら燃える私をみなさい
解き放って

Hear the echo saying
響く声が聞こえるでしょう
こだまする

 

I won't be silenced
私は無言にはならないの
その声 聴いて

Though you wanna see me tremble when you try it
私が震えるのをみたいんでしょうけどね
誰にも止められはしない

All I know is I won't go speechless
はっきり言えることは私は絶対無言にはならないってこと
心の声 あげて

Speechless!
無言にはね!
叫べ

 

'Cause I'll breathe when they try to suffocate me
だって窒息させられそうになった時は呼吸をするもの
いまこそ 自由の扉開け

Don't you underestimate me
私のことみくびらないでよね
羽ばたいてみせる

'Cause I know that I won't go speechless
だって私は絶対に無言にはならないんだもの
なにも だれも 恐れない

All I know is I won't go speechless
はっきり言えることは私は絶対無言にはならないってこと
心の声 あげて

Speechless!
無言にはね!
叫べ!

 

 

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